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廃食油を航空燃料に! セブン-イレブンなど7社がサプライチェーン構築で連携

セブンイレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)やイトーヨーカ堂(東京都/山本哲也社長)など7社は115日、家庭で発生する廃食用油を活用し、SAFSustainable Aviation Fuel持続可能な航空燃料)の供給をめざすプロジェクトで連携することを発表した。自治体や企業、そして地域住民が一体となって廃食油の航空燃料としての活用をめざすという、国内初の試みだ。

2027年にSAFを成田空港へ供給

 日本では年間約10万トンの家庭系廃食用油が発生しているが、再利用される割合は1020%にとどまり、大半が廃棄されているという現状がある。この問題に着目し、セブンイレブン・ジャパンやイトーヨーカ堂、三井不動産レジデンシャル、ENEOSなど7社が連携し、廃食用油を収集してSAFを製造するプロジェクトを立ち上げた。

 SAFは、原料調達から消費に至るまでの過程で発生する温室効果ガスの排出量を、従来の燃料に比べて最大8割削減できると見込まれている航空燃料である。

 廃食油回収からSAFの供給に至る流れは次のとおりだ。まず、千葉県内の「セブンイレブン」「イトーヨーカドー」の5店舗と、三井不動産レジデンシャルの分譲マンション4棟に回収拠点を設置し、吉川油脂が回収する。集まった廃食油を原料に、ENEOS27年以降に和歌山県で稼働予定のプラントでSAFを製造、そこから成田国際空港に供給し、実際に航空機の燃料として使用する。ENEOSのプラントが稼働するまでは、回収した廃食油はバイオディーゼル燃料として活用する計画だ。

 なおこの取り組みは、千葉県が公募した「地域資源を活用したSAF導入促進事業」に採択されたもの。自治体と連携し、家庭系廃食用油を回収してSAF製造に向けたサプライチェーンの構築を図る実証実験は国内初となる。

リターナブルボトルを活用し環境負荷低減につなげる

 家庭系廃食用油の回収には、専用のリターナブルボトル(750ml1本)を採用、消費者に無料で提供している。市販のペットボトルでは油が付着し、その後のリサイクルが困難になるためだ。ユーザーは、家庭の廃食用油をこの専用ボトルに入れて回収拠点に持ち込むことで、誰でも参加できる。

 また、店頭などでの回収方法には複数の手法を取り入れている。「イトーヨーカドー幕張店」(千葉県千葉市)では、自動回収機を導入。使用済みの廃食用油が入ったリターナブルボトルを投入すると新しいボトルが自動で提供される仕組みだ。一方、千葉県松戸市内のセブンイレブン「松戸常盤平駅前店」「松戸常盤セブンタウン店」および「五井高場店」(千葉県市原市)の3店舗や「ヨークマート成田店」(千葉県成田市)では、店頭に回収ボックスを設置。投入後、カウンターで新しいボトルを受け取れる。また、三井不動産レジデンシャルが運営するマンション3棟では、コンシェルジュが住民から対面で回収する。

 セブンイレブン・ジャパンの担当者は、「コンビニエンスストアとして廃食用油回収を行うのは初めての試みだが、お客さまの協力を得て、拠点の拡大を検討したい」と意欲を示した。

 セブン-イレブンでは、店内のフライヤーから出た廃食用油を回収するタイミングに合わせ、回収ボックスに集めたボトルを月2回のペースで回収する計画だ。「イトーヨーカドー幕張店」では、リターナブルボトルを活用し、月200本の回収を目標に掲げる。「ヨークマート成田店」では、月30本の回収を目標としている。三井不動産レジデンシャルが運営するマンションでは、約2000世帯を対象に周知を徹底し、多くの家庭に回収への協力を呼び掛ける。

地域と企業がつくる新たな資源循環モデル

 また、廃食用油の再利用はSAF製造だけにとどまらない。ENEOSは廃食用油をSAFへの加工過程で得られる副産物をプラスチック原料や物流用燃料として活用する計画を明らかにしており、活用域を最大限に広げたい考えだ。

 本プロジェクトは25年1月15日に開始し、3月14日までは千葉県の補助事業として実施する。その後も7社による実証期間が9月30日まで続き、効果を検証しつつ、継続や拡大を視野に入れる。廃食用油は国内で調達可能な資源であり、7社は地域連携による環境負荷の軽減に向けた新たな資源循環モデルの構築をめざす。