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西武グループが仕掛けた「駅ナカ」コストコ好調の理由とは

「コストコ」などの商品を最寄り駅のロッカーで受け取れる。西武鉄道(埼玉県/小川周一郎社長)が展開するスマートロッカーを活用したサービスが好調だ。西武ホールディングスによる実証実験を経て2024年4月に本格稼働し、利用登録者は2万人超え。今後どのような展開を見据えているのか。同社 沿線価値創造本部 事業運営部 ステーションリテール担当の丸山浩司氏に聞いた。

スマートロッカーで駅機能をリデザイン

西武線の駅以外では、東京ガーデンテラス紀尾井町、ダイヤゲート池袋でボピスタのサービスが利用可能

 西武新宿、池袋、高田馬場、田無、所沢、練馬、石神井公園など、西武線の駅では、ECで購入した商品を設置されたスマートロッカーで受け取れる。常温だけでなく冷蔵の商品にも対応しており、特に売上好調なのが会員制量販店コストコの商品だ。

  駅に設置されたロッカーを有効活用するこのサービスは「BOPISTA」(ボピスタ)。丸山氏によると、新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに考え出されたサービスだという。

 「新型コロナ禍で旅客・利用者数の減少に直面し、生活様式が変化する中、アフターコロナを見据えてビジネスモデルの変革に取り組み、駅機能のリデザインを目的に、このサービスが誕生した」

 「BOPISTA」とは「Buy Online Pick-up In Station」を意味する。ECで購入した商品を実店舗で受け取れる「BOPIS」(Buy Online Pick-up In Store)を進化させ、日常生活に身近な駅で、非対面で実現することを目指した。

  グループ持株会社の西武ホールディングス、カギの遠隔操作技術を持つスタートアップのSPACER(西武ホールディングスの連結子会社ブルーインキュベーションが出資)、西武鉄道沿線を中心にロッカーを運営するセントラルオペレーションの3社が協業し、2021年2月からの3年間で4回にわたる実証実験を重ね、西武鉄道が運営主体となって本格稼働した。

所沢から電車で各駅のロッカーへ

駅に張り出されたポスター。雑貨、おもちゃ、鉄道模型といった西武鉄道グッズも購入・受取ができる

 ボピスタを利用するための会員登録は簡単で、メールアドレスや名前などを登録するだけ。LINEアカウントを連携して、ボピスタの提携ショップで購入した商品を指定したロッカーで受け取る。西武線沿線に店舗を構える人気店のチョコレートや地場野菜などを取り扱う11のショップと連携する中、圧倒的に売れているのがコストコの商品だ。

 「1回目の実証実験終了時に実施したアンケートの回答でコストコ商品を取り扱ってほしいという要望が多く見られたことから、西武ホールディングスで新規事業を創出する専門部署の西武ラボがコストコにアプローチをかけて取り扱いが始まった。そのおかげで利用者は店舗に足を運ぶ必要もなく、コストコの商品を購入できる点も評価をいただいている」(丸山氏)

  テレビやネットニュースでも取り上げられて話題になり、駅広告やLINEでのキャンペーン告知で積極的に情報を発信。LINE登録した会員数は2万人を突破した。利用が目立つのは、池袋駅、西武新宿駅といった起点駅のほか、練馬駅、石神井公園駅などファミリー層が多く住むエリアの駅。利用者は30~50代と幅広く、その8割以上を女性が占めるという。

 「注文が多いのは36個入りのディナーロール、トルティーヤでベーコン・レタス・トマトを包んだハイローラー(BLT)、プルコギビーフといったコストコの定番商品が中心。日常的な利用のほか、ホームパーティーのためにご購入いただいているようだ」(同)

  注文を受けた商品は、コストコ入間倉庫店で仕入れ、ボピスタの配送員によって所沢駅近くにある集荷場から電車で各駅のロッカーに届けられる。受け取り日時は注文から5日後まで設定でき、午前8時までの注文であれば、当日の受け取りも可能だ。

  取扱商品数は実証実験で取り扱いを開始した時点では100商品程度だったが、800商品まで増やし、食品から日用品まで幅広い選択肢を提供している。

ロッカーが秘める可能性

沿線価値創造本部 事業運営部 ステーションリテール担当の丸山浩司氏

「ECで購入した商品の受取先として一番割合が高いのは置き配を含めた自宅配送だが、ボピスタの利用者からは通勤に使う最寄り駅で冷蔵デリカも受け取れるのがありがたいという声をいただいている」(丸山氏)

  7月に実施した利用者へのアンケートでも、利用の気軽さ、受け取りの便利さ、冷蔵商品も購入できる点が高く評価されたという。また、閉店時間を気にしないでいい点も利便性向上につながっている。

  駅のロッカーを有効活用するサービスとして、ボピスタの提携ショップ数、商品数をさらに充実させるだけでなく、さらなる可能性を探っていく方針だ。9月には西武ホールディングスにより駅のロッカーに預けた手荷物を宿泊先のホテルに届けるサービスの実証実験が開始された。

  荷物を預けて、そこで取り出すだけでない。駅のロッカーに可能性を見出し、新しい価値を吹き込むサービスが今後どこまで浸透していくか、大きな関心が寄せられている。