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中間決算は衣料・住関連が回復も低落トレンドは継続……GMS復活の道筋は?

改革の只中にあるGMS(総合スーパー)。2022年度上半期(3〜8月)業績にその成果は表れたのか(数値は億円以下を切り捨て)。

GMSの2022年2月期上期決算では、衣料品の売上が回復した企業が目立った

大手GMSの中間決算は……

 大手各社の23年2月期上期決算の営業損益を見ると、イオンリテール(千葉県)とイトーヨーカ堂(東京都)の大手2社は赤字、イズミ(広島県)と平和堂(滋賀県)は減益、イオン北海道(北海道)のみが増益という結果だった。

 イオンリテールは営業損失43億円。営業総利益は95億円増えたが、電気料金上昇による水光熱費42億円増が足を引っ張った。ただ、水光熱費以外の経費を59億円削減し、前年同期155億円の損失から112億円改善した(東北事業を除く、前年実績を新収益認識基準に置き換えたもの)。
 
 イトーヨーカ堂は営業損失16億円(前年同期は10億円の黒字)。水光熱費が58億円増だったが、ほかの販管費を削減し、販管費総額を11億円増にとどめた。だが、営業総利益が16億円減だったため赤字に転落した。

 イズミは営業利益156億円(1.7%減)。増収により営業総利益は増加したが、電気料金の上昇による水光熱費、既存店活性化費、広告宣伝費などのコスト増が響いた。しかし、当初の151億円(5.4%減)の減益計画からは上振れした。

 平和堂は営業利益48億円。旧収益認識基準比較で対前期比32.1%減だった。営業総利益が3億円増えたが、水光熱費7億円増、その他11億円増など販管費が26億円増加したことが減益要因となった。

 イオン北海道は営業利益32億円(53.8%増)。増収により営業総利益が増えたこと、そして水光熱費の増加を他経費削減で吸収し販管費総額を微増にとどめたことで、営業利益を前年同期20億円から12億円改善した。

衣料・住関連が回復基調に

 各社は店舗改革やコスト改革に取り組み、収益力向上を図っているが、電気代上昇という外部要因によって収益が圧迫された。だが一方で、プラスの材料も見られた。新型コロナウイルス下の行動制限がなくなったことで衣料・住関連の売上が回復したのだ。

 各社の売上伸び率は、減収だったイトーヨーカ堂を除き、イオン北海道が衣料7.3%増・住関連1.8%増、イズミがライフスタイル部門(衣料・住関連)6.6%増、平和堂が衣料7.7%増・住関連0.1%増だった。

 プラスとマイナスの要因が相半ばする結果となった上半期だが、下半期もコスト増が収益を圧迫する傾向が続きそうだ。通期業績予想を公表していないイオンリテール以外を見ると全社営業減益の見通しだ。イトーヨーカ堂は上半期業績を受け、当初予想を下方修正し40億円から10億円に引き下げた。イズミは当初予想を据え置き326億円(6.1%減)。イオン北海道も当初予想を変えず90億円(35.1%増)としている。平和堂は当初予想の141億円を108億円(29.7%減)に下方修正した。

GMS低落トレンドは変わらず……

 GMSはこの上半期に衣料・住関連が回復し一定の需要を取り込んだ。だが長年にわたり地盤沈下が続いてきたのが衣料・住関連。回復したとはいえ、コロナ前の水準には戻っておらず、低落トレンドが変わったわけではない。

 GMS勃興期の1960年代、各社は取扱商品を拡張し店舗を大型化するとともに出店を強化していった。百貨店以外では中小・零細の一般商店が多くを占めていた小売業界にあって、経済成長期の拡大する消費を取り込むことに成功しシェアを高めていった。

 GMSは衣食住の生活必需品を低価格で提供することで成長したが、1980年頃を境に成長鈍化が始まった。1970年前後からは専門店やコンビニエンスストアなど新しい業態が登場していたし、1974年の大規模小売店舗法(大店法)施行による大型店の出店規制で拡大にブレーキがかかった。1990年代に入ると、専門店が台頭し、衣食住の消費需要を幅広く取り込むことが難しくなり、GMSの後退という流れが加速した。

自営売場縮小とテナント化の成果は

 低迷の要因とされてきた衣料・住関連分野では、専門店化やプライベートブランド(PB)化を試みてきたが多くが成果を出せなかった。
 衣料・住関連の売上低下に伴い食品の割合が高まってきたが、広域商圏から集客するGMSという大型店舗で食品に特化し収益を改善するのは難しい。
 今、各社が重点的に取り組むのが衣料・住関連の売場面積適正化、すなわち自営売場縮小とテナント化だ。これにより採算性を改善するのがねらいだ。

 イトーヨーカ堂は商業施設としての価値向上を図ろうと有力テナントを導入し、ショッピングセンター(SC)全体の客数増加につなげている。
 イズミは直営ライフスタイル売場において、衣料専門店と組んで新ブランドを立ち上げたり、提携するフランチャイズの店舗を増やしたりして新規顧客層の取り込みを図っている。
 平和堂は数年来、既存店改装を計画的に進めており、衣食住の直営売場にとどまらず、テナントを含めた館全体の活性化に取り組む。

 各社の改革は途上にあるが、課題も浮上している。
 イトーヨーカ堂ではテナント導入によるSC化で客数は増えているが、逆に営業総利益率の低下を招いているという。
 各社はSCとして運営する方向へ軸足を移しつつある。改革を仕上げGMS復活に向けたスタートラインに立てるのか。
 ワンストップショッピングという利便性を求めるニーズがなくならないとすれば、それに最適なマーチャンダイジングを組み立てたうえで、直営売場とテナントの組み合わせを再構築する運営力が求められることになる。