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「第3回サステナブル・リテイリング表彰」ファミリーマート、コープさっぽろ、寺岡精工が受賞!

昨今、食品小売業界でもサステナビリティ(持続可能性)の重要性が高まっているなか、ダイヤモンド・リテイルメディアが2022年から実施している表彰企画「サステナブル・リテイリング表彰」3回目となる今回は、生協含む小売業から2法人・団体、小売業以外から1社の優れた3つの施策が選ばれた。その取り組みを紹介するとともに、専門家から評価されたポイントをレポートする。

11組織から計14の施策が集まる

 ダイヤモンド・リテイルメディア主催の「サステナブル・リテイリング表彰」は、食品小売を中心とした企業から、サステナビリティの実現をめざした取り組みを募集、専門家の審査によって受賞施策を決定し表彰するものだ。

 本企画を立ち上げた背景には、近年、食品小売企業におけるサステナビリティの重要性が増していることがある。消費者の価値観の変化により、サステナブルであることは、店や商品を選ぶうえでの重要な判断材料になっているほか、商品原価が高騰するなか、廃棄ロスなどをはじめとしたムダの削減が食品小売業にとっては急務となっている。サステナビリティは各企業・組織が今後生き残るためにも力を入れて取り組むべき課題と言える。

 本企画では、食品小売業を中心として優れた企画を表彰し、業界の好例を日々発信することで、サステナブルな取り組みの活性化を図ることを目的としている。

 第3回目となる今回は募集対象を「食品小売業の施策」だけでなく「食品小売に関連する企業の施策」にまで広げ、食品のサプライチェーンに関与するあらゆる業種・企業の参加を呼びかけた。

 今回集まったのは、計11組織から14施策。大手食品スーパーからローカルスーパー、コンビニエンスストア、生協から応募があり、食品小売業以外ではリサイクル処理機や食品用紙容器を製造するメーカーからも施策が寄せられた。

 今回の選考は、「ダイヤモンド・チェーンストア オンライン」上で応募を呼びかけ集まった施策を、サステナビリティ領域の専門家5人による選考委員が審査した(審査員一覧

 審査は、まず下記(※)の選考基準より定量評価(該当項目の数や、平均スコアなどから)し、その上位施策の中から最後は選考委員のディスカッションにより計3つの受賞施策を決定するという流れで行った。なお、本企画ではサステナビリティに関する「施策」を表彰している点を強調しておきたい。発表にあたって企業・組織名を挙げているが、その企業自体ではなく、具体的な施策に焦点を当てて表彰を行っている。

※選考基準:「顧客・従業員・取引先・地域への波及、効果」「環境問題への貢献」「ダイバーシティ・人権への対応」「健康・福祉への貢献」「定量的な結果」「経済・業績への貢献」「新規性・アイデア性」「今後の拡張性」 「企業間による連携」「食品小売業が取り組む意義」

 第3回の審査結果は以下の通りである。

 今回は、「食支援ネットワーク賞」として、ファミリーマート(東京都/細見研介社長)の「ファミマフードドライブ~全国3500通りの支援モデルの構築により、国内最大級のネットワークでフードドライブを展開、食支援と食ロス削減を促進~」、「明るい未来支援賞」として生活協同組合コープさっぽろ(北海道/大見英明理事長)の「資源回収から得た収益を組合員さんに循環させる子育て支援」が、「資源循環賞」として寺岡精工(東京都/山本宏輔社長)の「店舗と消費者が連携するペットボトルの資源循環」が受賞した。

店舗網を生かしたファミリーマートのフードドライブ

 順に各施策を紹介していきたい。

 まず、「食支援ネットワーク賞」を受賞したファミリーマートの「ファミマフードドライブ~全国3500通りの支援モデルの構築により、国内最大級のネットワークでフードドライブを展開、食支援と食ロス削減を促進~」は第1回から継続して応募が寄せられており、これまでのファミマフードドライブの取り組みが定着し、全国的に広がっている点が高く評価され受賞に至った。

ファミマフードドライブの回収専用ボックス

 ファミリーマートは20214月から、「ファミマフードドライブ」を展開している。これは、家庭で余った食品を同社の店舗に寄贈者が持ち込み、NPOや社会福祉協議会などの協力団体を通じて、地域のこども食堂やフードパントリーに寄付する取り組みだ。活動は全国47都道府県に展開するファミリーマートの店舗ネットワークを活用し、地域の食支援および食品ロス削減をめざしている。

