メニュー

リフォームが強いからできる!エディオン、地域密着「暮らしコンサルタント」戦略で21年3月期決算は過去最高益

エディオンがこのほど発表した2021年3月期(20年4月~21年3月)連結決算は、売上高が7681億1300万円(前期比4.7%増)、営業利益が267億8500万円(同118.0%増)、当期純利益は166億3300万円(同51.5%増)だった。
新型コロナウイルス感染拡大による営業自粛等の影響はあったが、売上高は4期連続で増収を達成。既存店ベースでは、上期こそ前年比5.6%減と低迷したが、下期は巣ごもり需要やテレワーク浸透などの新たな需要を取り込み同14.5%増、通期では4.3%増と売上を伸ばした。

21年3月期、過去最高益を達成したエディオン

ECが前年比50%以上増で好調をけん引

 けん引したのはECで対前期比51.4%増。「テレワークおすすめアイテム」「熱中症対策」「ひんやりグッズ」など、テーマごとにカテゴライズしたECサイトの使いやすさもあり、ニーズをガッチリと捉えた。

  商品別の売上では、テレビが前期比13.0%増、洗濯機が同5.1%増、エアコンが4.9%増。巣ごもり・テレワーク関連ではゲーム・玩具が同27.1%増、空調機器が47.2%増、パソコン関連品が同11.0%増となり、数字にも鮮明に表れた。

  なお、純利益の1663300万円は同社設立以来の最高益となる。

リアル店舗を拡張する同社の狙いとは

21年度、12店舗を新規出店するエディオン

 コロナ禍でも好調を持続した同社の強みはこうした家電の売上だけに頼らないことにある。フランチャイズ店舗750店舗を含め、全国に1187店舗を展開する同社のネットワークは全国に張り巡らされ、21年度中にはさら10店舗以上の出店を計画する。

  販売効率を高める狙いでEC化率を高める小売が増える動きに逆行するようだが、リアルだからこその強みを最大限に活かすのが同社のビジネスモデルの根幹にある。

エディオン京都四条河原町店

 

家電量販店が掲げる「コンサルタント」の意味

 「地域密着型の家電量販店」を謳う同社が掲げるのは「暮らしのコンサルタント」。家電量販店として、地域に根を張りながら、顧客に対しては一家電の販売に留まらない提案をする。それにより、顧客により深い満足を提供する。だからこそフェイストゥーフェイスの接客が重要になる。その核となるのがリフォーム事業だ。

  省エネ家電の購入に来た顧客に、リフォームも含めた提案をすることで、光熱費の削減まで含めた生活コスト低減のアドバイスが可能となる。顧客にとっては動くお金は一気に大きくなるが、中長期ではメリットがあり、あながち無下にもできない側面はある。こうした提案において重要なのは、顧客との信頼関係。それだけに、「地域密着」が重要な要素となる。

  ある意味では、金融商品に通じる販売スタイルを採用することで、同社は家電量販店でありながら「スマートな暮らし方」というメリットを提供する。それが、同社が「暮らしのコンサルタント」を掲げる真意だ。

  すでに同社の大きな柱のひとつとなっているリフォーム事業では、水回りや外壁といった古くなったから買い替えるというニーズではなく、よりよい生活をするために「生活を変えるためのリフォーム」をターゲットとするという。旧来のリフォーム業者とはしっかりと棲み分けしている点でも、同社の戦略はしたたかだ。

  たとえコロナが終息したとしても、日本経済の行く末は閉塞感しかなく、消費者の財布のひも固くなるばかり。一方で、本当に必要なものにはしっかりとコストをかける傾向も鮮明になっている。

点でなく面で売る「計画的消費」で緩める財布のひも

 

 同社の販売戦略は、その意味ではしっかりとリターンが得られる「計画的消費」の提案ともいえ、これからの小売りが参考にすべきヒントが凝縮されているといえる。

  同社がもう一つ強化するのが、教育事業だ。オンラインでプログラミングが学べるスクール事業では2025年までに会員数10万人を目指すという同社。教育のIT化はスタートしたばかりだが、PC、タブレットなどのハードウェアの他、教材などのソフト関連の新たな需要が生まれることは確実で、ここにも「計画的消費」を推進する果実がたわわに実りつつある。

苦境のリアル店舗はどうすれば生き残れるのか

 リアル店舗による小売の行く末は厳しい見方がほとんどだが、売り方を変えることでまだまだ可能性はある。同社の進化のプロセスは、まさにそれを実証している。

  外出が減り、ECに小売の軸が移っても、どこかんい新たなニーズが必ず生まれる。テレワークが浸透すれば、自宅のワークスペースを充実したくなる。仕事ツールを充実させていくと、仕事部屋が欲しくなる。教育のオンライン化が浸透すれば、PC需要は高まり、子ども部屋に求められる要素も変質するーー。

  先取り、囲い込みは競合に勝つためには必須の戦略だが、同社はじわじわと領域を広げながら、着々と新しい形の家電量販店のポジションを構築している。気が付けば、EV化が進む自動車販売店をも取り込み、正真正銘の「暮らしのコンサルタント」して確固たるを気づき上げるーー。そんな日がくるのもそう遠くないかもしれない。