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1坪未満の空きスペースでも行列のできるビジネスに変える、“スキマデパート”とは

「小さなスペースから世の中を面白くする」をミッションに掲げるスキマデパート(東京都/芳屋昌治社長)が、フレグランス・マジシャンの中田真由美氏と共同で、自由販売機(R)︎を使った無人ポップアップショップ「ATTRACTION FRAGRANCE(アトラクション フレグランス)」を期間限定でオープンした。(場所:東京都渋谷区渋谷1-13-7ヒューリック渋谷第二ビル一階、期間:9月1日〜30日)スキマデパートのビジネスモデルとは何か?その狙いについてレポートする。

ここでしか出会えない、香りのアトラクションが体験できる「香り×自販機」

 今回、販売されるフレグランス「SHIBUYA」の香りは、オリジナルフレグランス作りのワークショップなども開催している、中田氏がセンター街、道玄坂、公園通りなど、35名称の渋谷の地名を自身の記憶や印象をもとに街の匂いをイメージしたものだ。

ビルの1階入り口付近にはフレグランスを販売する『自由販売機』(*なんでも売れる販売機としてスキマデパートが商品登録している)が設置されている。最新のタッチパネル式で画面が切り替わり、クレジットカード決済が可能だ。ECサイトのような流れで決済まで進められ、非常に手軽で便利に感じられた。

都会の小さなスペースを借り上げ、自動販売機ビジネスを展開するスキマデパート  

2階は、加熱式たばこ専用スモーキースペース「paspa」(パスパ)になっており、誰でも無料で利用できる。スキマデパートは、都内の22か所のスペースに喫煙所を運営しており、1日の平均利用者数は、1か所につき10001200人程度。仕事の合間に訪れる人が多く、喫煙所の売上のほとんどが併設されている飲料自動販売機だという。都内に30台ある「自由販売機」はメーカーとタッグを組み、カレーや缶詰なども販売したことがあるが、現在は、渋谷にも設置されており、コンビニのマーケティングにも活用され、売れ筋を探るための販売もしている。今後は、「喫煙所をメディアに」をテーマに、デジタルサイネージ事業にも力を入れてく構えだ。 

無人ポップアップショップ、自動販売機、喫煙所——。同社が手掛ける事業は多岐に渡るが、共通点は「モッタイナイに新しい価値を加えて世の中に知ってもらう」ことだ。

例えば、恋愛ゲームの「イケメンシリーズ」のキャラクターのラッピングが施された「天然イケメン水」を池袋の自由販売機で売り出したところ、大好評だった。同社の岡部祥司取締役は「自動販売機で行列ができたのは生まれて初めて見た」と予想以上の売れ行きに驚いたという。

すべては不動産ビジネスのお困りごと解決からはじまった

岡部取締役や、同社の幹部の多くが不動産関係のビジネス経験者だ。自動販売機を設置する「スキマ」の物件情報は公開されているはずもなく、ビルのオーナーやデベロッパーと直接取引をしているからこそ、物件を確保でき、次々と新規ビジネスを展開できるのだ。社長の芳屋昌治氏が「スキマ」にビジネスチャンスを感じたのは、原宿のキャットストリートにあるマンションの営業を担当していた時だ。オーナーから「入り口の小さな植え込みスペースにごみが捨てられる。なんとかしてくれないか」と要望があった。芳屋氏はそこを借り受け、近くの店舗の広告案件を受諾することでビジネスが生まれた。「スキマにこれほど価値があるのか」。ビジネスの匂いを嗅ぎつけた。

その後、様々なロケーションを探し、小さなスペースを生かしたビジネスを展開していたが、その時、自分たちの想定を超える地代を支払いながら、ビジネスを展開していたのが大手飲料メーカーの自販機だった。それから数年後、自動販売機ベンダーの会社をMA(合併・買収)で取得する機会を得て、本格的に自販機ビジネスに参入することになった。業界では、賞味期限が1年に迫った飲料は返品されることになっているが、スキマデパートはそれを独自のルートから仕入れ、安く販売することに成功。買収当初は600台前後だった自販機の設置は、今では5000台近くまで広がった。

「僕たちが大切にしているのは、世の中のモッタイナイを価値に変えることです。飲料も捨てられるのがモッタイナイし、中田さんが開発する香りなどの良い商品もみんなに知られていなければモッタイナイ。他にも世間にある『モッタイナイバリュー』を作っていきたいし、社会がそれが求められているのではないでしょうか」(岡部祥司取締役)

D to C×自販機の可能性

「スキマビジネス」は非対面を実現するからこそ時代にマッチしているのかもしれない。

例えば、オンライン販売がメインのD to C(ディレクト・トゥ・コンシューマー)ブランドが、ビジネスを拡大するためにリアル店舗への進出を考えた場合、路面店や百貨店に出店すると、コストが嵩み、利益を上げることは容易ではない。「ブランドさんの商品を自販機で販売すれば、リアル店舗に出店する「一歩前」の段階を試すことができると思います。人件費がかかりませんし、施工費も低くて済みますから」(岡部取締役)

実際に、今回の渋谷での「香り×自販機」の設置を機に、「神戸の香り」など、地域に根差した様々な匂いを自動販売機で売るプロジェクトの横展開も考えているという。

 コロナ禍において、百貨店や商業スペースのテナント離れが加速する中、スキマデパートには、空いた物件に自動販売機や無人ポップアップを設置して欲しい、という依頼も届いている。今後は、商業施設のフードコートの一角に自動販売機を設置することも構想しているそうだ。岡部取締役は「テナントは『スキマ』とちゃうやろ(笑)」と笑うが、不動産業界がこれまで目を付けてこなかった小さなスペースに付加価値をつけ、売上を伸ばしたスキマデパートの前には、今後様々なビジネスチャンスが転がっているのかもしれない。

スキマデパートとの共同事業にご興味がある方 株式会社スキマデパート 担当:横山 03-3288-6262