コロナ禍以降、間口・奥行きが拡大し、伸長が続いている冷凍食品市場。とくに外食できない時期は、ちょっとした贅沢感や旅行気分などが味わえるプレミアムラインの冷凍食品が注目を集めた。冷凍食品は「安くて手軽」な商品から「おいしくリッチな気分が味わえる」商品へ広がりを見せている。今回は、冷凍食品マイスターのタケムラダイ氏に、冷凍食品市場の動向とご当地冷凍食品のおすすめを聞いた。
高付加価値冷凍食品は満足度・継続購入率が高い
冷凍食品は、ストックのしやすさや簡便性、品質の高さから利用するユーザーが増えており、コロナ禍以降はその勢いが加速している。
中でも注目を集めているのが、有名料理店が手掛ける冷凍食品や高級食材などを使った冷凍食品など、プレミアムラインの冷凍食品だ。
冷凍技術に特化した事業コンサルティング会社のえだまめが行った「高付加価値冷凍食品ユーザー調査2024」(2023年11月WEB調査・調査対象は20~79歳の男女)によると、高付加価値冷凍食品の1年以内の購入者は人口の16.4%。購入者はまだまだ少ないものの、「今後も購入したい」と回答した現ユーザーは88.5%と、満足度も高いようだ【図表】。
高付加価値冷凍食品を経験した人は継続購入する傾向にあるため、市場拡大に期待できる。高付加価値冷凍食品の購入理由は「手間や時間をかけずに、簡単にごはんを食べたい時のために」という冷凍食品ならではの簡便性の高さがトップだが、「食事をリッチにしたい時に」や「なるべく無添加・オーガニックなものを食べたいため」などの理由がそれに続いた。
高付加価値冷凍食品を購入する人は、外食や中食の代わりとしてが多く、購入場所はスーパーやネット通販などの従来の主要チャネルだけでなく、冷凍食品自動販売機や無人店舗といった接客を伴わないチャネルや外食店の店頭販売など、これまでになかった購入場所も発生している。
主食とおかずがセットになったワンプレート冷凍食品に注目
20年以上にわたって毎日欠かさず冷凍食品を食べ続けている冷凍食品マイスターのタケムラダイ氏。コロナ禍以降の冷凍食品の広がりを実感しているようだ。
「コロナ禍は冷凍食品にとって大きな転機になりました。外出できなくなったタイミングで冷凍食品を試した人が、“冷凍食品はおいしい”と気付いて継続購入につながっています。しかもコンビニのお弁当より保存料を使っていない分、冷凍食品のほうが健康面で優れていると気付いた人も多かったようです」
そんなタケムラ氏が最近注目しているのが、主食とおかずをセットにしたワンプレートの冷凍食品。ニップンの「よくばり」シリーズが先行しており、各社が次々に参入し競争は激化している。栄養バランスがよく、値段も手頃なので、在宅勤務時のランチや子供の食事など利用するシーンも広がっている。
「ワンプレート冷凍食品をそのままお弁当箱に詰め替えて子供の“塾弁”にするなど、SNSで話題となりました。種類も豊富なので、さまざまな使い方が広がっています」と、タケムラ氏。
また、冷凍麺も伸び続けているカテゴリー。冷凍中華麺は麺とスープ、具材がセットになった一食完結型が人気で、有名専門店が監修した商品などラインアップが広がっている。
「ファミリーレストランの冷凍食品も人気。ロイヤルホストやバーミヤンの味が自宅で気軽に楽しめて、お店で食べるより安価なのが支持されています」(タケムラ氏)
外食店が冷凍食品を販売することで、来店したことがない新たなファン獲得につながっている。
高級冷凍食品はいつもの食卓をリッチに
コロナ禍の影響により、レストランさながらのクオリティの料理が自宅で手軽に食べられる「高級冷食」というジャンルが注目されている。
