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平尾健一社長が語るマックスバリュ西日本の統合後の成長戦略

マルナカ、山陽マルナカと経営統合へ

広島県に本部を構え、中四国エリアを中心に店舗展開するマックスバリュ西日本。イオンの食品スーパー(SM)事業再編に伴い、19年3月に完全子会社化したマルナカ(香川県/齋藤光義社長)、山陽マルナカ(岡山県/宮宇地剛社長)との経営統合に向け準備を進めている。商勢圏では競争が激化するなか、今後、いかなる成長戦略を描くのか、平尾健一社長に現在の状況や展望などを聞いた。

定期的に分科会を開催

ひらお・けんいち1962年1月1日生まれ。84年3月ジャスコ(現イオン)入社。2007年3月マイカルカンテボーレ(現イオンベーカリー)代表取締役社長。09年2月同社代表取締役社長兼イオンベーカリーシステム(現イオンベーカリー)代表取締役社長。10年5月イオンタイランド代表取締役社長。14年9月イオンSM・DS・小型店事業最高経営責任者補佐。15年3月ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス代表取締役。16年5月マルナカ代表取締役社長就任。19年5月、マックスバリュ西日本取締役。19年9月、マックスバリュ西日本社長就任(現任)、マルナカ会長(現任)。

──2019年9月10日、マックスバリュ西日本の経営トップに就きました。以来、どのように動いていますか

平尾 マックスバリュ西日本は単体ベースで現在、広島県をはじめ、岡山県、山口県、兵庫県、鳥取県、香川県、徳島県、愛媛県の8県に185店(19年10月末現在)を展開しています。社長就任後、着手したのは店舗訪問です。近年、業績が低迷しているため、まずは売場や品揃えを自分の目で確認、また店長や従業員と話しながら、当社の現状や抱える課題の把握に努めています。

 20年1月初旬にほとんどの店を回り終えたばかりですが、魚や野菜など、地場産の品揃えが競合店と比較し、総じて弱いという印象を持ちました。SM企業としてはその地域の商品を強める必要があると考えています。

 同時に感じたのは、改善を図っていくうえで、各店とのコミュニケーションの仕方を工夫する必要があるということです。主に店舗運営にあたるのはパートタイマーさんで、従業員全体の8~9割を占めています。本部から会社の方針や売場づくりなどを伝えるにしても、シンプルで、わかりやすいメッセージを意識します。

──競争環境はいかがですか。

平尾 商勢圏では各地に強い地場SMがあるほか、近年は食品の扱いの大きいドラッグストア、またディスカウントストアも存在感を増しています。今後も、同様の傾向が続くと予想され、競争は非常に厳しいと見ています。

──さてイオン(千葉県/岡田元也社長)がSM事業の再編を進めているのに伴いマックスバリュ西日本も、同じ中四国エリアにあり、すでに完全子会社化したマルナカ、山陽マルナカとの経営統合を控えています。今はどのような状態ですか。

平尾 経営統合を円滑に進めるため、3社の担当者が定期的に集まり、財務、商品、営業、物流など13のテーマを設けて分科会を開き、意見交換しています。統合のメドは2021年3月ですが、それを待つことなく品揃えや出店など、できることは着実に進めたい。統合後は、すでに発表されているとおり、中長期に7000億円、営業利益率3%をめざします。

社長就任後、各店を回り、課題や現状を把握した。地場産商品が弱いと感じ、旗艦店、宝殿店(兵庫県)をリニューアルし品揃えを大幅に充実させた

マルナカの生鮮力を活用

マルナカの生鮮食品の商品力を活用、生鮮強化型SMをめざす

──商品政策では地場商品を強化するとのことですが、具体的にはどう実現しますか。

平尾 19年秋から、エリアごとに青果、鮮魚、日配部門担当の地区バイヤーを配置し、地元の商品を揃えるため買い付けを進めているところです。商勢圏を広島、岡山・四国、兵庫、山口の4エリアに分け、各部門の商品を徐々に充実させています。たとえば鮮魚は、各地の有力漁港で水揚げされた魚を仕入れ、丸魚のほか、切り身、刺身、寿司などの即食商品に加工し、販売できるようにするといった要領です。

──各地の地場産商品を充実していくイメージですね。

平尾 当社は、兵庫県の豊岡市場において、セリに参加できる買参権を持っているのですが、うまく活用できていませんでした。具体的には豊岡エリアにある数店で販売するにとどまっていましたが、今後は「産直鮮魚」としてより多くの店で順次、扱っていく計画です。

