メニュー

ファンケル代表取締役社長 島田 和幸
無添加化粧品、健康食品を軸に小売業と連携し売上拡大をめざす

1982年、無添加化粧品を完成させたファンケル(神奈川県)。その後、サプリメントなどの健康食品分野にも乗り出し、事業を拡大させてきた。おもな販売チャネルである通信販売や直営店舗に加えて今、強化しているのが一般小売業の流通チャネルである。今年4月、新社長に就任した島田和幸氏に成長戦略を聞いた。

世の中の「不」を解消するものづくり

島田 和幸(しまだ・かずゆき)●1955年12月20日生まれ。広島県出身。79年同志社大学法学部卒業、ダイエー入社。94年同社社長室秘書部長。2001年マルエツ入社。03年ファンケル入社。07年同社取締役執行役員経営戦略本部長兼経営企画部長。15年同社取締役専務執行役員グループサポートセンター長。17年4月代表取締役社長執行役員CEO兼マーケティング本部長

──ファンケルが無添加化粧品を開発したねらいは何ですか。

島田 今から40年近く前、化粧品による肌トラブルが社会問題になっていました。原因は、防腐剤や香料など化粧品に含まれる添加物です。

 「なぜ、美しくなるための化粧品が女性の肌を傷つけているのか」と憤りを感じた創業者の池森賢二は、肌に負担となる添加物をいっさい入れない化粧品をつくろうと思い至りました。試行錯誤の末、ついに1982年、肌本来の美しくなろうとする力を引き出す「無添加化粧品」が誕生しました。

──通信販売からのスタートですが、これには理由がありますか。

島田 無添加化粧品ですから、当然、防腐剤は入っていません。そのため、つくりたての無添加化粧品を新鮮な状態でいち早くお客さまのもとに届けるために、通信販売という方法を採用しました。しかしながら、品質保持の観点から密封容器に詰めて使いきりサイズでご提供するため、わずか5mlのバイアル瓶(ガラス製容器)に詰めて発送していました。化粧品の常識を考えれば、異例の容器、容量でした。

無添加化粧品からスタートしたファンケルの代表的な商品。左から「マイルドクレンジングオイル」、「洗顔パウダー」、「アクティブコンディショニングEX化粧液しっとり」、「同乳液しっとり」

 現在は技術開発が進んだこともあって、環境問題に対応したPET樹脂の完全密封容器を採用し、お客さまが開封されるその瞬間まで品質を守っています。とはいえ、品質を保ち、新鮮なうちに使っていただける量には限界があるので、一般的な化粧品に比べれば小容量で、化粧液・乳液では30mlです。

 また、ファンケルの化粧品にはすべて製造年月日を明記しています。いつつくられたものなのかを、きちんとお客さまにお伝えするためです。これも一般的な化粧品とは一線を画す特徴といえるでしょう。

 さらに、開封後も品質を維持した状態でお使いいただける「フレッシュ期間」を独自に制定しています。化粧液・乳液なら60日間です。そのため、各商品にはいつ開封したかをお客さま自身が記入しておくための「フレッシュシール」を同封しています。

 無添加だからこそ、安全・安心はもちろんのこと、効果の高さにもこだわり、商品をお届けしています。

──健康食品事業を展開するようになったのはいつ頃からですか。

島田 もともと創業者の池森には「正義感をもって、世の中の不安や不便、不満などの『不』を解消したい」という強い想いがありました。創業した1980年代、健康食品といえば高価なイメージがあり、誰もが手軽に購入できるものではありませんでした。そこで、「高品質・低価格」というコンセプトのもと、当時日本ではまだ馴染みのなかった「サプリメント」という言葉を使用して、94年から通信販売を開始しました。これにより、サプリメントは一気に身近なものとなったのです。

 その後、99年には発芽玄米事業、2000年には青汁事業も手がけるようになり、事業を拡大していきました。

──現在、通販のほか直営店舗、ドラッグストア(DgS)、コンビニエンスストア(CVS)などの小売業でも販売をしています。

島田 無添加化粧品の通販事業を始めてしばらくすると、「実際に手にとって試してから、使ってみたい」というお客さまの声が数多く寄せられるようになりました。そこで、静岡と沖縄でテスト販売を行いました。これが成功したことから、95年より直営店舗から販売を開始しました。

