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「こんな商品見たことない!」 東三河のローカルスーパー 「クックマート」の催事提案

平均売場面積300坪で
年商27億円を稼ぐ

愛知県豊橋市の「クックマート東脇店」。
愛知県豊橋市の「クックマート東脇店」。

 東三河・浜松エリアで食品スーパー「クックマート」を展開するデライト(愛知県/白井健太郎社長)をご存じだろうか。

 同社は2020年度末の店舗数は11店で、売上高は298億円(コンセッショナリー・テナントを含む)。店舗間競争が激化するなか、ここ4年間で新規出店をせず、既存店の成長だけで売上高を14.1%も増加(17年度の261億円との比較)。店舗の平均売場面積は約300坪と比較的小ぶりながら、1店当たり平均年商で27億円を稼ぐ実力の持ち主だ。しかも全店20時閉店で、集客のためのチラシ販促をしていないというから驚きだ。

 そんな強力な“稼ぐ力”を持つ「クックマート」の強みが、従業員のアイデアから次々と生み出される独自商品だ。

 10月31日、本社のある愛知県豊橋市で展開する「東脇店」「飯村店」「牛川店」の3店を訪問し、同時実施していたハロウィンの催事提案から、来店客の購入意欲を刺激する、ユニークな商品たちをレポートする。

ハロウィン当日の「飯村店」の総菜売場。クックマートは催事提案に力を入れており、ユニークな商品が所狭しと並ぶ

外食気分が味わえる
盛り合わせ商品

 まず「クックマート」の店頭で目にとまるのが、盛り合わせ商品だ。

 他社との違いは、希少部位を含めて多品目を詰め合わせている点だ。たとえば、鮮魚売場では、「頭肉」「ホホ肉」も入った「本まぐろ希少部位盛り合わせ」を販売。こうした希少部位を扱えるのは、鮮魚は取引先との交渉、精肉は一等買いで仕入れることによって可能にしているという。

 ふだん食べない部位も入ることで、コロナ禍で外出控えらえるなかでの、外食ニーズを満たしてくれる商品と言える。

「本まぐろ希少部位盛り合わせ」。鮮魚は取引先との交渉により「頭肉」「ホホ肉」などの希少部位も入った商品を提供する

 幅広い価格帯の商品を用意しているのも特徴だ。

 たとえば、精肉売場では、地元の銘柄肉「田原牛」の6種類の部位の盛り合わせ「極」から、「中トロ入刺身盛合せ」、「3点盛り」、豚肉や豪州肉が入った「満腹セット」などを販売。それぞれのシーンやニーズに応じて、商品が選べるようにしている。また「極」のような上の価格帯の商品あるからこそ、今後もハレの日にあてにされるような提案力の高い売場を演出できるほか、中・低価格帯の商品の動きもよくなる効果があるという。

精肉売場の盛り合わせ商品
鮮魚売場の盛り合わせ商品。幅広い価格帯の商品を提供することで、来店客がそれぞれのシーンやニーズに応じて、商品を選べるようにしている
鮮魚売場で販売していた「お刺身盛り合わせ」。上の価格帯の商品を用意することで、ハレの日にあてにされるような提案力の高い売場を演出する

名前、見映え、包装・・・
ボリューム感を出す
さまざまな工夫

 次に、巧みにボリューム感を訴求する商品づくりがなされているのも特徴だ。
 具体例をあげると、精肉売場の挽き肉は、上部にラップを巻くことで素材が押しつぶされてしまうのを防ぐべく、トレイではなくパック入りで販売。素材がつぶれないためボリューム感が感じられる。

精肉売場の挽き肉は、素材をつぶさないようにパック入りで販売する

 総菜売場では、具材をふんだんに詰め込んだサンドイッチをコーナー化。厚切りした具材を断面でしっかり見せることで来店者がその量感に驚くほど、インパクトのある商品に仕上がっている。

 さらに隣のインストアベーカリーでは、「でぶパン」という商品名でコロッケや卵スプレッドなどを挟んだ、ユーモアもたっぷりな商品を販売していた。

具材をふんだんに詰め込んだサンドイッチはインパクト大だ
インストアベーカリーで販売していた「でぶパン」。名前のユーモアも具材もたっぷりだ

「ケーキ寿司」「肉巻餃子」…
斬新なオリジナル商品

 他社では見かけない新しい商品も多く販売している。
 たとえば、総菜売場で一段と存在感を放っている、具材をケーキのように飾ったチラシ寿司「ケーキ寿司」や、精肉売場で販売している、餃子のネタを地元の銘柄豚でくるんだ「肉巻餃子」などだ。
 これらは、パート・アルバイトを含む従業員のアイデアから生まれたもので、今や「クックマート」の名物商品になるほど支持を得ている。

総菜売場で一段と存在感を放っている「ケーキ寿司」。「ハレの日の食卓が一気に華やかになる」と大人気だ
餃子のネタを地元の銘柄豚でくるんだ「肉巻餃子」。クックマートのオリジナル商品だ

独自の社内制度で
従業員の自発性を促す

 なぜ「クックマート」はこのようなアイデア商品を次々と生み出せるのか。
 その背景にはデライトの独自の組織開発がある。同社は、本部主導で現場が支持・命令に従うような店舗運営ではなく、「一人ひとりが『働き甲斐』を感じられる組織こそ、従業員のパフォーマンスを高め、結果的に業績を伸ばすことにつながる」という考えのもと、「人を幸せにする新しいチェーンストアの創造」をビジョンに掲げている。
 
 このビジョンを具現化するべく、「現場の一人ひとりが自ら興味・関心・好奇心を持って、よく見て・気づき・考え、個々の能力を発揮することで各地域に密着した強い店づくりができる組織をめざしてきた」(デライトの白井健太郎社長)という。

「飯村店」の総菜売場。駐車場が満車状態になるほど多くの来店客で賑わっていた

 「クックマート」の店舗運営は、各チーム(デライトで「部門」のこと)のチーフが、各チームを指揮する本部の「統括」と連携して、仕入れや売場づくり、価格設定まで権限を持って行う。そして店長が、チーム間、また店全体の連携を促すことで、店舗の一体感や競争力を最大限に引き出せるようにしている。

 それだけではない。デライトでは従業員の声を反映し年々進化させる「社内制度」を構築しているほかに、店長とチーフによる月に1回の「1on1ミーティング」、店舗や部門の垣根を越えて情報交換や交流ができる「社内SNS」など、コミュニケーションを活発化させる制度も導入しており、これによって心理的安全性が高く、従業員が自発的に行動できる組織文化を醸成しているのだ。

 従業員のアイデアを引き出すことができれば、独自性のある強い店づくりができるということを「クックマート」の売場は体現している。