メニュー

いなげや、20年度上期決算は増収増益 好調のうちに取り組む仕入れ先の集約

東京都を中心に、13県で食品スーパー(SM)やドラッグストアを展開するいなげや(東京都/本杉吉員社長)は114日、オンラインで20213月期第2四半期の決算を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大による特需で、他のSM企業と同じく増収増益となった。下期以降は20年度を初年度とする中期3か年経営計画に基づき、既存店の再構築に基づく安定した事業基盤の確立や商流・物流の見直しなどに取り組んでいく方針だ。

既存店客単価が大きく伸長

 いなげやの213月期第2四半期連結決算は、営業収益1368億円(対前年同期比8.4%増)、営業利益46億円(前年同期は1億円の損失)、経常利益47億円(同6300万円の損失)、四半期純利益31億円(同2億円の損失)の増収増益だった。他のSMと同様、コロナ禍の巣ごもり需要、まとめ買い需要が業績を大きく押し上げる格好となった。

 事業別では、主要のいなげやの売上高は1050億円(対前年同期比10.7%増)で、売上高の伸びに伴い売上総利益率も0.8ポイント上昇した。販管費については折り込みチラシの削減などによる経費減で同2.4%減となった。

 いなげやと三浦屋を合わせた「スーパーマーケット事業」については、客数が同4.9%減だったものの、客単価が同15.4%増と大きく伸長し、既存店売上高は同9.8%増だった。本杉社長は、多摩エリアを中心とする東京都下郊外の住宅立地の店舗が多く、都心部や駅前立地の店舗が少なかったことが好業績に寄与していると説明している。

 また、ウェルパークを中心とする「ドラッグストア事業」の既存店売上高は同0.1%減、客数は同1.0%減、客単価は同1.1%増だった。

 

既存フォーマットの見直しに注力

いなげやの本杉吉員社長

 いなげやは今期を初年度とする中期3か年計画に基づき、下期以降もグループ全体の組織力と収益力の強化に取り組む方針だ。

 スーパーマーケット事業では、既存店の改装を中心にフォーマットの見直しに取り組む。いなげやの店舗には大きく分けて売場面積300坪、450坪、600坪の3種類のフォーマットがあり、売場面積に応じて最適な商品政策(MD)を試行錯誤していく考えだ。各売場の尺数や商品の内容を見直していく。たとえば、コロナ禍で売上が落ち込んでいる総菜については、鮮魚部門の素材を使用した刺身や寿司など、一部店舗で実施している生鮮総菜の拡大を視野に入れる。来期の新規出店や改装でコロナ以降の競争激化を勝ち抜けるフォーマットを構築したい考えだ。

仕入れ先の集約にも取り組む

 また、商流・物流の見直しを実施する。たとえば、インストアベーカリーを導入している店舗から導入していない店舗に商品を供給するなど、店舗間の商品移動で充実した品揃えを実現し、顧客の満足度を高めていきたい考えだ。

 加えて、いなげや、三浦屋、ウェルパークの仕入れの集約にも取り組む。これまでは、同じ商品でも各業態がそれぞれ別のルートで仕入れを行っていたが、効率化やコスト低減などをめざし、統一を図っていく。たとえば、いなげやとウェルパークで同じ商品を販売しており、ウェルパークのほうが仕入れ原価が低い場合、ウェルパークの仕入れルートに一本化するという具合だ。これと並行して、配送ルートの見直しも実施し、トラックの数を減らすことでコストと環境負荷を軽減できる配送体制の構築にも取り組む。

 そのほか、価格政策としては、いなげや店舗ではEDLP(エブリデー・ロー・プライス)を推進する。現在は、一般食品や日配品、雑貨などを中心に3か月~1年程度の期間同じ価格で提供する「ベストセレクト」を展開。これらのカテゴリーの売場の約7~8割がベストセレクトの対象だという。今後もさらにEDLPを加速させつつ、特売などによるハイ&ローと組み合わせながらお客に安さを訴求していきたい考えだ。

  いなげやは213月期通期連結決算予想を上方修正し、営業収益2610億円(対前期比2.6%増)、営業利益60億円(同157.6%増)、経常利益62億円(同136.4%増)、当期純利益35億円(同410.5%増)を計画している。なお、中期3か年経営計画の目標数値については、新型コロナウイルスの影響を考慮しながら修正し、来期までに発表するとのことだ。