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NRF2020レポート2 デジタルシェルフ、BOPISロッカーが隆盛 テクノロジーの使い道が明確に!

NRF Retail’s Big Show(以下NRF)は世界中から小売業関係者が集まる業界世界最大のイベントだ。3日間の会期中、大手小売業トップによる基調講演が目玉となる一方で、近年のNRFは最新の小売テクノロジーをいち早くキャッチする場としても機能している。本稿では、Exhibition編と題して、NRF2020のキーワードをいくつか挙げ、それに沿って、ぜひ小売業者がチェックしておきたいテクノロジーやブースについてまとめた。

NRF2020は総勢800社以上が出店。EXPOゾーンの広さは実に約2万5550m2もある

AI活用も実践的に! 本当のソリューションが目白押し

 約25550㎡という広大なEXPOホールは全部で3つのフロアに分かれており、総勢800社以上が出展する。基調講演は見ずに、このEXPOゾーンだけを視察する人も多く、そうした人々のために、EXPOパスも設けられている。

 GAFAMからはマイクロソフト、Amazon AWSGoogle Cloudが出展するほか、Panasonic、富士通などの日系、そして、イスラエルのテックベンチャーまで出展社のラインナップは幅広い。

 いまや小売業界における最新テクノロジーの見本市の様相を呈しているNRFだが、今回は目玉となるような最新テクノロジーの展示はなかった。こう聞くと、「今回のNRFはハズレだったのか?」と思う向きもあるだろうが、その逆だ。ここ数年、AI活用等の展示が目立ち、テクノロジー重視・採算度外視でこんなこともあんなこともできるという、近未来志向の提案が多かった。つまり、「なんでもできるのはわかったけれども、我々小売の実務で何をどう使うと、どれだけ効果が出せるのか、ROI(投資収益率)はプラスなのか」という問いに、明確に答えられていないものも少なくなかった。

Everseen社によるAIとコンピュータービジョンを活用した万引き防止システム(マイクロソフトブース内)

 それが、NRF2020では大きく変わった。AIの活用先がより具体的になり、業務の中で実際に使える、本当のソリューションを提供していたのが印象的だった。この間、実証実験を繰り返し、どの分野でなら成果が上がるのかといった各社のスタディが実を結んだ格好だ。

 一例は、Everseen社によるAIとコンピュータービジョンを活用した万引き防止システムや、Crowd ANALYTIXによるAIを活用した商品検索システム、CGIなどによる画像認識技術とAIを活用した店頭在庫の管理システムなどだ。やはり、画像認識の精度を高めるためにAIを活用するというのが、AIの活用先としてはわかりやすいのだろう。それによって、店頭業務から顧客の買い物体験まで幅広い課題が解決されるのだから、これはもう現実的なソリューションと言えそうだ。

 

 

クローガーの影響で、 デジタルシェルフが隆盛へ

  前回新たにお披露目されたテクノロジーをこぞって各社が取り入れ、切磋琢磨するために、その技術が瞬く間に実装段階へと移行する。今回、その動きが顕著に見られたのが、デジタルシェルフだ。

 デジタルシェルフは、米国最大のスーパーマーケット企業であるクローガー子会社のサンライズテクノロジーによるNRF2019での展示が発端だ。この年クローガーのロドニー・マクマレンCEOは基調講演で、クローガーがマイクロソフトとタッグを組んで、ワントゥワンマーケティングを強力に推進していくことを語り、マイクロソフトブースにおいて、サンライズテクノロジーによるデジタルシェルフの展示がなされた。棚部分にデジタルサイネージを取り付け、顧客の購買履歴に応じたプロモーションを行うというもので、小売業が広告事業を新たに行なうという姿が見えた展示だった。

 あれからわずか1年。例えばマイクロソフトブースで展示されたHanshow Technologyのデジタルシェルフでは、すでにサンライズテクノロジーよりもコスト効率の高いソリューションを提案。Electric Dgital Shelf(電子棚札)のくくりで見てみると、NRF2020では実に17社が展示をしていたことからもわかるように、各ブースにおいてデジタルシェルフの展示が非常に多かったのが印象的だ。既存の棚を活用して取り付けることが可能であり商品も菓子、飲料、アパレル、家電用品と多岐に渡って活用を見据えていることがわかる。

 デジタルサイネージそのものの進化も見逃せない。ディスプレイの画素数等が向上し、動画も滑らかに表示されるようになった。ディスプレイにおいて世界最高の技術を持つサムスンの展示では、ハイファッションブランドの世界観を鮮やかに再現する展示で、もはや実物以上の鮮明さ。店内におけばブランド力向上に寄与するものと思われた。このほか、レストランなどのメニューでの活用例として、商品のシズルをうまく表現するために、例えばガトーショコラに粉砂糖を振るアニメーションを見せるなどしていた。また、アパレル関連では、消費者が選択した洋服を、アバターが着用して、ランウェイを歩く様子を見ることができるサイネージが展示されていた。

デジタルカートはスキャンレス派が主流だが課題も

Walk out社は、カメラで商品を認識することでカートの商品を把握できるスキャンレスのデジタルカートを展示

 次に注目したいのがデジタルカートだ。デジタルカートは主に、「イノベーションラボ」と呼ぶ、テクノロジーベンチャーによる小さなブースが集積したゾーンで多くの提案が見られた。Walk out社は、カメラで商品を認識することでカートの商品を把握できるスキャンレスのデジタルカートを展示。一方、Caper社のデジタルカートは、スキャンと重量センサー、カメラを組み合わせたテクノロジーを採用していた。

 デジタルカートも実用化目前と言えそうだが、明確な課題もある。それは、来場者が何気なくWalk out社のデジタルカートの液晶部分付近に手を伸ばした時に明らかになった。担当者が血相を変え、「このカートは繊細なので取り扱いに気をつけてくれ」と言ったのだ。お客はレジカートを貴重品のように扱うことはしない。どちらかといえばカート同士がぶつかることも、雨天に車の近くまで運ぶため室外で使うことだってある。カートにまず必要なのは、堅牢性なのだ。

 一方、スキャンレスを志向する“繊細な”デジタルカートが多い中、現実的なソリューションとして来場者の理解を得ていたのが日本発の「スマートレジカート」だ。これはトライアルカンパニーで導入されているセルフスキャン方式のカートで、リテールAI研究会が展示したもの。トライアルホールディングスの西川普二CIOは「現在の技術では実用的なのはセルフスキャン。カメラ認識等の技術が進み、価格的にも下がれば、その仕組みを取り入れればいいだけのこと」と説明する。

BOPISソリューションが各社のブースで見られ、そのロッカーも消費者向けの受け取りロッカーだけでなく、工場やバックヤードなどでの利用を想定したロッカーなどもある

 オンラインで注文して店頭で受け取る、いわゆるBOPISソリューションおよび、受け取りロッカーも、今回多くのブースで見られた。ある出展者によると「Buy online pickup in Locker」(BOPIL)という言葉さえ誕生しているという。

 また、受け取りロッカーだけでなく、バックヤードや工場、物流センターなどで使用することを想定したロッカー、保温に対応したロッカーなども展示されていた。前者は従業員が使用するコントローラなど備品を適正に管理するのに使われる。後者はレストランやテイクアウト専門店などでの、事前注文に対応したソリューションだ。

 この他にもRFIDテクノロジーや、レジレスストアソリューション、ドローンに搭載されたカメラと画像認識技術を活用した店頭在庫管理システムなど、さまざまな展示がなされていた。

 今回のNRFEXPOを総括すると「実用化に向け、離陸するテクノロジー」ということができそうだ。

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