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訪日ラボが教える インバウンド担当者のためのデータの見方
第5回:電商法でソーシャルバイヤーは本当に終わってしまうのか?そのインパクトをデータから見る

ついにはじまった中国ソーシャルバイヤー規制法「電商法」

 2019年1月1日に中国で施行された「電子商務法(通称:電商法)」。名目としてはインターネットビジネスの適正化ですが、中国政府当局の狙いは「ソーシャルバイヤー」規制だと言われています。

 ソーシャルバイヤー(代理購入/代購/海淘(ハイタオ)とも)とは、海外で購入した物品をタオバオやSNSを通じて販売する人々のことです。いわゆる「爆買い」の一翼を担ったといわれる彼らが活躍した背景には、中国国内外の商品の価格差と、中国のスマホ普及によるEC市場の巨大さという土壌がありました。

 実際の施行に先立ち、昨年の2018年の10月頃より税関での取締が厳しくなったとSNS上で話題になりました。そこで今回は、10月の取締強化を境に中華圏訪日外国人の消費行動にどのような変化があったのかを、「購買興味データ」から、インバウンド「購買行動」どの時間に活発になるのかを見ていきましょう。

※「購買興味データ」とはバーコードをかざすと多言語商品情報を表示するアプリ「Payke」を通じたスキャンに関するデータで、これによって購買直前の消費者の動きやプロセスを知ることができます。

中華圏ユーザーの購買行動は上昇トレンド

 では、前提として中華圏訪日外国人の購買行動を見て見ましょう。【図1】は中華圏ユーザー数(簡体字・繁体字でPaykeでスキャンしたユーザー)について、取締強化のあった10月前半を中心として、前後2ヶ月間の推移を見ています。

【図1】中華圏訪日外国人ユーザーのPaykeスキャン数 推移 8-11月

 9月に一度下降トレンドがあるのは台風21号や北海道地震( http://diamond-rm.net/serial/7057/ )などの災害の影響が考えられます。その後、10月に入ってからは、国慶節需要などもあり、消費行動にも上昇傾向が見られます。

 すると、10月の税関規制強化は、もちろん外客数増の後押しが前提にあるものの、全体的な消費行動にはマイナスの影響を及ぼしていないものと見られます。

「異常なスキャン数」ユーザー≒ソーシャルバイヤーは下降トレンド

 Paykeによれば、1ユーザーあたりの平均的なスキャン数は10回以下だといいます。そのため、それ以上の「異常なスキャン数」のユーザーはソーシャルバイヤーの可能性が濃厚とみられます。この「異常なスキャン数」ユーザーについて、全ユーザーに対する割合のトレンドを見たのが【図2】です。

【図2】「異常なスキャン回数」のPaykeユーザーの割合 推移 8-11月

 これを見ると、スキャン回数20回以上のユーザーでも下降トレンドが見られます。より「極端」なユーザーが見にくいので、50回以上スキャン、100回以上スキャンのユーザーだけに絞ったのが【図3】です。

【図3】「異常なスキャン回数」のPaykeユーザーの割合 推移 8-11月

 ここまでの回数になると0%(50回や100回もスキャンしたユーザーが全く居ない)の日もありますが、その割合が10月以降増えており、全体的にも、やはり下降トレンドであることが確認できます。

ソーシャルバイヤーに人気のベビー用品も下降トレンド

 では、別の視点で商品ベースから見てみましょう。ソーシャルバイヤー需要の高いベビー用品類のスキャン数の推移を見たのが【図4】です。

【図4】ベビー用品のPaykeスキャン数 推移 8-11月

 やはりここでも下降トレンドが見られ、特に10月初旬をポイントに8月から急降下し、10月以降も緩やかな下降が見られることから、税関規制強化がインパクトを与えたことが推測されます。

 インバウンド対策を推進していくにあたって、「電商法」のようなニュースに敏感になることは非常に重要です。さらに、このような大きな出来事が発生した際に、Paykeなどのツールや、自社のデータを突き合わせて、自社インバウンドへの影響度を把握しておくと良いでしょう。このような活用できるストックデータが、2020にむけて激動するインバウンドビジネスにおいて、商機を掴むきっかけとなるのです。

 

【プロフィール】

執筆:訪日ラボhttps://honichi.com/

 「訪日ラボ」はインバウンド総合ニュースサイトとして、2015年にサービス開始しました。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに、国内のインバウンド時事ニュースやインバウンド事例、インバウンドデータ分析、インバウンドソリューションについて日々情報発信をしております。

データ提供:Paykehttps://payke.co.jp/

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