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TとV統合!経済圏にしばられない新Vポイントの戦略と小売への影響

キャッシュレス決済の普及に伴って、購買金額や利用料金に応じて付与されるポイントサービスの競争が激化し、「ポイント経済圏」の囲い込みを巡る流通各社の攻防も熱を帯びている。そうした中、20244月、「新Vポイント」のサービスが鳴り物入りでスタート。新たな「ポイントの巨人」の登場に注目が集まっている。

「反ポイント経済圏」という経営方針で意気投合

Vポイントサイトより

 新Vポイントは、レンタル大手の「TSUTAYA」などを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が展開する「共通ポイント」の「Tポイント」が、三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)が展開する「旧Vポイント」と統合し、リニューアルしたものだ。

 Tポイントは、さまざまな提携先でポイントをためられる共通ポイントの草分けであり、自社ポイントカードに比べた利便性から、会員数では全国トップクラスを誇ってきた。しかし、「楽天ポイント」「dポイント」など、スマートフォンの決済機能と連動した携帯キャリア系のポイントサービスが台頭する中、新たな成長戦略を模索していた。

 一方で、旧Vポイントは、クレジットカードの利用額に応じてポイントがたまる仕組みだったが、会員拡大や利用頻度アップといった課題があり、Tポイントとの統合で、そうしたボトルネックを一挙に解消したい狙いがある。

ポイント運営を担当する撫養宏紀・CCCMKホールディングス取締役は、新Vポイントが発足した経緯について、次のように説明する。

 「20224月にCCCの社長交代で、新旧トップがSMBCさまにご挨拶に行った際、SMBCのトップと意気投合し、トントン拍子に新Vポイントへの統合が決まった。同年8月から両社で協議が始まり、20236月に統合の発表ができた。特定の経済圏にしばらずに、お客さまが利用しやすいポイントサービスにしたいという経営方針で合致できたことが、異例の速さで統合に漕ぎつけた理由だろう」

世界約1億店舗でも使える利便性を獲得

撫養宏紀・CCCMKホールディングス取締役(左)、大塚善之・CCCMKホールディングスポイント事業第1本部長(右)

 統合前の会員数(有効ID数)はTポイントが約1億2800万人、旧Vポイントが約2600万人。統合後の新VポイントのID数は約1億5400万だ。

 Tポイントは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、外食チェーン店など「リアル店舗」の加盟店が多く、日常の買い物でも使いやすいのが大きなメリット。旧Vポイントも、SMBCの信用や顧客基盤を背景に、高額のクレジット利用が多いといった強みがある。

 大塚善之・CCCMKホールディングスポイント事業第1本部長は、「今までのTポイント提携先約16万店舗で使えるのはもちろんのこと、新VポイントではVisaと連動しているので、国内約750万店舗、世界約1億店舗で使えるようになった」と強調する。

 報道やTVCMによる認知度アップ、アプリでガチャを回すと毎日Vポイントが当たるといった「スタートアップキャンペーン」などが奏功し、モバイル登録会員数は2024年5月、6月とも、月間約100万人ずつ増えているという。

 会員は、年代別では30~40代が最も多く、70%以上がVポイントを利用している。ただし、会員の年齢層は幅広い。「ライフステージが変わると、利用するポイントも変わることが多いが、新Vポイントは誰でも利用できる。しかも、利用できるお店が急増した。ポイントがどこでもためやすい、使いやすいという共通ポイントの長所を、PRしていきたい」(撫養取締役)

 一方で、提携社数は新Vポイント発足時約180社だったが、すでに8社が新規加盟。「SMBCさまからの企業紹介も多い。引き合いも活発なことから、提携企業は今後も大幅な増加が予想される」(撫養取締役)

 大塚本部長も、「Tポイント、旧Vポイントの既存のポイントを、自社で使ってもらいやすいといった、目に見える利点があるからのようだ」と、顔をほころばせる。

会員数拡大で、マーケティングの質も向上

 さらに、旧Vポイントの膨大な利用情報が取得できるようになったことで、CCCMKホールディングスは、マーケティング事業にもいちだんと注力する。

「データの量が増えただけでなく、データ分析の質や精度も高まることが期待されている。Tポイントは、どこの店舗で誰が、どんな商品を買ったのかといった、きめ細かいデータを把握している。例えば、異業種の店舗が新規に加盟すれば、そうした店舗のポイント利用データとのマッチングによって、顧客の既存業種との買い回りといった分析も可能になり、リコメンド機能も強化できるだろう」(大塚本部長)

 CCCMKホールディングスのマーケティングサービスでは、「CPA」(広告に対するコストパフォーマンスの指標)が約2倍に改善したケースもあるといい、新Vポイント統合による機能アップを訴求していく。

 そのほか、スマホアプリを活用したリコメンド広告、SMBCと共同しさまざまな証券取引といった金融サービスとの連携も検討中だ。一方で、フィジカルなカードのアプリ移行を促すサポート機能を拡充するほか、CCCMKホールディングスが運営する「Vポイントアプリ」と三井住友カードが運営する「VポイントPayアプリ」の統合なども将来的には視野に入れているという。会員の利便性を追求し、利用の底上げにつなげたい考えだ。