本誌の恒例企画「ダイヤモンド・チェーンストア編集部が選ぶ流通業界10大ニュース」をお届けする時期となった。2023年の流通・小売業界は、コロナ禍からの脱却が進み、経済活動が正常化したこともあり、多くの業態で業績回復の動きが見られた。ただ、世界情勢は依然として混沌としており、「物流の2024年問題」のタイムリミットが迫るなど、対処すべき問題も多い。本稿では、23年の流通業界をにぎわせたニュースを振り返ってみたい。
収束に向かうコロナ禍、人流回復で業績も改善
2023年の流通業界10大ニュースの第1位は「経済正常化が鮮明に」だ。ここ数年、小売業界に暗い影を落としてきた新型コロナウイルス感染症が、23年5月に季節性インフルエンザなどと同等の「5類感染症」に移行した。これに伴い、これまで抑制されていた人流が回復し、小売、外食、レジャー、サービスなどが回復に向かっている。とくに、総合スーパー(GMS)や百貨店など、コロナ禍で行動制限の影響を大きく受けた業態は大幅に業績が改善した。
22年後半から23年前半にかけては、ファッションやレジャーなどの領域において、コロナ禍で我慢していた消費意欲を爆発させる「リベンジ消費」が見られ、業績回復を後押しした。23年10月の訪日客数がコロナ禍前の同時期の水準を上回るなど、インバウンドも復活の様相を見せており、今後さらなる需要拡大が期待されている。
これらに加えて、ボーナス増や株高による資産効果などもあって、高額品の売上も好調に推移している。百貨店大手の三越伊勢丹ホールディングス(東京都)が23年3月期通期決算において、「伊勢丹新宿本店」(東京都新宿区)の総額売上高がバブル期を超えて過去最高を更新したことを発表したのも記憶に新しい。
ただ、22年から続くロシアのウクライナ侵攻は出口が見えず、23年10月からは中東情勢も緊迫化するなど世界情勢は混迷を極めている。こうした外部要因が小売ビジネスにどう影響してくるか。見通せない状況が続いている。
第2位は、「食品スーパーのディスカウントフォーマットが続々」だ。消費者の「ディスカウント」に対するニーズの高まりを背景に、ここ数年、食品小売がディスカウント型の新フォーマットを立ち上げる動きが広がっている。
20年にイオングループが「@パレッテ!」を、21年にヤオコー(埼玉県)が「フーコット」を、22年にはマミーマート(埼玉県)が「マミープラス」の展開をスタートしたのに続き、23年中はベルク(埼玉県)が群馬県高崎市の既存店をディスカウント新フォーマットの「クルベ」に改装。九州・中四国で店舗展開するサンリブ(福岡県)も23年8月に新フォーマット「リブホール」の展開スタートを発表するなど、食品小売によるディスカウントフォーマットの開発が過熱している。
「2024年問題」を前にSM同士の「協調」進む
第3位は、
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