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カインズ、本社敷地内に建てた「戸建て住宅」がSPAをさらに推進する理由とは

ホームセンター(HC)大手のカインズ(埼玉県/高家正行社長)は9月、ハウスメーカー兼総合不動産事業を行うケイアイスター不動産の施工により、本庄早稲田の本社敷地内に「ハウススタジオ」を3棟建設した。

見た目は戸建て住宅であり、趣味のDIYガレージ。カインズのSPA(製造小売)化を強く推進する役割を果たすとはどういうことか。

カインズのハウススタジオ(A棟)

LDKから直接バスタブが見える住宅?

2階建ての建物。吹き抜けの玄関スペースがあり、室内に入ると充分な広さのLDKスペースが広がる。その斜め奥にはバスタブが見える。

え、バスタブ?

よく見れば、バスタブとキッチンの間には仕切りがないのである……

ハウススタジオA棟のLDKスペース

そう。ここは、単なる戸建て住宅ではなく、カインズが商品パッケージや販促素材の撮影で使うために建てた、自社「ハウススタジオ」である。

毎年、春夏と秋冬のシーズンごとにプライベートブランド(PB)を新商品を発売するカインズ。ナショナルブランド(NB)商品と違って、商品パッケージも店内用のPOPも、そして販促用の素材もすべて自社で制作する必要がある。むしろ、自社で制作するからこそ、毎シーズンのテーマに沿って、臨機応変にコーディネートされた空間を提案することができるのだ。

しかし、そのコーディネートされた空間を撮影するには、時に広いスペースも不可欠だし、さまざまなイメージの背景や部屋を用意する必要がある。これまでは毎回商品をトラックやバンなどに詰めて、東京都新を含め、その時々の用途にあったスタジオをレンタルし撮影に赴いていた。スタジオに搬入後、商品イメージにあった撮影をしてはセットを変え、撮影、最後には現状復帰をして1回の撮影が終了。時間が膨大にかかるため、前泊や後泊が頻繁にあったという。

さらにホームセンターの商品は、重く大型の商品もあり、車に乗り切らないケースもあるし、例えばクッションなどを例にすれば撮影当日まで全ての色柄が揃わないこともある。その度ごとに、別の方法や別の機会を得て撮影し直さなければならない。つまり、撮影以外に膨大な時間がかかっていたのだ。

総延べ床面積200㎡超、ハウススタジオが可能にすること

そこで今回カインズは、本庄早稲田駅前の本社敷地内に3棟からなるハウススタジオを建設した。

冒頭で紹介したA棟は、唯一の2階建てのハウススタジオで、水道、ガスを整備しているのが特徴。1Fは77.94㎡と広々しており、自然光があたり、LDKと風呂回りをイメージした生活シーン全般が撮影できる。室内は余計な仕切りがないワンルーム構造になっているため、撮影するのに適しており、例えばキッチンの後ろ側から撮影するのも障害がない。また、コンクリート敷の広い庭スペースを備えているので、ウッドデッキを敷き詰めてガーデンパーティやグランピングの風景を撮影することも、犬の水遊びシーンなどを再現することも可能だ。

A棟には広いガーデンスペース

B棟は、「ザ・スタジオ」という佇まいで、壁が可動式となっており、背景の壁を自由に組み替え、さまざまな雰囲気に合わせて室内を撮影できる92.74㎡の平屋建ての建物。3棟のなかでもメーンスタジオとして活用を予定している。

可動式の壁を使い、臨機応変にさまざまなシーンが撮影できるB棟内部

最後のC棟はDIY提案を生業とするカインズらしいガレージ風のスタジオ。34.78㎡の広さで、コンクリート張りとなっている。これまでDIYの撮影は、本社屋内のスタジオスペースやレンタルスタジオで行っていたが、大きな音が出せなかったり、大掛かりなDIY作業をすることはできず、制限が大きかった。C棟は防音性が高く、汚れを気にせずに使用できるので、商品撮影だけでなく、How to動画の撮影にも使用できる。

雑然としたガレージの佇まいのC棟

カインズは、現在、デザイン部のもとにプロダクト、グラフィック、パッケージの各デザインに加え、撮影チーム加わり、一貫した体制でカインズの世界観をクリエイティブで表現する体制を整えている。撮影におけるムリ・ムダを解消したことで、より効率的により良いアウトプットの作り込みに集中できるようになる。

カインズ幹部によると、国内のHC企業やホームファッション企業で、ここまで大掛かりなハウススタジオを完備している企業はないという。

「くらしにららら」を企業メッセージに、住空間のトータルコーディネイト提案とライフスタイル提案を行うカインズにとって、SPA化をいっそう推進する上で、このハウススタジオは1つの大事な役割を果たしそうだ。