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サミット竹野社長新春インタビュー  新・中計の方向性「食を軸に社会課題を解決する」とは!?

 2016年に就任した竹野浩樹社長のもと快進撃を続けるサミット。19年度もその勢いはとどまらず、163月期からの3年半で既存店の客数は9%、既存店売上高は10%も伸長させている。そんな同社にとって20年度は新しい中期経営計画(中計)がスタートする節目の年。次の成長戦略をどう描いているのか。毎年恒例の年末記者会見での竹野社長の発言をまとめた。

「大総菜プロジェクト」の
強化商品が成長をけん引

 20年3月期(今期)は3カ年の中計の最終年だ。目標に掲げる売上高3000億円、当期純利益50億円は19年3月期で達成済みであり、今期についても計画どおりに推移し、前期同様の成長を維持している。最大10連休のゴールデンウイークや天候不順など、先が読めない環境要因があったなかでも既存店売上高は上期が対前年同期比100.5%、さらに消費税増税後の消費の冷え込みが懸念された下期も10月は同101.7%、11月は同102.3%と、前年実績をクリアしている。

 とくに伸長しているのが、部門横断型で取り組む「大総菜プロジェクト」で開発する、即食商品や半調理品だ。既存店ベースでの売上高は対年同期比で10%近く伸びており、全体の成長をけん引する存在になっている。

 消費税増税にまつわる新たな取り組みとしてはQRコード決済を導入した。すでに交通系電子マネー「Suica」と同じくらいに利用者が増えていて新しい決済手段の1つとして消費者に浸透しているといえる。

 こうした変わりゆくお客さまの「買い方」に対応するべくサミットでは18年度に全社プロジェクト「SDX(サミット・デジタル・トランスフォーメーション)」を発足した。当社ではセミセルフレジは全店導入済みのため、今後は実験的にフルセルフレジの設置を進めていく。社会変化に応じ、お客さまにとって利便性の高いデジタル機能を順次、取り入れていきたい。

竹野社長の肝いりの施策である「大総菜プロジェクト」では、店頭で扱う素材を使った即食商品や半調理品を拡充。全体の成長をけん引する存在となっている

ステークホルダーに
「社会」を加える

 20年春には次の中計を立ちあげる。具体的な施策はまだ公表できないが、その方向性について説明したい。

 今日本の多くの食品スーパーでは、食の課題を解決する「ミールソリューション」を提供しているのが現状だ。しかし今後は、それだけでなく、消費者の生活、さらには地域の困り事にも寄り添って、食を軸に社会の課題を解決するサポートにも乗り出し、必要とされる存在になることが重要だ。それが業態の垣根を越えた競争を勝ち残っていくことにつながるだろう。これまで当社のステークホルダーは「お客さま」「社員」「お取引先」だったが、ここに新たに「社会」を加えていきたい。

 こうした考えのもと19年12月には幹部約40人で2日間の合宿を実施し、今後のサミットがめざすべき姿について話し合った。トヨタ自動車(愛知県)が「クルマをつくる会社」から、移動にかかわるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」へと事業モデルを変化させることを発表したように、われわれも食だけでなく、地域や社会において何が提供できるか追求し、それをもとに次の中計を策定する考えだ。

売場面積100坪の実験店を
JR山手線内側に出店へ

20年度は都市型小型店の出店を加速する。写真は18年11月に東京都港区でオープンした売場面積約300坪の「三田店」

 人手不足の問題については、サミットにおける従業員の充足率は現在、95%ほどだ。20年度は外国人技能実習生の数を、今年度末の計約300人から約500人に増やし、充足率を高めていきたい。

 今後人手を確保するには「働きたい」と思ってもらえる会社になることが重要だ。そのためにサミットでは「リスペクトする社風」を掲げ、マネジメント層が中心となり、従業員の発言を否定せず、挑戦を後押しして、その成果については全体で共有する組織づくりを進めている。

 当社で行うチラシ販促において、次々とユニークなアイデアが出ているのは、この組織改革に起因する部分も多い。競合他社で似たような企画を始める動きが見られるが、経営陣の強力なサポート、従業員の自発性がなければ、継続して続けることは難しいだろう。

 今後の出店計画については、現在すでに出店候補地を10店ほど確保している。20年度は5月に、JR山手線内側に売場面積約100坪の小型の実験店をオープンするほか、同300坪以下の店舗を3店出店予定だ。

 こうした都市型小型店の開発には18年度から力を注いできた。なかでも19年3月開業の「鍋屋横丁店」(東京都中野区)は好調で10月には単月黒字化を達成した。300坪あれば年間20億~25億円を売り上げ、賃料が高い立地でも利益を出せるノウハウを構築できており、これにさらに磨きをかけていきたい。(談・文責 編集部)