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絶好調オイシックス、22年3月期予想が上振れ期待大の理由と意外なライバルの登場とは

オイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長)が11月11日に発表した2022年3月期上期決算(連結)は、売上高561億6700万円(対前年同期比18.1%増)、営業利益33億4700万円(同15.8%減)、純利益21億5600万円(同12.1%減)と、増収減益に終わった。

新規PR等のコスト負担により増収減益

 減益の要因として同社は、新規PRなどのマーケティング投資や物流コスト負担増加を挙げ、収益を圧迫したとしている。売上高は約86億円の増加で、セグメント別では国内宅配3事業がそれぞれ、オイシックスが285億円(対前年同期比124%)、大地を守る会66億円(同93%)、らでぃっしゅぼーや87億円(同96%)の実績だった。そのほか、米国事業「パープルキャロット(Purple Carrot)」の売上高が55億円(同137%)、他社EC支援・保育園・上海香港エリア事業などその他事業が69億円(同155%)だった。

 第1四半期の業績が、売上高279億1100万円(同20.7%増)、営業利益19億5000万円(同6.1%減)、純利益12億9300万円(同9.3%増)だったことと比べ、第2四半期は成長の勢いが弱くなっている印象だが、業績が悪化しつつあるわけではない。昨年、コロナ禍による巣ごもり需要の追い風もあって急成長した反動もあり、やや一服したという印象だ。

オイシックスをはじめとする会員数の伸びにより持続成長を維持

 オイシックスグループは「顧客を豊かにする食材の提供」をビジョンとして掲げ、安全・高品質な食材をサブスクリプションにより提供する宅配事業を基幹ビジネスとしている。同時に、ビジネスの存在価値として「食に関する社会的課題のビジネスによる解決」を標榜し、とくにフードロスに関してはさまざまな革新的取り組みを通じ、小売業界平均(5-10%)をはるかに下回る食品廃棄率(0.2%)を実現した。同グループは、2つのビジョンに共鳴するファン層を顧客として取り込み、持続的成長を維持してきた。そして、基本的な方向性は今期も変わらない。

 同グループのKPI(重要業績指標)のうち、オイシックスをはじめとする会員数の順調な伸びが持続的成長に貢献した。そして会員数の伸びを支えたのがミールキットだ。とくに「kit Oisix」では、手作り料理の「時短」を求める消費者の支持を広く集めた。もちろん利便性だけではなく、SNS映えする美しさや、オイシックスならではの高品質・安全性も人気の理由だ。

 売上増に伴って粗利益高も着実に伸びた。その結果、直近4期の純利益は、新規PRや物流インフラ整備などの成長投資を織り込んだうえで、年平均34.2%増と高い伸びを示している。

上期進捗率からみてさらなる上振れ期待大

 通期業績予想について同グループは、売上高1050億円、営業利益50億円、純利益30億円の期首予想を据え置いた。この据え置きは、進捗率がそれぞれ53.5%・66.9%・71.9%であることを考えると、かなり保守的なスタンスといえる。

 売上高に関しては、高止まりしているARPU(1ユーザーあたりの平均売上)が今後低下する懸念はあるものの、以下のポジティブな要因も考えられる。

 利益面では、冷蔵物流拠点として新たに建設した「New ORL 海老名ステーション」の稼働に伴うコスト増要因が考えられるが、売上伸長に伴う粗利益増で充分吸収できる。これらを踏まえると、通期業績は売上・利益とも上振れが充分に期待できるとみてよいだろう。

 これまでのところ追い風が吹くオイシックスだが、この先は潜在的会員数の頭打ちなども懸念される。ドイツに本拠を置き、ヨーロッパを中心に世界10カ国以上でオンライン食材キット宅配サービスを提供する「ハローフレッシュ(HelloFresh)」の日本進出なども不安材料だ。オイシックスが間断ないマーケティング・物流投資を維持しつつ、持続的な成長を今後も確保できるか、正念場の時期は意外と近いかもしれない。