イオングループの再編に伴い、九州内のグループ企業3社が合併して2020年9月に誕生したイオン九州(福岡県/柴田祐司社長)。おもな商勢圏とする九州では競争が激化するなか、生産性向上のため積極的にプロセスセンター(PC)を活用している。今後、独自商品の拡大や地域ニーズへの対応も進める方針で、競争力向上、差別化のためさらに取り組みを強化する。
17年頃から原材料を共通化
総合スーパー(GMS)のイオン九州を存続会社に、食品スーパー(SM)の旧マックスバリュ九州、GMSの旧イオンストア九州が統合したのが2020年9月のこと。その統合前から、当時のイオン九州とマックスバリュ九州ではともに積極的にPCを活用してきたという歴史がある。各店への効率的な商品供給、また店内作業の低減などをねらい、マックスバリュ九州設立の約20年前から畜産を中心にPC施設を運用してきた。
17年頃からは、旧2社で総菜部門の商品や、油や調味料といった原材料を徐々に共通化した。同じイオングループで仕入れ量をまとめることでコストメリットを拡大するほか、商品展開の効率化を図るのが目的だった。
この流れのもと19年1月、佐賀県基山町に旧2社が共同で開設、稼働を開始したのが「イオン九州PC」である。運営はイオングループのイオンフードサプライ(千葉県/戸田茂則社長)。そして20年9月、新生イオン九州が誕生するにいたった。このように見ると、2社は近年、PCを核として着実に融合を進めてきたことがわかる。
背景には厳しい競争環境がある。とくに九州エリアはSMに加え、食品の扱いが大きいドラッグストア、またディスカウントストア(DS)がひしめく流通激戦区だ。そのなかPCは店舗を効率運営するための重要な施設といえる。
あらためて同社が現在保有するPCを紹介すると、佐賀県基山町に畜産および総菜向け、加えて熊本県八代市には水産、そして畜産向けの施設を構える。
PCで製造している商品、半加工品について、イオン九州取締役常務執行役員営業・商品担当の南谷和彦氏は次のように説明する。「消費期限が短く、経時による鮮度劣化が激しい生鮮食品、加工品が対象。一方、店内には、付加価値を生む作業を残すのが基本的な考え方だ」。
イオン九州は現在、複数の業態、フォーマットを展開している。SMの「マックスバリュ」、小型SM「マックスバリュエクスプレス」、DSの「ザ・ビッグ」、そしてGMSの「イオン」「イオンスタイル」などである。
業態やフォーマットのほか店舗規模、商圏特性などの条件に応じ、PC商品の取り扱いはさまざまだ。レギュラーSMの場合、売上高構成比で60~80%、GMSは30~60%といったように幅があるが、いずれも各店の強みを最大化するための商材として使っている。一方、天ぷらやフライものなどは今もすべて店内で揚げており、できたてを訴求できる商品についてはインストアでの加工にこだわっている。
イオン九州は、さらにPCを活用する方針だ。従来、コスト低減、店舗の効率運営がおもなねらいだったが、今後は独自商品の拡大、また重要な営業テーマに掲げる「地域」ニーズの対応にも役立てる。南谷常務は「今後も競争は激しさを増すと見ている。これに対し、PCの新たな使い方にもチャレンジし競争力を強化していきたい」と抱負を口にする。
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