生鮮食品を軸とした強烈な価格訴求により圧倒的な集客力を発揮し、関東・関西のマーケットを侵攻中のロピア。なぜ、ロピアの店にはお客が集まるのか。その強さの背景にあるのは何か。食品スーパー(SM)の経営コンサルティングに多数の実績を持つ、アイダスグループの鈴木國朗氏とともにロピアの繁盛店をめぐり、売場づくりや商品構成から同社の強さを分析してもらった。※調査日:2021年9月4日、本文中の商品価格はすべて税抜
個店主義を支えるダイバーシティ・マネジメント
ロピアの売場や商品の特徴を、従来のSMオペレーションの基本的な考えや基準に当てはめて評価すると、その本質を見誤ってしまうと私は思う。ロピアは「ロープライスのユートピアを作ることを目標に生まれた」と同社の経営理念に述べている。ユートピアとはこの世に存在しない「理想郷」だ。つまり、これまでにない理想郷たるSMを創造しようとしているロピアを既存の物差しで測ることには意味がない。
ロピアがめざすユートピアは、「楽しく感動していつも行きたいところ」(経営理念より)だ。そして、各店の繁盛ぶりやお客の買物の様子をみると、そのユートピアに向けて着実に歩を進めているようにみえる。
ロピアがここまで成長できた背景には、ダイバーシティ・マネジメント(多様性を競争優位の源泉として組織を変革するマネジメント手法)に通じる組織づくりの考え方があるように思えてならない。多種多様な才能やキャリアを持つ人材が、それぞれの考えで新しいことに挑戦できる土壌と、高い給与を求めてロピアにやってくる。
ロピアの個店主義は有名だ。一般的なSMは役割分担が進み、個々人は“歯車”のひとつになりがちだ。事業部制を敷き、各店のそれぞれの部門チーフが“最小経営責任者”として、まるで個人商店の店主のように、売りたい商品を買い付け、つくりたい売場をつくる。そうした裁量権を持つチーフたちには、お客の購買行動を観察する力、今後の販売傾向を予測する力、変化への対応力が求められる。
そして、それら力を身に付けたチーフが取り組んだ施策も、常に成功するとは限らない。各チーフは失敗から学び、新たな挑戦を続ける。課題や問題点が見つかれば、各店の各部門で判断を下すフレキシブルな対応によって問題解決のスピードはとても速い。そうした“自分磨き”の社風が根づいていると、チーフたちの行動を見るにつけ、経営幹部の話を聞くにつけ感じる。
今回は、個店の売場づくりや商品構成の違いなどを確認する目的で、2店舗を調査することにした。ロピアの全62店舗(2021年9月現在)の中から調査対象に選んだ店舗は、「ロピアららぽーと海老名店」(神奈川県海老名市:以下、海老名店)と「ロピア港北東急SC店」(神奈川県横浜市:以下、港北東急SC店)である。
海老名店は
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