ユニー傘下だったコンビニチェーン、サークルKサンクスを取り込み業界2位に浮上したファミリーマート(東京都)。黒字であるのにも関わらず希望退職者の募集に踏み切るなど、体質強化に向けた打ち手を講じている同社だが、株価は冴えない。それは、セブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)に次ぐ、コンビニ業界2位としての今後の成長戦略がみえにくいからではないだろうか。
希望退職者を募るも株価は冴えず
2020年2月19日、ファミリーマートは1025人が希望退職すると発表した。1025人は全社員の約15%にあたり、募集人員であった約800人を200人以上上回ったことになる。
この発表を受け、株価も反応。2月21日の株価終値は2542円と、19日に比べて26円高となった。黒字でありながら早めの対策を打って企業体質強化に動いたことが評価されたと見られる。また、人員の削減などで年間80億円程度の経費削減効果も見込めることも大きい。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、日経平均株価は21日以降大きく下落。引きずられるようにファミリーマートの株価も落ち込み、28日の株価終値は2386円と低迷している。一連の株価低迷は地合い悪化の影響が大きいが、コンビニが飽和状態といわれるなか、明確な成長戦略が示されていないことも、投資家の判断を消極的にさせていると見ていいだろう。
セブン-イレブンとの差
コンビニの国内総店舗数は5万5620店(19年12月時点)と、飽和論が囁かれて久しく、今後はセブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン(東京都)の大手3チェーンを軸としたパイの食い合いの様相を呈している。
コンビニチェーンが自社のシェアを高めていくための主要政策の一つに、「女性客の取り込み」がある。ファミリーマートの女性客の比率は現在40%台。同社はこれを50%に引き上げる方針を19年に示している。しかし、セブン-イレブンの女性客比率は16年時点で47.4%であり、すでに50%に到達しているとみられる。
ファミリーマートをはじめコンビニチェーン各社は「変化対応業」を謳っているが、シニア層や女性の来店を促す商品および店舗づくりなどにおいて、ファミリーマートはセブン-イレブンに遅れをとってきたと言っていい。そうした細かい施策の積み重ねの差が、セブン-イレブン約65万円(2019年2月期)、ファミリーマート約53万円(同)という平均日販の差となって現れてきた。
商社の発想ではセブンに勝てない?
ファミリーマートの国内総店舗数は現在1万5500店超となっている。同社はそのスケールを生かせているだろうか。
かつて、コンビニに商社が相次いで資本参加した際、「商社に小売業の経営は難しい」(大手スーパー幹部)といわれた。商社は、主力事業の資源・エネルギー、機械の取引においては数十億円、数百億円の儲けを求めて商売を行う。かたや小売業は何円、何十円の利益を追い求める世界。この感覚の差は一朝一夕には埋められないだろう。
あるコンビニの幹部は「商社は『大量のマグロを安く仕入れられたから、コンビニでマグロを使ったメニューを開発したらどうか』という発想でくる」と話す。そのような考えは小売の世界では通用しないだろう。
セブン-イレブンの入れたてコーヒー「セブンカフェ」はすでに年間1000億円以上を売り上げており、コンビニになくてはならない商品として定着した。だがセブン-イレブンは、セブンカフェを軌道に乗せるまでに幾度となく失敗を繰り返している。セブン-イレブンとライバル他社との差はその徹底力ではないか。
コンビニ飽和時代を迎えるなかであっても、コンビニチェーン各社は辛抱強く商品を軌道に乗せるという、ある意味で“地味”な作業を積み重ねていかなければならない。ファミリーマートには、業界2位として、トップを独走するセブン-イレブンを刺激する対抗馬になってもらいたいものである。