 直営店舗では、お客さまの肌や健康状態を見極めてから、本当に必要な商品を推奨するという販売スタイルを貫いています。「売らない勇気をもて」といわれるほど、強要せず、お客さまのことを第一に考える。これがファンケルの企業姿勢といえます。だからこそ、お客さまは安心して店舗に足を運んだり、通販をご利用されたりするのだと思います。

 直営店舗での販売が軌道に乗ると、小売業からの問い合わせも増え、99年にCVSの「セブン-イレブン」でサプリメントを、2000年には「ローソン」限定で化粧品を展開するようになりました。とはいえ、当社のものづくりに対する想いや姿勢をきちんと理解してくださることを前提としていましたので、2000年代はそれほど配荷が進みませんでした。導入店舗が増えたのは最近のことです。

通販と直営店舗での限界、小売業との連携を強化へ

──今年4月、新社長に就任されました。

島田 これまでの持ち株会社体制を解消し、今年4月1日付で100%子会社のファンケル化粧品とファンケルヘルスサイエンスを吸収合併しました。これにより、統一された事業戦略のもとでより迅速な意思決定ができる体制に生まれ変わりました。事業会社ごとに分かれていた事業戦略の立案、商品企画・開発、広告宣伝の機能などを一手に担うため、新たに「マーケティング本部」を設置し、その本部長を私が兼任するようにしました。

 新体制のもと、ファンケルならではの強みを生かしながら、全社一丸となって中期経営計画の達成をめざします。

──中期経営計画の2年目となる16年度は好調な業績でした。販売チャネル別の構成比はどのようになっていますか。

島田 販売チャネル別の売上高構成比は、通販45%、直営店舗30%、流通卸17%、海外9%です。ここ数年で流通卸の占める割合が大きくなりました。

 この背景には13年以降、小売業に寄り添った営業スタンスを強化してきたことがあります。市場環境が急速に変化するなか、グローバル企業への躍進を遂げるためには、当社の原点である「お客さま視点」を徹底することが必要であると考え、当時名誉会長だった池森が経営に復帰しました。池森が示した方向性が一般の小売業チャネルの拡大です。さまざまな企業がサプリメント市場に進出している今、「ファンケルブランドを守るために」という名目のもとで従来のような通販と直営店舗に注力するだけでは限界があります。当社が成長するためにはDgS、CVS、総合スーパー(GMS)、食品スーパー(SM)などの小売業と連携した事業構造をつくり上げることが必要となります。

 それ以降、小売業各社からの「こういう協力をして欲しい」「こんな商品が欲しい」といった要望にもきめ細かく迅速に応えるようになり、小売業向けのチャネルのさらなる開拓にも積極的に取り組んでいます。

──小売業への販売チャネルに注力したことで、具体的に何が変わりましたか。

島田和幸社長

島田 売上高がアップしたことはいうまでもありません。16年度の流通卸の売上高は、化粧品関連事業では対前期比21.6%増、栄養補助食品関連事業では同10.4%増を達成しました。これを後押ししたのが広告宣伝です。

 中期経営計画では、戦略的な広告投資による売上拡大に取り組んでおり、それまで年間70億~80億円規模だった広告宣伝費用を150億円規模に増やしました。テレビCMを多く放映するようになると、それに比例して流通卸の売上が伸びる。つまり、テレビCMなどの広告宣伝は小売業にとって大きな販売支援になるのです。同時に、当社にとっては取り扱い店舗がさらに増える施策となり、相乗効果によって売上が拡大しました。

 たとえば、目のサプリメントとして日本初の機能性表示食品「えんきん」は、15年6月に発売すると同時に、テレビCMなど広告を展開し、DgSでの配荷を始めました。老眼対策という話題性もあったことから大ヒットとなり、一気に取り扱い店舗が増えました。現在では、CVSなども含めると約5万店舗に配荷しています。直営店舗は約200店舗ですから、この数字を見ただけでも、テレビCMの効果の大きさは容易に想像がつきます。やはり直営店舗だけでは限界があるということです。

