ドラッグストア(DgS)の食品の取扱高は生鮮食品を含め年々増加しており、食品スーパー(SM)の牙城を侵食しはじめている。しかし、その“脅威”については、どこか抽象的に語られることが多い。そこで本稿では、「財務分析」「売場分析」という2つの視点で、フード&ドラッグの脅威を具体化し、そのうえでSMが取るべき対策について考察する。
財務分析編
SM・DgSの経営数値に見る利益構造の違い
まずはSM・DgS各社の財務指標から、両者の経営戦略の違いについて分析する。
図表❶❷は2020~21年度(21~22年2月期~6月期決算)のSM、DgS各業界の上位10社の実績をまとめたものである。20年度はコロナ禍の巣ごもり特需でSMは上位10社すべてで増収増益、DgSも8社が増収増益だった。一方21年度は、SMでは増収6社、営業増益2社、増収・営業増益が2社、DgSでは増収企業が8社、営業増益2社、増収・営業増益2社と、業態内での企業間格差が生じている。とくに利益面では、競争激化の環境に加え、原材料、物流費や水道光熱費の高騰で減益となる企業が両業態ともに多かった。
他方、全社合計の売上高伸長率はDgSが106.7%、SMが100.7%と、DgSの伸び率が高いが、これはマツキヨココカラ&カンパニー(東京都/松本清雄社長)の発足効果が大きい。営業利益についても、DgS(95.4%)がSM(87.3%)よりも減益幅は小さい結果となった。
ここで注目したいのは営業利益率である。上位10社の売上高と営業利益をそれぞれ合計して算出した対売上高営業利益率は、SMが21年度で3.1%、20年度で3.6%。一方、DgSは同様に4.6%、5.1%という推移で、2年連続でSMより1.5ポイント高い結果となった。
この理由としては、図表❶❷にも示したとおり、売上高販管費率がSMの21.6~31.0%に対してDgSが16.1%~27.2%と、低コストで運営されている点が挙げられる。SMは生鮮や総菜部門の什器や厨房設備、さらに人員の投入コストが重く、売場面積が大きいぶんだけ固定費も膨らむことが、DgSと比べたときの収益の格差につながっている。上位企業の業績を比較分析すると、あらためてこのことを体感できるだろう。
DgSはSMより「経営安全度」が高い
続いて、今回の特集テーマであるフード&ドラッグと、競合するSM企業の財務比較を行ってみたい。
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