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大手スーパーのマネでは生き残りは不可能!? 売上高100億円以下のチェーンの勝ち残り戦略

人口減少エリアで勝ち残るスーパーマーケットの条件を考察する本連載。第4回は、売上高100億円前後のスーパーマーケット企業が今後とるべき戦略について考えてみたいと思います。

ben-bryant/iStock

100億円前後のチェーンは課題山積?

 やや古い出典ですが、総務省統計局の平成28年「経済センサス」によると、売上高10億円以上100億円未満の飲食料品小売業は2145社、100億円以上は456社です。また、10億円以下はなんと19万1534社もあります。

 少し古い統計データになりますが、「売上高10億〜50億円未満の企業の4 社に 1 社が 赤字と言われています。また、「売上高100 億〜500 億円未満」では 3 社に 2 社が減収というデータもあります。これらはいずれもコロナ禍前のデータですので、状況はさらに悪化しているとみられます。

 こうした規模のチェーンは、人口減少、高齢化(従業員の高齢化も含む)、人手不足、最低賃金の上昇、ネット販売の急伸、そして原料高騰による商品の値上げ、水道光熱費の高騰……と難しい課題に直面している企業が多いと思われます。ただ、そうした規模の小さなチェーンでも、地域のライフラインになっている企業もたくさんあります。

今こそ従業員教育の見直しを!

 では、こうした規模のチェーンが今後生き残るためには何が必要なのでしょうか。結論から言いますと、「そのエリアにおいてなくてはならないお店」になることです。具体的にどうすればよいのかを以下解説していきます。

 1つ目は「従業員の教育」です。はっきり申し上げると、100億円前後のチェーンのほとんどは、大手と比べて十分な教育が行われていないと思います。しかし、教育を疎かにしては、「歩」は「金」に変われません。

 そのためには、まず「商品構成グラフ」をつくることから始めましょう。自社の売場をどうしたいのか。商品部の政策を導入していくのか、それとも会社の方向性があるのか。また、価格ラインは上げたいのか、下げたいのか。商品構成グラフをつくるだけでも、さまざまな分析ができ、色々なことの方向性を決めることができます。

 部門や商品群ごとの利益の貢献度を示した「相乗積」を求めることも重要です。ある企画を実施したとき、その企画が儲かったのか、それとも赤字だったのか、利益計算をすることで見えてくるものが必ずあります。

 自社の置かれている現状を分析するためには、「SWOT分析」をしてみるのがよいでしょう。自社の内部環境を「強み・弱み」、外部環境を「機会・脅威」に分類し、方向性や改善策を洗い出し、そして、新たな経営戦略・方向性を導き出していく必要があります。そしてそれらは簡単に実行できるのか、それとも難しいのか。大手チェーンはそれらを通常業務として行っています。商品構成グラフの作成、相乗積、SWOT分析、この3つだけでも確認すれば、自社・自分の状況がわかるでしょう。

エリアダントツ一番の商品を開発せよ!

 次に取り組みたいのが、「商品部の強化」です。

 具体的には、「棚割り」です。カテゴリー毎の商品棚割りは最低年2回実施できているでしょうか。これはできている企業・できていない企業にわかれるかと思います。棚割りは非常に重要な仕事です。これができていないと、1年中同じ売場となってしまいます。お客さまはどう思われるでしょうか。

 「商談」も見直してみましょう。自社はメーカーさん、問屋さんと“商談”ができているのでしょうか。お取引先さまとコミュニケーション・意思の疎通ができていないと、「取引先」として認識されません。昭和・平成は、メーカー・問屋さんが商品を売り込みに訪問していただける時代でした。しかし令和は、メーカー・問屋さんから「取引先」と認識してもらえないと、商品が買えない時代になりつつあります。

 「独自商品の強化」も重要です。つまり、自店に行かないと買うことができない商品です。生鮮3部門と総菜部門に関しては、中小チェーンのほうが小回りの良さを生かした工夫を凝らすことができます。やり方次第では大手チェーンには真似のできない品揃えや販売価格を構築できるでしょう。厳しい環境下で生き残るためには、ぜひともこの「商品」の分野で自社にしかない魅力を磨き、エリアでダントツ1番の商品を開発する必要があります。

「販売力」を強化するには

 「販売力の強化」にも取り組みたいところです。そのために実践したいのが、「単品実績の把握」です。全単品の実績を把握するのは難しいかもしれませんが、主力単品の「売上、粗利益(率)、商品在庫」は簡単にわかるはずです。品切れと過剰在庫にも注意しましょう。在庫が増え過ぎると、キャッシュフローにも影響します。

 バイヤーの売り込み商品をどう売って「販売」していくかも重要です。従業員1人ひとりが誠心誠意、気持ちを込めて商品を売り込めば、お客さまにも必ず通じます。「なにこれ」「買ってみたい」「食べてみたい」という感動をお客さまに与えましょう。そのためには、ただ商品を売場に置くだけではダメです。POPやマイクパフォーマンスなど、従業員全員で商品を売り込んでいくのが大切です。

 価格戦略に巻き込まれないことも大事です。当然のことですが、価格は重要な要素です。大手のスーパーマーケットと同じ価格で商品を販売するだけでは利益は取れません。同質化からの脱却(ナンバーワン志向)、異質化への挑戦(オンリーワンへ)で独自色を磨きましょう。

 繰り返しになりますが、人が成長しないと企業も成長しません。100億円以下の企業が500億円・1000億円チェーンの真似をしたところでうまくいかないことがほとんどでしょう。それはなぜか。

 大きな企業は、PDCAを回しながら仮説と検証を繰り返した末に、その売場を構築しています。大手のチェーンn売場には多くの場合、「プロセス」があります。だから、簡単に真似ができないのです。見かけが似ている売場はつくれるかもしれませんが、このプロセスがないために継続できず、挫折してしまうのです。残るのは不良在庫の山です。

 大切なのは、バイヤーや店長など少数精鋭の主力メンバーが集まり、喧々諤々と話し合い、みんなで自店の方針を決めることです。方針が決まれば、あとは全員参加で徹底的に売り込むだけです。大きな企業の長所は真似するのはいいですが、同じことをやるだけでは意味がありません。