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【前編】JACDS・薬業3団体・JAHI年頭所感 JACDS池野会長「街の健康ハブステーションとしての思いを伝えたい」

恒例の日本チェーンドラッグストア協会(東京都:以下、JACDS)と薬業3団体による年頭所感発表が2020年12月11日、東京都港区の「メルパルク東京」で行われた。各団体代表者と日本ヘルスケア協会(東京都:JAHI)の年頭所感をお送りする。前編はJACDSの池野隆光会長、根津孝一副会長の年頭所感だ。

年頭所感発表を行うJACDS 池野隆光会長(左)と根津孝一副会長(右)

日本チェーンドラッグストア協会 会長
池野隆光氏 年頭所感

DgSは地域社会における存在感がいっそう高まる

 2020年は、東京オリンピック開催により輝かしい年になるはずが、新型コロナウイルス感染拡大で最悪の1年になってしまった。そんななか、ドラッグストア(DgS)は社会のインフラとして営業を続け、地域社会における存在感がいっそう高まる結果にもなった。しかも、DgSは生活密着の業態だったから業績を拡大することもできた。こうした情勢の中、JACDSは厚生労働省、日本薬剤師会、日本保険薬局協会(NPhA)と情報共有を図ることができた。今後も相互連絡を深めていく。厚労行政と共通化していけるものは、話を進めていきたい。

 20年は、JACDSにとって一般社団法人化を実現した画期的な年だった。8月21日にみなし法人日本チェーンドラッグストア協会の解散総会を行い、一般社団法人の設立総会を行った。いろいろな活動をしていこうと思っていた矢先に、コロナの感染拡大が激しくなった。21年もコロナの感染は続いていくだろう。今後、2年、3年という付き合いになるかもしれない。われわれは、どうやって、コロナと共存できるか。今、有効な手を持っているわけではないが、関係団体、組織とも情報共有を密にし、予防の徹底を図るなど、JACDSとしても生活に密着した業態としてしっかりした方針を持って取り組んでいく。

 JACDSでは、ほかの業界に先駆けて買物袋の有料化を20年4月から前倒しで実施した「規模感の差があるところでは業界の足並みを揃えることは難しい」といわれたが、会員みんなでやっていこうと決意し、しっかり取り組むことができた。会員の社会に対する意識の高さであり、この実現を誇りに思っている。現在のところ、買物袋の使用量はJACDS全体で約85%の削減になっている。DgS業界全体(参画企業4965店舗)でのレジ袋利用枚数を積み重ねた高さで表すと、19年9月は富士山1.5個分(5523m)もあったが、20年9月には高尾山1.4個分(832m)まで減らすことができた。

 今後、環境問題はますます厳しくなっていく。われわれができる環境問題には積極的に取り組んでいく必要がある。返品の削減、ペットボトルのリサイクル、照明器具のLED化など、取り組みの遅れているものもある。外灯や店内照明のLED化などを進めていき、環境への負荷を減らしていきたい。

DgS市場は20兆円も現実みを帯びてくる

 JACDSの全体目標として「2025年にDgS業界を10兆円産業にする」を掲げている。本当に手が届くのかという声があるが、コロナ禍にあっても、DgS全体で7%成長をしている。仮に8%成長が10年続けば2倍になる。20年の業界市場は7.8兆円だったから、21年には8.5兆円に届く。少子高齢化、人口減少が進むなかで、なぜ、そんな成長が見込めるのか。DgSの新規出店ペースはまだまだ衰えない。今まで以上に食品スーパーの食料品やホームセンターの生活関連品などを取り込むようになるし、現在はほとんど手をつけていないネット販売にも積極的に取り組むようになる。そう考えれば、10兆円はおろか20兆円も現実みを帯びてくる。

 21年に先延ばしされた東京オリンピックの開催がどうなるかはわからないが、コロナが簡単には静まらないのは間違いのないことだ。「マスク」「予防」「健康」は、21年の大きなテーマになっていく。JACDSでは、「街の健康ハブステーション構想」を掲げている。21年は、「食と健康マーチャンダイジング」の実践として売場をつくり、広げていく。その売場をサポートする人材として期待されるのが、医薬品登録販売者であり、管理栄養士だ。
世界保健機構(WHO)では「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にもすべてが満たされた状態にあること」と定義している。

 人々の健康を担い、予防の窓口として商品供給ができるのはDgSしかない。われわれは生活者にとっての「街の健康ハブステーション」でありたいし、そういう思いを伝えていきたい。

日本チェーンドラッグストア協会 副会長
根津孝一氏 年頭所感

安全性担保から資格者の常駐堅持は譲れない

 2020年は、日本チェーンドラッグストア協会政治連盟の運営に関し、ヘルスケア議員懇話会の事務局長に木原誠二議員に就任いただいた。木原議員を通じ、加入申し込みがかなりあり、それだけドラッグストア(DgS)が注目されているということだ。21年も自民党のヘルスケア議員懇話会、公明党のドラッグストア振興議員懇話会と連携しながら、さまざまな環境整備に取り組んでいきたい。

 21年の活動は、以下の内容を強力に進めていく考えだ。

 まず「セルフメディケーション税制の利用促進」だが、令和3年度税制改正大綱の中でほぼ決着した。適用期限が5年延長され、対象の拡充についても、とりわけ効果があると考えられる薬効(3薬効程度)が対象に加えられることになった。

 「医薬品販売の資格者常駐堅持」については、20年、日本フランチャイズチェーン協会(東京都:以下、JFA)から「資格者の常駐は必要ないのではないか」との提案が出された。これに対し「医薬品販売における安全性を担保するうえで欠かせないことである」と、厚生労働副大臣宛てに反論表明をしてきた。「保管→店頭販売→相談→渡し」は一体的な店舗でやるべきだと考えている。またDgSだけですでに2万数千店あり、JFAが言うところの身近な店舗にどれだけニーズがあるのかも疑問だ。

 「スイッチOTC化の促進」は、われわれの活動の“1丁目1番地”だが、最も手ごわいところ。引き続き、21年といわず、働きかけていく。

 「類似市販薬のある医薬品の保険適用からの除外」に関しては、保険財政の削減に有効として主張してきたことだが、厚生労働省から、保険者がヘルスケアポイントを付与するかたちでの試案が出されているが、引き続き要求していく。

(後編に続く)