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台頭するフード&ドラッグ、食品スーパー買収も!コスモス、ゲンキー、クスリのアオキ

食品強化型フォーマットを展開する、「フード&ドラッグ」と呼ばれるドラッグストア企業が急成長している。コロナ禍に伴う巣ごもり特需の追い風を受け、フード&ドラッグの業績は軒並み好調で、その代表格的存在であるコスモス薬品(福岡県)は、首位のウエルシアホールディングス(東京都)、2位のツルハホールディングス(北海道)に次ぐ、業界3位にポジションにある。食品強化型のドラッグストアは今後、業界のスタンダードになるのだろうか――。

食品構成比6割越えのドラッグストアも

 食品強化型フォーマットを展開するドラッグストア企業が凄まじい勢いで業績を伸ばしている。

 その筆頭がコスモス薬品で、2015年5月期の食品売上高は1757億円、売上高全体に占める比率は53.4%だったが、20年5月期には3926億円にまで拡大し、構成比は57.4%まで拡大した。同社は徹底的に標準化されたフォーマットの高速出店を得意する同社。店舗数が急増したこともあって、食品売上高は5年間で倍以上に増えている。

 「ゲンキー」を展開するGenky DrugStores(福井県)も食品売上高を急激に伸ばしている。北陸を地盤に勢力を急拡大中の同社は、生鮮4部門を備えた食品スーパーとそん色ない売場を展開しており、食品売上高の構成比がすでに6割を超える。

 このように、「次は食品」とばかりにドラッグストア業界では、食品を拡充する動きが活発化している。業界トップのウエルシアホールディングスの食品売上高は1919億円だった(20年2月期実績)。16年3月期の食品売上高は約1170億円で、5年間で約750億円を上乗せした格好だ。

 ツルハホールディングスの20年5月期の食品売上高は1944億円。17年5月期は951億円で、こちらは3年間で約1000億円を積み上げている。しかも同社は生鮮食品(青果・精肉)の取扱店を今期中に300店増やし、660店とする計画を発表するなど、食品強化について強気の方針を打ち出している。

食品スーパー買収で生鮮のノウハウを獲得!

 フード&ドラッグスの強みは、何といっても「ついで買いの妙」だ。たとえばコスモス薬品では、一般食品などを買う“ついで”に、一般用医薬品や化粧品、処方薬など粗利益率の高い商品を購入してもらうことで、食品の低粗利益販売を支える収益構造となっている。

 ただ、ドラッグストアの食品販売にも課題がないわけではない。ある経営コンサルタントは、「ドラッグストアの生鮮食品の加工・販売は、習熟がまだ進んでいない。生鮮食品の取り扱いノウハウには、食品スーパーに一日の長がある」(経営コンサルタント)という。

 ただ、そうした課題を食品スーパーのM&A(合併・買収)によってクリアしようとする動きもある。

 最近では、クスリのアオキホールディングス(石川県)が20年6月、金沢市内に食品スーパー5店舗を展開するナルックスを買収。その後も、20年10月に京都府北部で8店舗を展開するフクヤを買収している。さらに21年5月21日付で、石川県輪島市のサン・フラワー・マリヤマを吸収合併することを発表しており、食品スーパーのM&Aにとって、生鮮食品の販売・加工ノウハウを高度化させる姿勢を鮮明にしている。

生鮮ノウハウは食品スーパーに一日の長、ただ……

 これとは対照的に、Genky DrugStoresは食品加工センターなどを自社で開設し、店舗に供給できる体制を整備するなど、自前主義を貫く構えを見せている。ドラッグストアの生鮮食品売場は外部の業者に運営を委託するケースが多く見られる。だが、ゲンキーのように、今後の食品スーパーとの本格的な競争に備え、自らノウハウを蓄積しようとしている企業も存在する。

 ただ、食品スーパーの主力商品は、やはり生鮮食品であり、その品揃えの「幅」と「奥行き」はドラッグストアとは圧倒的な差がある。だが、粗利益率が高いとされる総菜部門の売上高構成比はどの食品スーパーも10%前後であり、それほど高いチェーンがあるわけではない。ここに突破口を見出すドラッグストアチェーンも現れるかもしれない

 フード&ドラッグは食品スーパーの領域に攻め込んでいくのか。食品を扱う小売は、引き続きフード&ドラッグの動向に注意を払う必要がありそうだ。