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第5回 食育や教育を通じてSDGsに取り組む!競合との差別化にも=マルイ

小売業のSDGs

食品スーパー「マルイ」(岡山県/松田欣也社長)は、SDGsに関する各種施策に力を入れている。食育や教育、また環境などの分野で多様なプログラムや取り組みを実施、地域との結びつきを強め、従業員にとっても働きがいのある企業をめざしている。

楽しい体験型企画

 マルイは岡山県に本部を構え、岡山県、鳥取県で食品スーパー(SM)を展開する企業である。同社は会社を設立した1958年以来、「中国地方で一番支持されるスーパーマーケット」を目標に地域との関係を重視する。企業方針は「絆」。

 その一環で、CSR(企業の社会的責任)にも熱心に取り組んできた。具体的なテーマとして、「人材育成・教育の充実」「食育先進企業としての取り組み」「地域貢献の深耕・拡大」「環境先進企業としての取り組み」「商品・店舗の取り組み」──の5つを設定する。

 「これらは近年、世界的な関心事であるSDGsとの親和性が高い。当社では、SDGsが定める17の目標と整合性を持たせながら、CSR活動についてのテーマを『食育』『環境』『商品(品質)』『店舗』『地域貢献』『人材育成』に再整理した」(執行役員の鈴木豪環境対策室長)

 このうち「食育」では、年間250近いプログラムを実施。お客、地域との関係強化に役立てている。なかでも興味深いのは、参加者が楽しめるような、体験型の企画が充実していることである。

 一例は、毎年夏に開催する「エコキャンプ」だ。親とともに参加した小学生が、地元産の野菜や肉を使ってカレーライスの調理を体験。食後は、水を節約するため、新聞紙で汚れを除去してから使った食器を洗うなど、環境意識を高める内容も工夫している。

食育活動では、楽しい体験型プログラムが多い。「ブロッコリーの定植・収穫体験」もそのひとつ

 「ブロッコリーの定植・収穫体験」もそのひとつ。畑を耕し、ブロッコリーを植えるほか、収穫までを体験するもので、毎回、盛況という。

 ほかにも有名シェフによる料理教室や、メーカーと連携した工場見学なども定期的に開いている。いずれも参加者の満足度は高く、好評だ。営業本部食育推進室の植松久志室長は「今後も、楽しみながら食育に関心を持っていただける企画を考えていきたい」と抱負を語る。

食の専門家を育成

3年前、自前の教育機関「マルイアカデミー」を立ち上げた。写真は、外部講師を招いて開催した、日本さかな水産アカデミー研修の様子

 食育活動のほか、マルイではテーマに掲げる「人材育成」にも力を注いでいる。そのなか、3年前に立ち上げたのは、自前の教育機関「マルイアカデミー」。従来、マルイの教育制度は「新入社員研修」「マネージャー研修」など、階層別のメニューが中心だった。これに対して新設したマルイアカデミーは、食に関する公的資格を取得する従業員に対し、金銭的に支援するというものだ。

 そのねらいを同社総務・人事部人事課の真木亮子マネージャーは次のように説明する。「SM企業として、食の専門家を育成したい。また自ら目標を定めて勉強、行動する、“自走型”人材を増やしたいと考えている」。
マルイアカデミーのもと2018年度は、調理師やふぐ処理師、登録販売者、日本さかな検定、薬膳コーディネーターといった免許や資格などを143名が取得した。社員だけでなくパートタイマーも対象としているのも、特筆すべき点である。

 この施策は従業員の仕事に対するモチベーションにもつながっている。接客時、お客から聞かれたことに対し、自信をもって対応できるようになったという従業員は少なくない。またこの3年間で、新卒者の離職率は約10%低下、定着率も向上している。

 あらためてマルイが事業展開する中国エリアの競争環境に目を向けると、年々、厳しくなっているのが現状だ。同業態の有力SMが増えるほか、食品の扱いが大きいドラッグストア、またディスカウントストアといった異業態が存在感を増している。

 そのなか、今回、紹介したようなSDGs、またCSR活動に関する取り組みは、低価格以外の価値を訴求、従業員満足度を上げるという側面を持ち、競合店との差別化にも力を発揮しそうだ。

この項、終了。次回は12月27日公開予定。