 「この活動のねらいは、ファミリーマートの事業特性を活かし、地域に貢献するサステナビリティ活動を推進することだ」と同社の応募担当者は説明する。店舗で気軽に食品を寄付できる仕組みで、寄贈者や協力団体にとっても負担の少ない形で持続可能な運用を行うことができる。また、賞味期限2カ月以上の常温保存が可能な食品を受付対象にしている。そのため、店舗の担当者の回収負担が軽減されている点も特徴的だ。

 247月時点で、3716店舗がこの取り組みに参加し、累計寄贈量は202トン以上に達している。この量は茶碗約133万杯分に相当し、もし廃棄されていた場合のCO2排出量は260トンに及ぶ。

 地域社会に貢献する新たなモデル

 「ファミマフードドライブ」は、全国に店舗展開をしているファミリーマートの事業特性と寄贈者、加盟店、協力パートナーのそれぞれにとって負担が少ない仕組みを構築した。そのため急速に広がりを見せ、フードドライブのネットワークとして、国内最大級規模まで成長した。

 ファミリーマートのフードドライブは今後も消費者が気軽に寄付できる仕組みを提供し、持続的かつ地域に寄り添った形での食支援の輪を生み出していくことをめざす。

 選考委員の間でも、同社の取り組みがすでに多くの寄贈実績やCO2削減への効果につながっているだけでなく、成果を定量的に測定していて、社会への影響を客観的に示すことができている点も評価する意見が多くあがった。

 加藤孝治氏(日本大学大学院総合社会情報研究科教授)は「広大な店舗網を活かすことで、フードドライブの取り組みを多くの地域で実現させている点が高く評価できる。コンビニエンスストアはフランチャイズビジネスであるがために、取り組みが一部地域や店舗に限定されがちであるが、ファミリーマートは多くの加盟店の協力を得られる仕組みづくりができている。また協力パートナー企業も多く、取り組みが社会的に高く評価されているものと捉えられる」とコメントした。

コープさっぽろの子育て支援における「循環型支援」モデル

 コープさっぽろは「子育て支援」の施策で、「明るい未来支援賞」を受賞した。

 同生協は、20106月に「コープ子育て支援基金」を創設し、現在「子育て応援プロジェクト」として活動を展開している。このプロジェクトは、環境・経済・社会の調和を目指し、家庭での親子のふれあいを大切にしながら、次世代を担う子どもたちの成長を支援する取り組みである。活動の財源は、組合員から回収された資源物をリユース・リサイクルし、その収益を活用する「循環型支援」という独自の仕組みに基づいている。

 子育て支援の具体的な取り組みとしては主に以下の3つが挙げられる。

1.えほんがトドック

 コープさっぽろの組合員に対し、無償で絵本をプレゼントする取り組みを10年から行っている。12歳の子供または孫を持つ組合員が対象で、1年間で合計8冊の絵本を届ける。23年までの累計申込世帯数は13万世帯以上にのぼり、583072冊の絵本が配布されている。234月からは、期間内の配布冊数を4冊から8冊に増やした。

2.えほんわくわくキャラバン

 絵本を通じた交流や学びの場を提供し、子どもたちの感性や成長をサポートすることを目的として、保育園や幼稚園で絵本の読み聞かせを行っている。23年度は178の施設を訪問し、24830名の子どもたちが参加した。

3.ファーストチャイルドボックス・コープチャイルドボックス

 第1子を妊娠中の組合員への支援として、ベビー服やおむつなど約30点(約6万円相当)を「ファーストチャイルドボックス」として無償でプレゼントしている。18年から23年までに累計69651人がこのサービスを利用した。19年からは第2子以降にも対象を広げている。

コープさっぽろのファーストチャイルドボックス

 コープさっぽろでは、組合員から回収した資源物を集めてリサイクル処理を行う「エコセンター」を自前で所有し、その収益を子育て支援に充てている。23年度の資源リサイクルによる収益は約2.7億円、同年度の回収実績は34942トンに達し、22085トン相当のCO2削減につなげている。なおエコセンターでは2008年の設立以降、累計で478518トンの資源を回収しており、これは北海道の人口136万人分の年間ゴミ排出量に匹敵する量である。

