工具・間接資材のネット通販(EC)最大手のMonotaRO(兵庫県)の快進撃が止まらない。2019年12月期第2四半期業績は、売上高が629億円(同21.8%増)、営業利益が75億円(同13.2%増)の2ケタ増収増益となった。さらなる成長に向けて、同社はどのようなことに取り組むのか。決算説明会での鈴木雅哉社長の話をまとめた。
新システム導入で
サプライチェーンを効率化
19年度上期に取り組んだのは、出荷能力を拡大すること。茨城県笠間市の「笠間DC(ディストリビューション・センター)」の拡張工事を2年間かけて行い、今年3月末に完了した。自律搬送型のロボットを新たに270台投入することで、庫内スタッフは歩く必要がなくなった。労働生産性は1.5倍に向上し、出荷能力は従来の約2倍になった。
今後の売上規模拡大を見越して、さらに「茨城中央サテライトセンター」(茨城県東茨城郡)を21年に建設、関西では「猪名川DC」(兵庫県猪名川町)を22年から操業開始させる予定で出荷能力を増強していきたい。そして23~24年にも1カ所、関東圏で物流センターの新設を検討している。
そして、物流の出荷能力を拡大、サプライチェーンを効率化するために、事業を支えるバックエンドであるシステムを刷新し、商品情報管理システムと注文管理システムの導入を決定した。
商品情報管理システムを導入することで、商品登録作業を効率化する。現在、仕入先との商品データのやり取りはメールで行うことが多いが、新システムが稼働すると、直接システムに入力することができ、よりスムーズに作業を完了させられる。また、多言語化を行うことで、現地では調達できない商品を海外から仕入れられる仕組みをつくっていく。
注文管理システムはサプライチェーンを効率化するために導入を決定した。選定に半年かけて、米IBM社を採用。現在は、すべての商品が仕入先から当社の物流センターを通じてお客さまに届けられているが、仕入先から直接配送する方が効率的な場合は、そのようにできるようにシステムを見直す。7月に要件定義が完了、8月から開発に取りかかり、来年春からの利用をめざしている。
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今期のデータサイエンティストの採用数は!
新規顧客獲得は
量より質に
ウェブサイトの改善も同時に進めてきた。よりお客さまがわかりやすく、便利に商品検索できるようにするためのデータ基盤を構築する。それを実現するためのデータサイエンティストの採用を東京都、大阪府で進めてきた。通年の目標人数は20~30人で、上期では10人採用できた。
現在、商品点数は1800万点超ある。2011年くらいから、「より多くの品揃えすること」を第一優先課題として取り組んできた。しかし、ここ2~3年は品揃えよりもデータを活用することによって、それぞれのお客さまに適した商品を最短で提示することをめざしている。今もこれがいちばんの優先課題だ。
これまでSEO対策や、テレビCM、ウェブ広告を打つことで新規顧客を獲得してきた。その際、新規獲得した顧客数を重要な指標としてみていた。しかし、その顧客が登録した後に、どれくらいモノタロウのサービスを利用しているかを知る必要がある。新規獲得の顧客数は3割以上増加しているが、売上は3割も伸びていない。つまり、既存顧客よりも利用率の低いユーザーが増えているということになる。
この下期からは、獲得件数を主眼に置かない。お客さまが最初にどの商品を見たのか、そこから何を購入したのか、どういう業種なのか、といったデータを分析する。それにより、これからお客さまがどれだけモノタロウを利用するポテンシャルがあるのかを考慮に入れた指標をつくっていく。1人で数百万円使ってもらえるような優良顧客を、より多くのコストをかけてでも獲得する必要がある。
これらの施策に取り組むことで、通年では売上高1362億円(対前期比24.4%増)、営業利益165億円(同19.9%増)の計画達成をめざす。引き続き、企業規模の大小問わず、どんな人でも簡単に、便利に工具・間接資材が手に入るようなサービスをつくっていく。(談・文責 高浦佑介)