 配荷率を高め、広告を打つことで売上を伸ばし、さらに導入店舗を増やす。こうした戦略が増収という結果に表れているのだと思います。

──小売業との連携を深めるために、どんなことに取り組んでいますか。

島田 4月の体制変更にあわせて、DgS、CVS、GMS、SMなど業態別に営業部を設置しました。それまでは化粧品営業部と健康食品営業部がそれぞれ独立して存在していたため、1つの得意先に対して2人の営業担当がいたのですが、一本化することで1人の営業担当が化粧品も健康食品も担当するようにしました。これにより営業の効率化を図ります。

 また、小売業向けの商品に進化型パッケージを導入しました。というのも、小売店舗では通販や直営店舗のように「説明してから販売する」ことがなかなか難しいのが実情です。そこで、「これは何をしてくれる商品なのか」をわかりやすく伝えるパッケージデザインに一新したのです。

 さらに、小売業各社の販促やプロモーションにも積極的に協力させていただいています。チェーンごとの企画商品や限定商品なども手がける一方、「ラウンダー」と呼ばれるスタッフを派遣し、売場づくりをサポートしています。社内でも小売業各社へのアプローチに積極的に取り組もうという気運が高まっており、今年はフットワークよく、スピード感をもって推進していきたいと考えています。

美と健康に着目したファンケル独自の価値

──化粧品でも健康食品でも、新商品を続々と開発しています。

ファンケルの研究開発機能の中枢を担う「総合研究所」は昨年、第二研究所を増設したほか、研究員も増員した
無添加技術を駆使した化粧品の主力工場「ファンケル美建千葉工場」も昨年、サプリメントの製造ラインを増設した

島田 ものづくりを行うメーカーとして、競合他社との差別化ポイントは研究開発力にあると考えています。昨年、東戸塚にある総合研究所の隣に第二研究所を増設し、研究員を増員しました。

 無添加化粧品は当社独自の価値であり、他社には真似のできないものであると自負しています。しかしながら、サプリメントの差別化はなかなか難しいものです。そこで当社は、「体内効率」を第一に考えてつくることで、他社にはない価値を提供しています。

 どんなに体に必要な成分であっても、体内で吸収できる量には限りがあります。逆に、摂りすぎると、かえって体に悪い場合もあります。また、どこで吸収されるかによって、効果の程度が変わってくることもあります。体に最適な量で、その効果が長く持続し、効率よく吸収できる「体内効率設計」こそ、ファンケルのサプリメントならではの価値といえます。

──「美と健康」への意識が高まるなか、今後どのような事業展開を考えていますか。

島田 化粧品事業については、60代以上のマチュア世代向け化粧品「ビューティブーケ」の本格展開をはじめ、若年層の獲得に向けた新ブランドの開発など、新マーケットの開拓に力を入れます。

 健康食品事業については、50~60代の獲得をめざします。というのも、この世代は健康意識が高いうえ、いったん「これ!」と決めると、継続して購入する傾向にあるからです。ファンづくりに成功すれば、クロスセルも可能になります。また、人気商品のシリーズ化にも着手します。今年3月には目のサプリメントである「えんきん」シリーズから目の疲労感を緩和する機能性表示食品「スマホえんきん」を新発売し、6月には食事の糖と脂肪の吸収を抑える「カロリミット」シリーズから「大人のカロリミット」を機能性表示食品としてリニューアルしました。いずれもターゲット層が異なることから、新たなファン獲得になるとみています。

 新体制がスタートした17年度は大きな変革を遂げる年にしたいと思っています。そのためにも、小売業各社とはこれまで以上に連携を図り、さらなる売上拡大をめざしていきたいと考えています。

今年3月、目のサプリメントである「えんきん」シリーズから目の疲労感を緩和する機能性表示食品「スマホえんきん」を新発売した
今年6月、食事の糖と脂肪の吸収を抑える「カロリミット」シリーズから「大人のカロリミット」を機能性表示食品としてリニューアルした