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ロイヤルホームセンターの都市部を攻略するフォーマット、地域MD強化で差別化

プロショップ

ロイヤルホームセンター(大阪府/中山正明社長)は、成長戦略の柱に「ロイヤルプロ」の積極出店を掲げている。これまでさまざまなフォーマットを実験し、都市部で職人に支持される店舗づくりを模索してきた。年間数店舗の出店を続けることでシェア拡大をねらう。

紆余曲折を経て現フォーマットに

 大阪府に本社を構え、関西、関東を中心に63店舗を展開する、大和ハウスグループのロイヤルホームセンター。住まいの問題を解決する「ホームソリューションセンター」を掲げており、専門性の高い品揃え、売場づくりによりファンを獲得する。

年間数店舗のペースで出店を続けるロイヤルプロ。写真は23年11月にオープンした「ロイヤルプロ横浜上郷」

 長らくホームセンター(HC)業態で店舗網を広げてきたが、市場の伸びが鈍化しているのを受け、現在はプロショップの「ロイヤルプロ」を新規出店の主力とする。売場面積500坪、700坪、1000坪と規模別の3タイプがあり、物件や商圏特性、競争環境などに応じ、使い分けながら年間、数店舗のペースで出店を続けている。

 同社がプロ市場に注力するようになったターニングポイントは2002年に開業した「ロイヤルホームセンター千葉北」(千葉県千葉市)である。

 売場面積1万5000㎡の超大型店で、ソフト商材だけでなく、木材や鉄骨といった資材、工具、配管などプロ向けの品揃えを強化した旗艦店舗だ。品揃えに加え、プロの使い勝手を考慮し複数の「積込場」も設置した。反響は大きく、手応えを得た同社はこれを起点に、プロを顧客層とする新フォーマットの開発へ乗り出す。

 その第1号は05年に出した「ロイヤルホームセンター長久手」(愛知県長久手市)だった。売場面積400坪の店舗で、品揃えをプロの仕事を前提とした、資材・工具・金物などハード商材を揃えた。さらに09年には金物に特化した「ロイヤル金物」を投じる。

 「ロイヤル金物松戸みのり台」(千葉県松戸市)と「ロイヤル金物北本」(埼玉県北本市)を相次いでオープンした。

 以降も、会員制卸売業や作業服専門店などさまざまなフォーマットで、商品政策(MD)や売場づくりを変化させながら、実験を重ねた。好調だった店舗については、あらためて品揃えを検証し、成功パターンを確立してロイヤルプロの基礎をつくり上げていった。

成功パターンにたどり着く

 かつて行った実験の1つに、工具と作業服だけを組み合わせて出した店舗があった。両カテゴリーの品揃えを深掘りしたが、思ったように職人の支持を得られずに閉店した。しかし同社ではその失敗の教訓を生かそうと再度、商品構成を見直した。

ロイヤルプロ事業を担当する取締役上席執行役員の森本勝己氏

 「作業服は取り扱いに手間がかかるが、利益率が高いというメリットがあるため、専門性を訴求できる工具と組み合わせたが集客力が足りなかった。そこで取り入れたのが建築資材。購買頻度が高く、広域から集客できる効果があり、職人のお客さまからも好評だった」。こう明かすのは、ロイヤルプロ事業を担当する取締役上席執行役員の森本勝己氏だ。

 現在の取扱商品は、資材、工具、作業服のほか電材、水道、配管、木材、各種消耗品など。これらの総合的なMDにより利便性の高い売場を実現している。新規出店後は商圏特性に合わせてカテゴリーを拡縮してきた。たとえば、首都圏では電材、水道、配管設備などリフォーム関連の品揃えを厚くしながら地域需要に応えている。

 店舗運営面では、顧客とのコミュニケーションを重視する。電動工具の対面式売場など、会話が生まれやすい仕掛けづくりも行う。その一方で、バックヤードからの在庫補充の手間を軽減したり、店舗スタッフがさまざまな業務に対応できるように教育するなど、効率的な店舗運営も志向する。

 出店政策に目を向けると優先度が高いのは東名阪エリアで、中でも人口が密集し、職人の数も多い都市部をねらう。「都市部においては軽量鉄骨や石膏ボードといった商材の動きがよく、リフォーム需要が大きい」と森本取締役は言う。

 ただ都市部はまとまった物件が少なく、売場づくりが難しい点が課題になっている。同社では空間を無駄なく使い、売場効率を上げることにも取り組んでいる。たとえば、22年12月にプロショップとして初めて大阪市内に出店した「ロイヤルプロ住之江公園」では、二層構造を採用することで700坪超の売場をつくるなど、課題解決のための実験を続けている。

工具の買取サービスやアウトレット商品の販売など他社にはないサービスも実施

 

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PB開発で大手と差別化

 流通構造が大きく変わり始めているプロ市場を開拓しようと同業他社の参入が続き、競争が激化するなか、ロイヤルホームセンターが差別化の武器として活用するのがプライベートブランド(PB)である。

 「WAGENYA(和玄屋)」はその1つだ。動きやすさと着心地、デザイン性を追求した作業衣料のPBで、幅広い年齢層から支持を獲得する。近年は機能性を備えるアイテムも増えており、プロからの期待度も高まっている。

 工具ではPB「漆黒」の開発に注力してきた。価格訴求型ではなく、職人が仕事で使うことを前提とし、ナショナルブランド商品にも遜色ない品質をめざして開発している。

PB開発は作業衣料「WAGENYA(和玄屋)」と工具「漆黒」の2つに特化させる

 さらに同社の強みとなるのは、19年10月に子会社化したワールドツール(埼玉県/中島勉社長)との連携だ。ワールドツールは自動車整備向けを中心とする工具のSPA(製造小売)企業で、「アストロプロダクツ」を展開する。アストロプロダクツの商品をコーナー化してロイヤルプロで取り扱うだけでなく、共同で独自商品の開発も進めている。

 このほかロイヤルホームセンターが検討する施策で特筆すべきは、「建築以外」の分野にフォーカスした新しいフォーマットの開発である。

 現在、新たなチャレンジとしてビルのメンテナンスに使用する各種商品を集めた売場づくりを実験的に行っているという。掃除道具や業務用洗剤はじめ、その業界で使われる専用商品を集めた品揃えで利用客の反応を探っているところだ。

 「街を歩けば、飲食店、美容室、車屋、物流倉庫などプロが働く業界は無数にある。それらに着目し、特化した専門フォーマットをつくりたい。ワンストップで商品を買えるようにすれば需要があるのではないか」(森本取締役)。

 ロイヤルホームセンターが中長期的な目標とするのは「2030年に売上高2000億円」という経営数値だ。これに対し、ロイヤルプロの成功が目標達成を占う重要なカギとなるのは言うまでもない。

 

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