 加賀田和弘氏(小樽商科大学商学部准教授)は「単なる資源回収にとどまらず、コープさっぽろは自前でエコセンターを完備し、そこで得た収益を手厚い子育て支援策の提供に充てるという循環型支援モデルを実現している点が高く評価できる」とコメントした。

寺岡精工の小売企業向けにペットボトル回収機「ボトルスカッシュ」

 食品小売企業と連携した施策として高い評価を得て「資源循環賞」を受賞したのは、寺岡精工の「店舗と消費者が連携するペットボトルの資源循環」だ。

 寺岡精工は、17年から主に小売企業向けにペットボトル回収機「ボトルスカッシュ」シリーズを製造・販売している。246月末時点で全国の小売店を中心に4378台が稼働し、23年末までに累計で約33000万本、総重量8800トン以上のペットボトルが回収されている。

 同社は、日本国内のコンビニエンスストアやドラッグストアなど、設置スペースが限られた店舗に対応できる小型回収機を開発した。応募担当者は「回収機を小型化したことで、従来設置が難しかった小規模店舗にも対応でき、消費者にとってもリサイクルがより身近なものになった」とコメントする。

 店頭にペットボトル回収機を設置するだけでなく、回収されたペットボトルをリサイクル業者へ運搬し、新たなボトルに生まれ変わる「ボトルtoボトル」のリサイクルスキームを構築した。「ボトルスカッシュ」は、小売企業側の用途に合わせて、ポイント付与やクーポン券発行などの機能を搭載することができる。ユニバーサルデザインを採用し、誰でも簡単に利用できる仕組みを整えている点も特徴的だ。

寺岡精工の「ボトルスカッシュ」シリーズ

 寺岡精工は「Grow with Green」を社会課題解決のテーマに掲げ、環境問題解決に貢献するとともに企業の成長をめざしている。今回のペットボトル回収機のほかにも、廃棄物削減を目的とした廃棄物を計量し管理するシステムの「環境Navi」や店頭にマイボトルを持参して給水することでプラスチックの使用量を抑える自動給水機の「ECOA」など、環境に配慮した製品を開発し、今回の表彰施策以外でも持続可能な社会の実現に貢献している点が特徴だ。

 宮川宏氏(専修大学経営学部准教授)は「製造と小売が連携することで、循環経済が実現できる好事例であり、消費者にメリットがある。小売企業側が消費者を巻き込んで、回収から水平リサイクルをしている点が評価できる」とコメントした。

明確な数値化が施策のカギを握る

 以上、受賞した3つの施策について紹介した。今回の審査は非常に接戦であり、特に注目されたポイントは「定量的な結果」と「新規性」だった。

  今回の受賞企業に共通するのは、サステナビリティへの取り組みを定量的に数値化し、客観性の高いデータとして示している点である。

  選考委員の篠原欣貴氏(立命館アジア太平洋大学国際経営学部准教授)からは、「各社ともサステナビリティに関する活動を継続的に行い、その効果をしっかりと測定した施策が多かった。今回受賞を逃した企業についてもぜひ継続して取り組んでほしいと思う」とコメントした。

新規性に富んだ施策に期待

 また、計3回の表彰を通じて審査会としても、新規性のある施策を表彰することで、社内の関連部署におけるモチベーションの向上につなげてもらいたいとの意見が各審査員から寄せられた。

 選考委員の渡辺林治氏(東京大学大学院医学系研究科特任講師)は「どの取り組みも会社の規模や立地の特性を生かし、持続可能な社会の実現と企業の長期的な発展も見据えていた」とコメントした。

 「サステナブル・リテイリング表彰」では、過去に受賞歴のある企業でも、別の施策は審査の対象となる。また、これまでに応募済みの施策であっても、施策の進捗を含め評価する。ぜひ継続的に参加し、社内のサステナビリティ推進に活用していただきたい。なお、今回は応募企業全社に委員からのコメントも添えるので参考にしていただけると幸いだ。

 本企画は来年度以降も継続する方針で、より多くの企業がサステナビリティへの関心を高め、より多くの施策が寄せられることに期待したい。