文=鈴木 麻央
大日本印刷株式会社
C&I事業部コンサルティング本部 マーケティングインサイト・ラボ
ローソン(東京都/玉塚元一社長)が農業生産法人「ローソンファーム」を拡大する方針を発表するなど、コンビニエンスストア(CVS)の一部は青果の販売を強化している。従来、食品スーパー(SM)や総合スーパー、青果専門店などで青果を購入する消費者が多かったと考えられるが、CVSが青果の取り扱いを本格化して以降、消費者の買物行動に変化は起きているのだろうか?
大日本印刷(東京都/北島義俊社長:以下、DNP)は、レシート読み取り技術を利用し、スマートフォンでレシートを撮影するだけで家計管理ができるアプリサービス「DNP家計簿アプリレシーピ!( 以下、レシーピ!)」を提供している。そのレシートデータを分析すると、消費者がどの店舗でどのような商品を購入しているのかが見えてくる。その分析をもとに、CVSとSMの青果販売の実態をみていこう。
2014年1月1日~15年12月31日の間に「レシーピ!」に登録されたレシート情報※1のうち、CVSで購入された食品・飲料に占める「青果」の割合は約7%だった。購入時間帯を見ると、CVS全体では朝と昼に購入のピークがあるのに対し、「青果」の購入は18時台にピークを迎えている。CVSでの「青果」の購入時間帯は、SMでの「青果」の購入時間帯と似ている傾向にある(図表1)。
CVSの「セブン-イレブン」と「ローソン」の2社で購入されている「青果」関連商品の上位5品を調べると、「セブン-イレブン」は、1位「セブンプレミアムコールスロー」、2位「セブンプレミアム彩り大根ミックス」、3位「ミックス野菜サラダ」、4位「セブンプレミアム千切りキャベツ」、5位「五目野菜炒めセット」。一方の「ローソン」は、1位「キャベツ千切り」、2位「もやし」、3位「キャベツ野菜炒め」、4位「カットレタス」、5位「ミニトマト」だった。即食・簡便性の高い商品が多いことがわかる。また、「五目野菜炒めセット」や「キャベツ野菜炒め」のように、多品種の野菜を組み合わせた商品(以下、アソート野菜)は、20代よりも子育て世帯を含む30~40代に人気が高い傾向がうかがえた。
次に、上記2社のアソート野菜購入者が、SMで購入している商品を見てみよう。SM利用者全体と比べて、「カット野菜」「カットサラダ」「サラダ」などのアソート野菜が上位にランクインしている(図表2)。SMでも即食・簡便性の高い商品を好んで購入する傾向にあるようだ。
これらのデータから、青果の購入先としては、SMとCVSは利用方法に差がなくなりつつあると言える。CVSでも青果が充実してきたことにより、CVSはSM同様の時間帯に利用され、SMでもCVSで販売されているような簡便・即食性の高い商品が求められるようになってきている。
CVSでの購入商品全体に占める「青果」の割合はまだ少ないが、CVSの店舗数は多く利便性も高い。今後、業態の垣根を越えた競争がいっそう厳しくなることが予想される。
※1:本データは「DNP家計簿アプリ レシーピ!」に登録されている家計簿データのうち、関東圏内(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)に絞ったデータを対象とする
(「ダイヤモンド・チェーンストア」2016年3/1号)