ホームファニシングブランド「KEYUCA」(ケユカ)が2020年に展開を開始したアパレル事業が好調だ。運営会社である河淳(東京都/河崎淳三郎社長)の22年12月期におけるアパレル事業の売上は、対前期比111%増と急速に成長している。店舗向け什器の販売を祖業とする河淳は、いかにしてKEYUCAのアパレルラインを成長させたのか。KEYUCA事業部の事業部長を取材した。
「ツーマイルウェア」でリピーター獲得
KEYUCAは生活雑貨や家具などのホームファニシングを扱うブランドだ。運営会社の河淳は2020年、KEYUCA事業開始20周年を記念し、同ブランドから新たにアパレルラインを展開した。今日までに最もヒットした商品は、部屋着と外着の境目をなくした「ツーマイルウェア」だ。「ツーマイルウェア」とは、自宅でリラックスして過ごせる快適性を有しながら、自宅から2マイル=約3.2kmの範囲に出かける際にも適した服装で、類似語の「ワンマイルウェア」よりもおしゃれなファッションを指す。
KEYUCAの「ツーマイルウェア」は、快適に家事ができるよう腕まくりをしやすく、汚れが付いても落としやすい素材を使用するなど、部屋着に適した機能性を備えている。そのうえで、近所の買物や友人との食事に適したデザイン性を採用。デザインのトレンドをスピーディに取り入れるため、海外の製造会社を起用し、小ロット生産で約1カ月半ごとに商品を入れ替えている。
利便性が高く、サステナブルな商品を開発している点も強みだ。
たとえば「ストッキング靴下」は、伝線や足のムレなどストッキングの悩みを解消した商品である。同商品は口コミで人気が広がり、SNSで「痒いところに手が届く商品」と話題になった。ほかにも、トップスやワンピースは加齢や妊娠・出産によって体型が変わってもきれいなシルエットに見えるデザインを採用するなど、お客に長く使用してもらえるためのサステナブルな提案を行う。
KEYUCAがアパレルラインを打ち出した2020年はコロナ禍の1年目で、外出機会の減少が顕著になり、巣ごもり消費の高まりを受けた。KEYUCAでは家具やカーテン、キッチン・テーブル用品、食器などの生活雑貨カテゴリーの売上を爆発的に伸ばした一方、認知度の低かったアパレルラインは苦戦を強いられた。
しかし、コロナ禍で「ワンマイルウェア」の需要の増加をきっかけに、KEYUCAの「ツーマイルウェア」も注目を浴びてヒット。20代から子育て世代まで、幅広い女性から反響を呼び、リピーターを獲得した。現在、KEYUCAの売上全体に占めるアパレルカテゴリーの構成比は約10%まで成長している。ケユカ事業部・事業部長、渡邉陽平氏は「現在はコロナ禍の収束で巣ごもり需要が減少、生活雑貨カテゴリーの売上は反動減となったが、その分をアパレル事業の成長により補っている」と話す。
KEYUCAは売上の拡大とともに、店舗数も増やしている。2010年代は家具やカーテンなどの大型商材の構成比が大きく、大きな売場を必要としたが、2020年代以降は生活雑貨のシェアを約4割から約6割まで増やし、店舗を小型化することで出店数の拡大を図った。
さらにアパレルや服飾雑貨など、扱うカテゴリーのバリエーションを広げ、ライフスタイル全般をカバーしたことでブランド認知度は高まり、従来の出店エリアである都心部と関西、東海以外のエリアにも出店を可能にした。実際に2022年秋には岡山、2023年春には博多と札幌、2023年秋には仙台に、リニューアル店舗や新店舗を出店している。
現在は89店舗を出店しており、渡邉氏は「24年12月期に100店舗、その後は年間10〜15店舗程度、店数を増やしていくのが目標。全国各地に出店を拡大し、さらなる認知度向上をねらう」と話す。
実店舗の出店のほか、ECサイトの強化も急務だと渡邉氏は意気込む。現在、売上に対する販売チャネル構成比を見ると、KEYUCA全体はECサイトが約17%を占めるが、アパレル・服飾雑貨カテゴリーについては約6%にとどまっている。
「楽天市場などのECモールでKEYUCAのアパレルを認知、購入したお客さまが、実店舗に足を運んで購入いただいているケースも多く、アパレルの売上高自体は当初の想定以上で推移している。今後は店舗受け取りを実装するなどOMO(オンラインとオフラインの融合)を強化し、アパレルにおけるECサイトの売上構成比を20%まで上げたい」(渡邉氏)
アパレル事業が好調の今、KEYUCA事業の展望について渡邉氏は以下のように語る。
「KEYUCAのブランド力が上がれば、祖業である店舗向け什器の事業においても信頼度が上がる。そのためKEYUCA事業は当社にとって非常に重要な立ち位置だと考えている。KEYUCA事業において大切なのは、ただ安いだけではなく、KEYUCAにしかない付加価値やストーリー性をいかにお客さまにプレゼンテーションできるか。たとえば食料は食品スーパーに、日用品はKEYUCAに買いに行くというような流れを築いていきたい」(渡邉氏)