ベルギービール専門店「BEER BOUTIQUE KIYA」を運営する木屋(愛知県/三輪一記社長)は、通販サイト「ベルギービールJapan」の展開をはじめ、日本ベルギービール・プロフェッショナル協会を設立するなど、ベルギービールの魅力を伝える幅広い活動で注目を集めている。
奥深いベルギービールの魅力
店頭とネットの両面で多角的に紹介
「CHIMAY」に代表されるベルギービールは、修道院でつくられるものや野生酵母を利用してつくられるもの、フルーツを使ってつくられるものなど、地域や製法によりさまざまな銘柄が存在し、その種類は1000種を超えるといわれている。
ベルギービール専門店「BEER BOUTIQUE KIYA」を運営する木屋の創業は、明治24年(1891年)。岐阜県で醤油の醸造業をしていた創業者が販売部門の拠点を名古屋に移したことから、その歴史が始まった。それぞれの代で別の事業を興しており、現在の三輪一記社長はその4代目にあたる。
木屋がベルギービールの取り扱いを開始した1993年、そのきっかけは三輪社長が取引先であるイタリアンレストランの店主から「ベルギーのビールを仕入れたい」という相談を受けて、初めて口にしたことからだった。三輪社長は日本のビールにはない、じっくりと時間をかけて味わうベルギービールのおいしさに魅了され、これを広く世に広めたいと考えたという。
取り扱いを始めた当初は、なかなか売上が伸びず苦戦したが、同社が運営するWebサイトでベルギービールの基礎知識や現地の醸造所訪問記などをブログ風に発信したことで全国のベルギービールファンとの交流がスタート。95年にはインターネット通販も時代に先駆けて展開し、ネット上の口コミで、同社の名が徐々に知られるようになる。
2001年ごろから、三輪社長はユーザーに乞われるかたちでベルギービールに関するセミナーや講座を実施し、06年の『ベルギービール大全』(石黒謙吾氏との共著)の出版を機に同社とベルギービールの認知度が一気に高まった。
三輪社長は11年に日本ベルギービール・プロフェッショナル協会を設立し、ベルギービールの味わいや製法に関する専門知識を習得できる講座を多数開設することで、ベルギービールの専門家を多数育成。18年、ブリュッセルのグランプラスにあるMaison des Brasseursで行われた名誉騎士就任式にて、ベルギービールの騎士団 (La Chevalerie du Fourquet Brasseurs)よりベルギービールの名誉騎士に任命されている。
木屋が運営するベルギービール専門店「BEER BOUTIQUE KIYA」は、名古屋市中区丸の内に位置する。オフィスビルの多いビジネス街だが一歩入ると閑静でお洒落な店も点在。近年はマンションも多く建設されたことから、ビジネスパーソンをはじめ周辺住民からも愛される店舗となっている。
それまでの木屋の店舗は倉庫を広く取り、売場の面積の狭い既存の酒屋と同じようなつくりだったが、3年前にオープンした「BEER BOUTIQUE KIYA」は、欧州の店舗レイアウトを真似て売場面積をできる限り広く取り、固定の棚を中心としたブティックのようなデザインで、商品を手に取ってもらいやすい売場づくりを心掛けた。またビアサーバーも完備し、テーブルなども設けることで、店舗内で本格的な樽生のベルギービールが楽しめるようになっている。
現在、「BEER BOUTIQUE KIYA」では、ベルギービールを約200アイテム取り扱っている。ベルギービールの中でも最もポピュラーな「CHIMAY」について、三輪社長は、「最も古くから輸入されている誰もが知るベルギービールであり、トラピストビールの中でも最も有名な銘柄。味わい的にも安定しており、ベルギービールのベーシックともいえる存在」と話す。
三輪社長は「CHIMAY」の製造元である修道院にも訪問。「CHIMAY」の歴史的背景や製造の工程などもつぶさに見ており、そのストーリー性に強い魅力を感じているという。
現在、「BEER BOUTIQUE KIYA」で扱う「CHIMAY」の商品は約20アイテム。客層は30~50代が中心で、最も売れているのは「シメイ ブルー」、続いて「シメイ ゴールド」だ。近年では特別な限定品の飲み比べを楽しむ人も増えている。
木屋のチャネル別売上構成比はネット通販6割、実店舗2割、卸し2割の割合だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、ネット通販の割合が高まっているという。同社ではウェブサイトのほか、TwitterやInstagramといったSNS、メルマガでの情報発信のほか、店舗でも各種イベントを主催しベルビービールの魅力を紹介。三輪社長は「ベルギービールの定番といえる『CHIMAY』は大切な商品。ネットとリアル店舗、どちらもうまく活用しながらお客さまとの関係性を深め、ベルギービールが持つ魅力をさらに多くの方々に伝えていきたい」と抱負を語っている。