タケムラ氏が高級冷食でおすすめするのは、メディアでも何度も取り上げられている高級冷凍食品ブランド「ブレジュ」の「奥出雲和牛プレミアムハンバーグポワブルベールソース添え」。島根県産の希少な奥出雲和牛100%の贅沢なハンバーグで、部位によって肉を挽く回数を調節し、ほどよい食感を残したふっくらとした一品。ポワブルベールソースの青胡椒のさわやかな香りとピリッとした辛みがアクセントだ。湯煎するだけで本格的なレストランの味が楽しめるので自宅用はもちろん、贈り物としても利用されている。
ホテルの朝食やレストランで提供されることの多い冷凍パン。焼きたてを急速冷凍するので、焼きたてそのままの鮮度を保つことができる。冷凍パンの中でもおすすめなのが、「スタイルブレッド」の「至福のクロワッサン」。国産の小麦粉や塩、天然酵母などの厳選素材のほか、100%国産生乳使用の極上バターを贅沢に使用している。タケムラ氏は「バターの香りや食感など、食べる者の五感を刺激する、ネーミングどおりの至福のクロワッサン」と評価。冷凍のままクロワッサンをトースターで焼くだけ、つくりたてのおいしさを楽しめる。冷凍パンのおいしさが広がれば、さらなる需要拡大に期待ができる。
タケムラ氏おすすめのご当地冷凍食品
タケムラ氏は仕事や旅行で地方を訪れた際、必ず冷凍食品を探して食べているという。ご当地冷凍食品は掘り出しものが多いとか。その中で福岡空港のお土産物店でみつけた「唐十」の「冷たいからあげ」がおすすめ。から揚げは揚げたてがおいしいのが常識だが、福岡の飲食店ではあえてから揚げを冷やして食べるご当地メニューがあるそうだ。「揚げたてのようなサクサク感やジューシーさはないものの、かめばかむほどにしっかりとした鶏肉の旨みが口の中に広がり、例えるならビーフジャーキーのような食感」ということだ。福岡県産はかた地鶏のもも肉でつくったからあげのほか、鶏の手羽中をじっくり揚げて特製のピリ辛だれをからめた「チキンバー」、国産鶏皮を揚げて、コクと旨みのたれをからめた「とりかわ旨だれ」などをラインアップしている。
次も福岡の冷凍食品で、博多区に本店を構える人気焼肉店「大東園」の「博多ユッケジャン」。和牛を贅沢に使用し、野菜もたっぷり入ったコクと辛さが絶妙のスープで、お店で提供されているスープが自宅でもそのまま味わえる。スープだけでなく、ごはんや麺を入れるなど、楽しみ方も広がる。
最後に紹介するのは、タケムラ氏がもっとも感動したというご当地冷凍食品、「木乃幡」の「凍天(しみてん)」だ。「凍天」は、福島県の南相馬市で生まれた和と洋が融合したお菓子。外はカリッと中はふわふわとしたドーナツ生地、もちっとした凍餅(よもぎ餅)の食感が同時に味わえる商品。「食感、香り、味、価格などすべてにおいて満足できるパーフェクトな商品」ということだ。
タケムラ氏は、雑誌やラジオなどで定期的にご当地冷凍食品の紹介を行っている。「地元で愛されている商品を冷凍食品にすることで全国展開が可能となってきています。こうしたご当地冷凍食品にも目を向けて、他店と差別化を図って冷凍食品売場を盛り上げてみるのはいかがでしょうか」と話している。
冷凍食品の売場事例
好調を持続してきた冷凍食品カテゴリーでは、各社が売場の拡大や品揃えの強化を図っている。価格訴求はもちろん、機能性や味・品質にこだわった商品、地域商品や外食メニューなど、テーマを持ったコーナー展開も活発化している。最近の新店から、冷凍食品の売場事例を紹介する(※写真・記事は、取材時のものをベースにしているため現状とは異なる場合があります)。