新型コロナウイルス感染拡大で、食品小売業界を取り巻く環境は一変し、いまも大転換期の渦中にある。非接触ニーズの高まりを追い風に、ネットで買物を済ませる人が一気に増え、リアル店舗の価値はこれまで以上に問われている。そうしたなか今、リアル店舗には何が求められているのか。 これを明かにするべく『ダイヤモンド・チェーンストア』編集部では、食品小売業界で注目される6つのテーマを洗い出し、その領域で先進的な取り組みを実践している26店を厳選。消費者の支持を得る秘訣を取材した。
大手チェーンに負けない!
ローカルスーパーの独自戦略
1つ目のテーマは「話題のローカルスーパー」だ。大手食品小売企業がM&A(合併・買収)により勢力を増すなかでも、独自の施策で唯一無二の存在感を発揮するローカル食品スーパー(SM)が各地に存在する。
静岡県を中心に店舗展開し、コロナ禍で相次いで新業態開発を進めているタカラ・エムシー(上野拓社長)、京都府・下鴨の地で営業し、その選りすぐりの品揃えで全国各地からファンが訪れるフレンドフーズ(藤田俊社長)、SNS映えするフルーツサンドで一躍全国的に有名になった大和(愛知県/大山皓生社長) に焦点をあて、たとえ規模は大きくなくとも選ばれる、各社の取り組みを紹介する。
テーマ2つ目の「最先端の商業施設」では、時代をリードする施設開発の今に迫った。“100年に1度”ともいわれる大規模再開発が進行する東京・渋谷に2020年に開業し話題を集めた大型複合施設「MIYASHITA PARK(ミヤシタパーク)」を例にとりあげる。
「アウトドア」「健康」「エシカル」・・・
注目ワードの最先端を知ろう!
店舗間競争が激化するなか食品小売店で重要になっているのが、他店と差別化を図れる提案力だ。
3つ目のテーマ「注目キーワードの最新店・スポット」では、いま消費者を惹きつける4つのキーワード「アウトドア」「健康」「冷凍食品」「エシカル」をあげ、各領域で先進的な店づくりを実践する店・施設から、提案力アップのヒントを提示する。
アウトドアの“聖地”をめざす「アルペンアウトドアーズ フラッグシップストア柏店」(千葉県柏市)、漬物メーカーが仕掛ける「発酵」の体験型テーマパーク「OH!!!~発酵、健康、食の魔法!!!~」(埼玉県飯能市)、冷凍機器メーカーが開業した冷凍食品専門店「TŌMIN FROZEN(トーミン・フローズン)」(神奈川県横浜市)、エシカル消費を“自然に”促す提案で人気上昇中のセレクトショップ「style table(スタイルテーブル)」が登場する。
テーマの4つ目に掲げたのは「ネットとリアルを融合した未来型店舗」だ。デジタル活用によって、リアル店舗での買物体験をいかに高めていくかは業界各社にとって大きな課題となっている。
そうしたなか、早期からECと店舗の顧客データを一元化し提案力を向上させてきたのが、美容系総合ポータルサイト「@cosme(アットコスメ)」運営のアイススタイル(東京都/吉松徹郎社長)だ。同社が20年1月に東京・原宿にオープンした旗艦店「@cosme TOKYO(アットコスメトーキョー)」を例に、ネットとリアルを融合した最先端の店づくりを伝える。
価値提案、MD強化のヒントは専門店から掴む!
近年、各社が付加価値を訴求するための有効な手段として力を注いでいるのが、ライフスタイルの提案だ。5つ目のテーマ「ライフスタイル提案の光る店」では、フラワーショップを展開する日比谷花壇(東京都/宮島浩彰社長)が開発した専門店とカフェを融合した新業態に着目。花のある食・生活シーンの提案で、購入機会拡大につなげている同社の施策をレポートする。
そして最後のテーマは、「専門家もおすすめ!食品スーパーが学ぶべき店」だ。
現在、コロナ禍によって自宅で料理をする機会が増えたことなどを受け、総菜・ベーカリー部門の売上が縮小傾向にあるチェーンは少なくない。そうしたなかテコ入れ策の手がかりは専門店にあるとして、商品政策(MD)の参考になる「総菜」「唐揚げ」「ベーカリー」の専門店・飲食店計12店をピックアップした。
これら計6テーマのもと厳選した全26店の事例を見れば、ECが急成長するなかでもリアル店舗には無限の可能性があることを感じ取ってもらえるはずだ。
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