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「すみません、売り切れです」は発想力の欠如である

ラーメン屋と書店で抱いた違和感

 「コメが高いなら、パンを食べればいいじゃない」。こんな発言をするコメンテーターがいたら、「お前はマリー・アントワネットかよ」と、ただちに炎上するだろう。しかし、この発言にも一理ある。1食当たりの価格はコメがパンの2倍に上った。さらに、小麦の相場は下落傾向にあり、ロシアとウクライナの戦争が収束すればもっと安定化する可能性がある。円高が進めば対米輸入品も安くなるだろう。

 もっとも、パンの価格が安くなったというわけではない。あくまでコメに対して相対的に抑えられているという話だ。統計データでも確認してみよう。2025年3月の消費者物価指数を見ると、米類は対前年同月比で92%増、対前前年同月比で106%増だ。それに対して、パンはそれぞれ4%増、9%増に踏みとどまっている。

 数年前には、小麦の高騰によって、米粉の価値が再認識されたときもあった。それがコメの大高騰によって、今度は小麦が最注目された。これはコメか小麦かという二項対立ではなく、「できるだけ主食となる素材は分散させておけ」という教訓にほかならない。

お客が求める商品ではなく、その背景にあるニーズをくみ取って代替案を提案することは、マーケティング活動の根幹である写真はイメージ(iStock/SDI Productions)

 ここで話が変わる──ようで実は変わらない。まずは読み進めてほしい。

 少し前に、新宿のラーメン屋に行ったときのことだ。同僚とカウンターに座っていると、後からお客が来て注文した。すると店員は「その商品は売り切れです。すみません」と謝り、お客は「また来ますね」と帰っていった。すると、

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