──統合を控えているマルナカ、山陽マルナカとの連携についてはどう考えていますか。

平尾 統合に向け、掲げているのは「地域密着型経営」で、めざすのは生鮮強化型SM。そのなかマルナカが持つ生鮮商品力を最大限に生かした仕入れを強化していきます。

 たとえばマルナカグループには、買参権を持つ水産会社の大洋水産(香川県/土居泉太社長)があり、一緒に仕入れを行うことも検討しています。手始めとして、兵庫県の浜坂漁港で水揚げされたカニを現地でボイルし、大洋水産から仕入れようと動いているところです。

 また同様に山陽マルナカについても兵庫・岡山エリアの調達力を活用する方針です。

──統合すれば5000億円を大きく超える企業規模となり、そのバイイングパワーを背景にした商品開発もできます。

平尾 地域のお客さまはもちろん、さらに産業、生産者との関係を強め、六次産業への取り組みも視野に入れています。具体的な動きはこれからですが、広島県は柑橘類が有名で、それらを加工した商品の開発も考えられます。

小型「新フォーマット」を開発

兵庫県の旗艦店である改装オープンしたばかりのマックスバリュ宝殿店

──店舗政策を教えてください。

平尾 今後中長期に7000億円をめざすとなると、積極的に出店する必要があります。少なくとも毎年2ケタの出店を行うことになるでしょう。

 中四国をいくつかのエリアに分け、エリアごとに政策に従い、店舗数を増やします。店舗がある地域のうち、兵庫県西部(西播、東播地区)、岡山市、広島市、山口県西部、香川県は、積極的に出店しドミナントエリアを強化しようと考えています。

 店舗の空白地帯のうち、広島県東部、また山陰エリアについても順次、新規出店しシェアを拡大、ドミナントエリアの構築をめざします。

──マックスバリュ西日本の商勢圏は、少子高齢化の進行により人口が大きく減少している場所も少なくありません。

平尾 いわゆる買物困難エリアについては、移動販売事業やネットSMをはじめとする事業をイオンと連携しながら展開することも検討課題です。

──出店は従来型のSMを増やすイメージですか。

平尾 近年、立地が少なくなってきており、これまで主力のひとつとしてきた売場面積2000~2500㎡タイプは出店しにくくなっているのが現状です。そのため都市部については、小型の新フォーマット開発が急務です。すでに当社既存店が多くあるエリアでも出店できる、小商圏をねらったSMを開発し、店舗網を広げていきたい。

 その際、新フォーマットは、プロセスセンター(PC)も活用したローコストオペレーションを実現することで収益を確保しながら、迅速な多店舗化を計画しています。

3社統合に最適な物流網を再整備

──統合にあたっては物流センターやPCなど、各社が持つインフラを有効活用することも、成長戦略を推し進めるための重要なテーマになりそうです。

平尾 マルナカグループの味彩工房は、19年12月から、香川県高松市に大型のPCを稼働させています。同施設は、今回のSM事業再編以前から計画されていたものですが、統合もにらみながら各社、各店への効率的な商品供給の拠点に役立てます。同PCでは、弁当や寿司、総菜、サンドイッチ、サラダなどを製造しており、そこから四国のマルナカ各店舗へ商品を送り、稼働率を上げていきます。

 同じく19年12月に稼働を開始したマルナカグループの大洋水産では、鮮度の高いブリやハマチなどをフィレの状態に加工、マルナカ各店へ入れる予定です。今後、四国のマックスバリュやディスカウント業態のザ・ビッグに商品を送ることも見据えています。そうすればパートタイマーさんでも、簡単に切り身や刺身をつくることが可能になるでしょう。

──広島や岡山・兵庫などのエリアではいかに対応しますか。

平尾 四国から商品を送るとなると、瀬戸大橋を渡らなければならず、物流コストがかかります。そのため本州側も同様に、各社の既存施設を共有するほか、足りない場合は順次、整備します。また兵庫県の一部では、当社と山陽マルナカのトラックが走っているのが現状。重複しているエリアについては今後、最適な物流網を再整備していきます。

──新体制の全貌が徐々に明らかになっていきますね。

平尾 取り組みは始まったばかりで具体化はまだこれから。今後の計画を早期にまとめ、近く発表する方針です。地域密着型経営により、各地でお客さまに支持されるよう努力します。

マックスバリュ西日本企業概要

本部所在地 広島県広島市南区
資本金 17億200万円
代表者 平尾健一社長
営業収益 2749億3700万円(2019年2月期)
店舗数 185店(単体、19年10月末現在)