「夢をカタチに!和食を世界に!」をスローガンに、経営サポート事業と飲食事業を展開するG-FACTORY(東京都/片平雅之社長)は炭火焼きのウナギの専門店チェーン「名代 宇奈とと」を国内外に展開している。同社のストアマネジメント事業部の田口建介次長にビジネス展開手法や今後の展開について聞いた。
ダブルネーム店舗はコロナ禍でも成長
「名代 宇奈とと」はこれまで高級食材、ハレの食材というイメージのあった炭火焼きのウナギを日常的に、安価に楽しめるファストフードのように低価格で展開する専門店だ。
2024年8月末現在、国内外で合計95店を展開。そのうち直営店が18店、海外ではシンガポール2店、ベトナム5店の計7店となっている。
同社の出店地域は東京と大阪が中心だ。立地としては直営店では9割が駅前に店舗を構えているが、その他にも「イオン」の商業施設内にあるフードコートへの出店など、多角的な出店を行っている。
これらの店舗のほか、商品供給店舗は現在約200店に及ぶ。その多くがヴィア・ホールディングス(東京都/楠元健一郎社長)の焼き鳥専門店「やきとりの扇屋」とのダブルネーム店舗である「オオギヤと宇奈とと」だ。コロナ禍のさなかだった2021年9月から両社がタッグを組んで展開を始めた。
「時短営業や酒類の提供制限があったコロナ禍において、炭火を使った商品提供という点で共通点のある扇屋さんと協業し、弁当などのテイクアウトやデリバリー、店内での商品提供をして、ダブルネーム店舗による店舗数がどんどん増えた」と田口次長は話す。コロナ禍という特殊な環境下における店舗戦略が、両社にシナジー(相乗効果)をもたらしたと言える。
海外客と飲み客が回復、期間限定メニューも奏功
「海外渡航が解禁になり、インバウンド(訪日外国人客)需要が加速度的に増える中、『上野店』(東京都)などの観光地にある店舗の売上高は前年比50~60%増に伸長している。既存店も全体に好調だ」と田口次長が述べたように、同社は前期(23年12月期)に続き、24年1~3月期も過去最高の売上高を更新している。「名代 宇奈とと」の前期の国内売上高は12億9600万円となり、前期から26.2%も増えている。
海外からのお客に向けて、英語表記のメニューの提示や外国人スタッフの採用も積極的に実施している。このようなインバウンド需要の増加に加え、「飲み客」が戻ってきていることも、酒類を販売する同社にとっては売上増の要因となっている。
売上増のもう1つの要因としては、通常の「うなめし」にプラスアルファの組み合わせをしたペアメニューの投入、「うなめし」の約4倍のウナギが乗った「うなめしギガ増し+」などの期間限定販売イベントの実施が挙げられる。酒類やおつまみメニュー、期間限定のお得なメニューなどを定期的に更新することによって、常連客の飽きをなくし、新規顧客も獲得している。
ウナギをファストフード化した仕組み
同社の最たる強みは高級食材であるウナギをファストフード化した点にある。「宇奈とと」の看板メニューである「うな丼」の価格は税込590円(ダブルは同1100円)と、競合チェーンの追随を許さない圧倒的な安さだ。円安の影響で原価が上昇し、同業他社が値上げに踏み切る昨今の環境下においても、同社は2年以上ベースの価格を上げていない。低価格でウナギを提供できる理由は「大きく調達、オペレーション、教育にある」と田口次長は説明する。
調達については、商社が持つ工場で生産したウナギを「買い時」を定めて大量一括購入し、在庫を確保しておきながら、都度出荷してもらう方法にある。
オペレーションについては、自社で特許を持っている調理設備を使い、工場で加工済みのウナギを店舗において規定の条件でカットし、仕上げ焼きをして盛り付けている。メニューも絞り込まれており、少人数、かつ熟練していないスタッフでも短時間で調理できる仕組みとなっている。オープン前1週間、オープン後1週間の2週間、G-FACTORYの指導員が経営指導を行うなどFCサポートも手厚い。
「アルコール需要」の取り込みへ
今後の出店について田口次長は「基本的にFC方式で毎年数店舗ずつ確実に出店しているので今よりも店舗数は増えるだろうが、出店が急激に増えると既存店の売上に影響を与えるなど非効率な部分もあるため、一店ずつ増やしていくかたちになるだろう」と話す。
同社の中心ターゲットは40代~60代の日本人男性だが、立地によってはインバウンド向け、若者向けと柔軟なフォーマットやメニューパターンを展開している。
開店前から行列が絶えない繁盛店においては開店時間を繰り上げたり、アルコールの需要が高い店舗においては最初の一杯を低価格で提供する「ハッピーアワー」を設定したり、通常の酒類提供開始時間である14時~15時ではなく、昼からの販売に切り替えるなどといった仕掛けも行っている。特に現在はアルコール需要に手応えを感じており、今後さらに伸ばしていきたいと考えているという。