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気が付けば「家電版ユニクロ」!好調ヤマダ電機が“経済圏”拡充とともに進める戦略とは

ヤマダ電機(社名はヤマダデンキ)などを展開するヤマダホールディングス(群馬県)が5月上旬に発表した2021年3月期決算は、売上高1兆7525億600万円(前年同期比8.7%増)、営業利益920億7800万円(140.2%増)、経常利益988億7500万円(114.6%増)、親会社に帰属する当期利益は517億9800万円(110.5%増)となった。

一時は業績が低迷したヤマダホールディングスだが、いま再び力強い成長軌道に乗っている

特別定額給付金も追い風に

 好調だった20年3月期をさらに上回る業績となった同社。コロナ禍では多くの業種がダメージを受けたが、恩恵を受けた業種もある。家電量販店は、コロナが追い風となったひとつであり、各社好調で同社も勢いを加速させた。

 昨年4月以降に支給された特別定額給付金は、多くが家電に費やされたといわれる。在宅勤務の浸透に加え、休日の外出自粛も重なり巣ごもり需要が拡大。同社は、こうした需要を郊外型店舗の増床やテレビショッピング等の通販、ECでうまくからめとり、売上を伸ばした。

「オリジナル家電」で訴求力高め需要すくいとる

 もっとも、単に商機をごっそりものにしたことだけが躍動の理由ではない。同社が強調するのは、SPA(製造小売)商品の拡大だ。アパレル業界で一般的なSPAは、要は自社で企画開発したオリジナル家電ということになる。

 メーカー・卸を介さずに直接製造するため、当然粗利益率が上がる。これまで同社は圧倒的な販売力をベースに大量仕入れをし、それにより他社を凌駕する安値を実現し、顧客をひきつけ、勢力を拡大してきた。

 だが、それもここ10年は停滞が続き、その間密かに体質転換を模索。“家電版ユニクロ”といってそん色のない企業体へ着実に変態しつつある。

SPA家電を強化するヤマダホールディングス(同社決算説明資料より)

 例えば、同社が新ブランドとして展開する「RIAIR」は快適な空調を提案する季節家電。4月30日に発売された最新商品のエアコンは、クリーン洗浄・内部クリーン運転・活性炭フィルターのトリプリクリーンシステムを搭載しており、清潔さにこだわっている。

 5月中旬に発売した電子レンジも使いやすさにこだわりながらも機能を絞り、価格は税込みで1万を少し超える程度に抑えられている。

 他にもテレワークの現状に合わせた独自機能こたつを開発するなど、同社のSPA家電は、「YAMADASELECT」としてこれまでに累計約1万アイテムにおよび2021年3月期通期実績で販売構成比の12.6%、粗利は23.5%と高水準となっている。

「生活インフラ企業」への変態加速

 加えて同社は、「暮らしまるごと」をコンセプトに家電だけでなく、生活インフラを支える商品・サービスを拡充し、それに応える多様な店舗展開も進めている。新規出店は、2021年下期から加速させ、年間30店舗を出店。家電以外のシェア拡大にもこれまで以上に注力する。

 買収した大塚家具や昨年子会社化したレオハウスとの連動も「暮らしまるごと」を推進するキーとなる。すでに家具と家電を売場や製品づくりで連携させ、独自性を打ち出すなど、着実に家電だけのヤマダのイメージから脱皮しつつある。

 さらに金融セグメント、環境セグメント、フードや旅行などのその他のセグメントも着々と地盤固めが進められ、全てがうまく連動すれば、“ヤマダ経済圏”として顧客を取り込むことも可能になる。

 22年3月期は、売上高1兆6860億円(3.8%減)、営業利益900億円(2.3%減)、経常利益970億円(1.9%減)とまだ終息が見通せないコロナの状況を鑑み、控えめな見通しだが、環境変化にも揺るがない体制は着々と構築されつつある。

 勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなしの言葉を残したのは肥前国第9代平戸藩主、松浦清。コロナで売上を伸ばした企業が、ポストコロナでも躍進するかは分からない。だが、同社が負けない施策を地道に繰り出し続けていたことは確かだ。