近年、多くの生協の店舗事業は出店競争激化の影響を受けて縮小傾向にある。コープさっぽろも同様で、近年は経常赤字が拡大していたがコロナ禍で状況が一変。これを好機に、一気に巻き返しを図ろうとしている。
コロナ禍で店舗が絶好調赤字も解消傾向に
コープさっぽろは道内で計107店を展開し、その店舗事業供給高は宅配事業の2倍以上だ。しかし道内の人口減や店舗間競争の激化により近年は不振が続き、2019年度の供給高は対前年度比2.9%減の1834億円。直近の3カ年で経常赤字も拡大していた。
こうした状況から20年度は一転した。コロナ禍での需要増によって、4~8月の合計供給高は対前年同期比約7%増のペースで好調に推移している。大見理事長は「現在、店舗事業の赤字は解消されつつある。これを好機に反転攻勢に出たい」と述べている。
こうしたなかコープさっぽろが現在、店舗事業で進めているのが商品力の強化だ。具体的には20年2月から「大惣菜化プロジェクト」を推進している。これは、生鮮部門で扱う素材を店内調理した出来たて総菜の販売に取り組むというもの。そうすることで、共働き世帯の増加などを理由に高まる食事の時短ニーズに対応したい考えだ。
そして20年2月、1号店として「コープさっぽろ にしの店」(北海道札幌市)に「大惣菜化プロジェクト」を導入。現在ではすでに21店(20年10月時点)まで導入店舗を広げている。
出来たて総菜に道産PB、EDLP商品も!
では、実際にどのような売場・商品を展開しているのか。
導入店舗である札幌市内の「二十四軒店」の売場を見ると、まず青果売場では店頭の素材を使ったサラダやカットフルーツを販売する「八百屋のサラダ・果物」コーナーを展開。大きなガラス窓を採用した独立加工場を設けており洗練された雰囲気を放っている。
鮮魚部門では、店頭の鮮魚を使った煮魚・焼き魚などの魚総菜を「魚屋のお惣菜」と銘打ちコーナー化。総菜部門でも、これら青果、鮮魚の総菜が集積されており、なかには精肉部門の素材を使った「肉屋のお惣菜」コーナーもある。
大見理事長は、「プロジェクトの導入店では全体売上高が以前より5%ほど増加する効果が出ており、手応えを感じている」と語る。20年12月末までに導入店舗を約30店まで増やし、21年にも同様に新たに30店規模で展開する計画だ。
こうした付加価値商品を拡充する一方で、節約志向にも対応する。食品を中心とした約200品目を対象にEDLP(エブリデー・ロープライス)の価格政策を適用し、月次で対象商品を入れ替え、特設売場を設けて低価格を訴求する取り組みを始めている。
そのほか店舗で目立ったのが、コープさっぽろのプライベートブランド(PB)商品だ。北海道産原料や道内製造にこだわって品質を追求するほか、商品の特徴や栄養成分がわかりやすいパッケージデザインを採用しているのが特徴だ。
たとえば「道産生乳とてんさい糖だけの飲むヨーグルト」は、道産生乳を原料の約9割と贅沢に使用していながら、1本500mlで税抜198円と低価格を実現した商品だ。二十四軒店では主通路上の平台で売り込んでいた。
大きく変わりつつあるコープさっぽろの店舗事業。コロナ禍は生協の店舗事業が息を吹き返す機会にもなるかもしれない。