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イオン九州、経営統合から1年 組織変更による更なるシナジー創出とデジタル化で収益向上をねらう

イオン九州(福岡県/柴田祐司社長)は10月6日、2022年2月期第2四半期の決算説明会を実施した。20年9月にマックスバリュ九州、イオンストア九州と経営統合し、新生イオン九州となってから約一年。統合後がもたらした影響や変化はどのようなものだったか。

経営統合から1年、上半期決算は増収増益

 イオン九州の22年度2月期第2四半期の営業収益は、2399億1700万円だった。対前年同期比では126.9%の増加だが、これは旧イオン九州との比較によるもので、旧3社の合計との比較(参考値)では1.8%増となる。ほか、営業利益は25億7900万円(旧イオン九州前年同期から35億5400万円増)、経常利益28億1900万円(同36億6700万円増)、当期純利益17億4300万円(同28億3000万円増)と、赤字だった前年同期と比較すると良好な成績となった。柴田社長は増益要因について、「総合スーパー(GMS)の利益改善」との見方を示している。

 業態別既存店売上について上半期を通してみると、昨年コロナ需要で好調だった食品スーパー(SM)や、ディスカウントストア(DS)が対前年同期比(旧マックスバリュ九州との比較)で99.1%とやや下げた。一方、GMSでは同102.2%、食品部門に限って見ても同103.1%と好調だった(GMSは旧イオン九州のGMS業態と旧イオンストア九州の2社合算値との比較)。

 店舗数の面では、合併前はGMS、ホームセンター(HC)を中心とした119店舗から、今期には旧マックスバリュ九州が運営していたSM、ディスカウントストア(DS)、旧イオンストア九州が運営していたGMSなど183店舗が加わったことで、計320店舗となった。

上半期の注力施策は?

 上半期注力した施策を順番に見ていくと、まず食品・SMではイオン九州オリジナルの商品開発に注力した。生産者と連携した「素材にこだわった逸品」シリーズからは、単品で月間2000〜3000万円を売り上げるヒット商品も誕生したという。また、一斉値下げ企画の「本気の価格1000品目」も、売上と粗利を嵩上げできる企画として継続する。

 GMSで展開する衣料・住居余暇では、新しい生活様式への対応に注力した。コロナ禍で需要の高まったスポーツ・アウトドア用品の強化はもちろんだが、「コロナ禍の変化に対応するためにはスピード感が重要。売場の変更などは、現場の判断でどんどん変えていくよう指示していた」(柴田社長)という。 

 ほか、ネットスーパーや「レジゴー」の導入拡大や、フードデリバリーサービス「Wolt」による食料品配達、イオン九州アプリのリニューアルなど、デジタル面および利便性の向上にも注力した。既存店活性化は、「マックスバリュエクスプレス西新店」(福岡県福岡市)のスクラップ&ビルドをはじめとし、SM10店舗で実施。また、「マックスバリュ豊後高田店」(大分県豊後高田市)を、ディスカウント業態「ザ・ビッグ豊後高田店」に業態転換し、「生鮮に強いディスカウント」をコンセプトとして打ち出した。また同店は、イオン九州が運営するHC「ホームワイド豊後高田店」と隣り合わせの立地にあることから、HCとのコラボ商品を導入。多肉植物などが人気を集めているという。

収益向上のカギを握るデジタル推進

 下半期の主な取り組みとしては、9月1日に組織変更を実施。「営業・商品担当」をそれぞれ「営業本部」「商品本部」に分割したほか、経営統合によるシナジー創出の最大化をねらい、「CX(コーポレートトランスフォーメーション)推進本部」を新たに設置した。経営統合から1年が経ったが、「物流や商品の統廃合についてはひと段落つき、それが利益の面にも表れてきたと感じている。ただし、システム面での統合が遅れており、これからやっと着手できる状況」と柴田社長。統合による更なるシナジーの創出に向けて力を注ぐ構えだ。

 営業施策としては、引き続き「本気の価格」や「年内価格凍結」を中心とした価格施策を継続。またHCでは、20年9月にプロ向け業態として1号店を出店した「ホームワイドプロ」の2号店「ホームワイドプロ福岡空港店」(福岡県福岡市)に10月1日オープンした。9月30日にイオン九州のECストア「イオン九州オンライン」のリニューアルを行ったが、ECストア上でもホームワイドプロで取り扱っている約4万点の品揃えを実現する方針だ。上半期にも行った利便性向上に関するデジタルの取り組みも一層加速させ、「リアル店舗とデジタルの結びつき」を収益向上のカギと捉えて尽力する。