リンガーハットジャパン(長崎県/福原扶美勇社長:以下、リンガーハット)は12月12日、東京都八王子市に「リンガーハット冷凍食品直売所 八王子八日町店」(以下、八王子店)をオープンした。同社が展開する冷凍食品専用の無人直売所としては3店舗目となる。リンガーハットが無人直売所を展開するねらいは何か。同社の担当者に聞いた。
24時間営業の無人直売所を展開!
リンガーハットが既存の通常店に初めて冷凍食品の自動販売機を設置したのは、2021年6月のことだ。その後、2022年8月に自動販売機のみを設置した無人直売所である「冷凍食品直売所 青梅店」(以下、青梅店)を初出店。同9月には「冷凍食品直売所 福岡大池店」(以下、福岡店)を続けて出店し、12月には3店舗目となる八王子店をオープンした。
冷凍食品直売所では、24時間365日、自動販売機でリンガーハットの冷凍商品を購入することができる。直売所の売場面積は5~7坪で、自動販売機を3~4台設置する。在庫管理はクラウドで行っており、自動販売機の在庫が少なくなると近くの通常店の店員が補充する仕組みだ。直売店を出店した経緯について、リンガーハットのベンダー推進チーム・小島信弘氏は、以下のように説明する。
「コロナ禍で対面販売に抵抗を抱くお客さまが増えたことから、まず既存の通常店に自動販売機を設置した。通常店の売上減をカバーするため実験的に始めたところ、売れ行きがよかったため直売所を展開するに至った」(小島氏)
冷凍食品の価格は通常店で販売するテイクアウトメニューと同じだ。1~2個単位の購入が多く、看板商品のちゃんぽんや炒飯、餃子を中心に売上は好調に推移しているという。
「とくに八王子店の売上は想定以上だった。駅前ということもあって人通りが多く、店の前には横断歩道もあるため一目につく立地がよかったのだろう。すでに閉店した通常店と間違えて入店して、購入されていくお客さまがいるという話も聞いている」(同氏)
続けて、深夜帯でも売れることに驚いたと小島氏は語る。
「1日のうち最も売れるのは昼と夕方の時間帯だが、売上全体の1割は深夜帯となっている。全体の1割の比率でも商品が売れていれば24時間営業をする意味はあると考えている」(同氏)
3年で自動販売機1000台の設置をめざす
直売所では、お客を誘引するための特別な工夫はしておらず、特段PRに力を入れているわけでもないという。「そうすることで商品力がどれだけあるか、売上の進捗に気を払いながら見極めたい」と小島氏は話す。
立地についても、現段階では条件を設けておらず、物件次第で検討していくとのことだ。「八王子店の売上が好調だからといって、駅前立地にこだわるつもりはない。青梅店は都道5号の幹線道路沿い、福岡店は近隣に住宅街が並ぶ市道沿いに出店している。この2店舗も想定どおりの売れ行きを見せており、郊外出店についても検証と分析次第で検討していく」(小島氏)
売場面積も同じく条件は決めていないという。小島氏は「面積によってはお客がセルフで商品をつくるイートインスペースの設置も可能性としてはありえる。実現には保健所の認可が必要になるが、それができればベストだろう」と語る。
リンガーハットの冷凍食品自動販売機の展開数は現在、80台ほど。直売所の冷凍食品と通常店がカニバリを引き起こすことは懸念しておらず、今後は3年以内に1000台の設置をめざしているという。
「1000台実現のために、既存の通常店への自動販売機導入を積極的に進めたい。直売所の数をどれだけ増やしていくかは現段階では想定しておらず、新店の出店は今のところ未定だ」と小島氏は説明する。
商品の購買動機を増やすために
直売所の出店は、リンガーハットの冷凍食品の広告塔としての役割も果たしている。リンガーハットでは20年ほど前から家庭用向けの冷凍食品を展開しており、これまで通常店や小売店で扱ってきたものの、お客の認知は十分とは言えなかったという。直売店を出したことがニュースになり、結果的に冷凍食品の認知度を高まっているとのことだ。
「冷凍食品という新たな需要にアプローチし、当社商品の購買動機を増やしたいと考えている。将来的に、自動販売機専用の冷凍食品を開発していく可能性もあるだろう」(同氏)