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常盤勝美の実践ウェザーMD #4 活用すべき気象データ10選と実践方法

「いろいろなサイトに気象情報が出ているけれど、どのデータをどのように使ったら良いのかわからない」――。ウェザーMDにチャレンジしようとする方が最初に悩むポイントです。本連載では、そんな方々と一緒に「誌上ウェザーMD」を実践していきたいと思います。次回以降、気象庁から発表されている最新の長期予報(3カ月予報)を使い、予想されている気象条件から「どのような商品の売り込みを強化する計画を立てるか」を毎月解説していきます。その準備として、今回は、ウェザーMDの実践にあたって覚えておくべき基本法則、よく使う気象データ、ウェザーMD実践手順を解説します。

ekapol / istock

ポイントは「情報の鮮度」

 まず、ウェザーMDで活用すべき気象データを図表①にまとめました。

情報種類 情報内容 更新頻度 注目ポイント 活用用途
レーダー・ナウキャスト 直前までの雨雲の動き(レーダー)および現在から1時間先までの雨雲の動きの予測(ナウキャスト) 5分間隔 雨の降り出し・降りやみ時刻の推定 客足動向の把握、値引き販売開始タイミングの見極め
高解像度降水ナウキャスト レーダー・ナウキャストの高解像度版 同上 局地的な雨雲の把握も可能 同上
天気予報 最大3日先までの天気予報 1日3回(5時、11時、17時) 最大3日先までの天気、気温の変化把握 主に生鮮、日配品の発注仕入れにあたってのお客様のニーズ予測
週間予報 7日先までの天気予報 1日1回(11時) 向こう1週間の天気、気温の変化把握 主に加工食品、日用品の発注仕入れにあたってのお客様のニーズ予測
2週間気温予報 8日先から12日先まで5日間平均した日平均気温平年差 1日1回(14時半過ぎ) 2週目の気温傾向把握 ニーズ変化のタイミング策定、販促内容調整
1か月予報 向こう4週間の気温、降水量、日照時間予測 毎週木曜日 向こう1か月間の週単位の気温傾向把握 ニーズ変化のタイミング策定、販促内容調整
3か月予報 向こう3か月の気温、降水量、日照時間予報 毎月25日頃 向こう3か月間の月単位の気温傾向把握 営業計画、販売・販促計画策定
アメダス 気温、降水量、風向・風速、日照時間の実況値 1時間ごと 現在の気温等の確認 当日の最高・最低気温入力
過去の気象データ(またはこちら)) 観測開始以降、昨日までの実績値 毎日 昨日までの天気等の把握 販売分析、来店客数分析等

 もちろん、気象庁で日々発表、更新される情報はこれだけではありません。その気になれば膨大な情報を入手することもできますが、今回は、数あるデータの中から、流通小売業界の関係者にこまめにチェックしていただきたいものをピックアップしました。とくに注目いただきたいのは「発表頻度(間隔)」です。

 気象に限らず情報は、発表と同時に鮮度の低下がはじまります。発表間隔を把握していないと、実は古い情報を基にした意思決定を行っていた……、ということにもつながりかねません。情報鮮度が落ちれば落ちるほど、その情報を基にした意思決定の精度も低下します。可能な限り、新しいデータを使うことを心がけてください。

ウェザーMD実践の手順

 次回以降に解説していく販売数と気象の関係は、株式会社True Dataが設計、運用する、全国のスーパーマーケット/ドラッグストアの消費者購買情報を統計化した標準データベースを用いて求めるものです。ここでは全国平均のデータを利用しますが、小売業の皆さまは、地域や顧客特性が反映されている自社のデータで再度分析してみることをおすすめします。その手順の概略を説明します。

①データを集計する

 日々の販売データは価格変動、曜日の違いによる客数変動など、さまざまな要因の影響で細かな上下の波があり、気温との大局的な傾向を読み取りづらい場合があります。しかしこれを週平均データに集計すると、細かな変動を平滑化でき、気象との関係性が捉えやすくなります。これに対応させるかたちで、気象データも週平均のものを活用します。

②時系列グラフと散布図でデータを見る

 定量化されたデータを確認する時に、注意すべき点を記載します。気温などの気象要素と販売数を定量化して見ていく際に、数値だけでみてしまう方が多いと思います。たしかに、数値だけでも気温と販売数に正の相関や負の相関があるかどうかはわかりますが、実際に、加工食品の「インスタントシチュー」の買物指数と最高気温のデータをグラフで見てみてください(図表①、図表②)。

図表②インスタントシチューの買物指数と最高気温の推移 ※抽出データ:全国におけるカテゴリ「インスタントシチュー」の週次の買物指数と、気象庁「東京」の日最高気温週平均値。抽出期間は2018年12月31日~2019年12月29日。図表③も同様。 (出典:True Data 「ドルフィンアイ」/業態:スーパーマーケット)
図表③インスタントシチューの買物指数と最高気温の関係

 このように「気温と販売数に正の相関があることがわかっても、実際にデータをグラフで見てみると、シーズンピークに向けた需要期とピークを過ぎた期間とでは相関の強さが異なる」などといったことはよくあります。そのようなデータの読み違いを回避するためにも、可能な限りグラフ上の動向を自身の目で確認されることをおすすめします。

③相関係数、近似式の係数を求める

 関係を定量化するために、相関係数および近似式の係数を求めます。これらは表計算ソフトに標準で組み込まれている関数ですので、計算式を作ってひとつずつ各データを入力する必要はありません。

 セルに気温、買物指数の各データを格納すれば簡単に計算結果を得ることができます。ポイントは、1年を通したデータで集計する場合、「昇温期(季節進行にともない気温が上昇する2~7月)」と「降温期(季節進行に伴い気温が下降する8~1月)」に分けて集計することです。

 カテゴリや商品の季節性を踏まえた期間に絞り込んで設定し、その期間における気温変化との関係を見ることで鮮明に需要を予測することができます。図表③の例では、通年のデータで近似式(図表内の赤線)の係数を求めても、買物指数増加期と減少期の中間的なものとなってしまい、どちらの期間にも当てはまらない需要予測式となってしまいます。そこで、たとえば8~11月の期間に絞って近似式(図表内の青線)を求めることで、買物指数増加期の需要予測の精度向上が見込めます。

 長期予報は気象情報の中で、流通業界における活用レベルがまだそれほど高くなく、活用余地が大きいコンテンツです。長期予報を積極的に活用しながら、これまで以上にMD精度を高める実践に取り組んでいきましょう!