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落日のGMS その4 苦悩の西友、楽天とのネットスーパーが救世主となるか!?

流通の黒船襲来と騒がれた、西友を買収しての米ウォルマートの日本上陸。しかし、西友は世界最大の小売業であるウォルマートがバックについているにもかかわらず成長しているとは言い難い状況だ。売上高は現在7000億円規模とみられ、上場していた2007年度は1兆円近くあったことと比べるとその苦戦ぶりがわかる。長引く西友の低迷はどこに問題があったのか――。

ウォルマート流がなじまなかった!?

 流通業界を取材してきたある専門紙の記者は、西友がウォルマート傘下に入っても低迷状態から脱出できないのは「ウォルマート流のやり方を西友に押し付けようとしたからではないか」とみている。

 流通外資は多くがそうだったように本国の成功体験を持ち込もうとする。「これが一番の問題。一度の買い物で大量に購買する米国と日本では購買の仕方も違う」(同)と話す。

 ウォルマートは西友を買収した際、本国で成功してきたエブリデイ・ロープライス(EDLP、毎日低価格)戦略を実現するためリテールリンクと呼ぶ、メーカーや卸と販売情報や在庫情報の共有システム、さらにメーカーとの直接取引を志向した。またプライベートブランド(PB)比率の引き上げ、店舗運営面での効率化のシステムなどウォルマート流の先端経営を移植してきた。

 もちろん、チラシを削減したEDLPや、店舗運営の効率化自体が悪いといっているわけではない。しかし、西友は効率を重視するあまり商品数を絞り込みすぎたという指摘は少なくない。売れ筋商品に偏重した商品政策は日本では受け入れられなかった格好だ。

 例えば食品スーパーのオオゼキは逆の発想だ。醤油だけでも80品目ある。しかも1フェースしかない商品もザラ。にもかかわらず、売上高経常利益率は6.17%(19年2月期)だ。

 オオゼキでは店舗の従業員が接客しキメ細かくお客の要望に対応するため、全体の品揃えは多い。「同じような食品スーパーに比べて商品数は1.5倍くらいある」(明瀬雅彦取締役)という。スーパーは地域という視点を欠いては日本では成立しない。

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西友が成長の期待寄せる、楽天との合弁事業!

楽天西友ネットスーパーは救世主となるか⁉

 こうしたなか当面、期待の事業は楽天と共同運営する「楽天西友ネットスーパー」だろう。首都圏に多くの店舗を構え、生鮮食品でノウハウを蓄積してきた西友と1億超の会員基盤、EC(電子商取引)サイトで蓄積した楽天の知見を融合させ、実店舗プラスネットという新たなビジネスモデルの構築に取り組んでいる。実店舗の将来は不透明だが、ネットスーパーは今後、成長期待がかかる分野である。

 しかし、ある経営コンサルタントはこう指摘する。「ネットスーパーだけでは儲からない。楽天が販売する高粗利益率の商品を組み合わせていかに販売するかがカギを握っている」という。

 利益の薄い加工食品や利益がとれるが管理が大変な生鮮食品を物流コスト、人件費をかけて運んで儲かる理屈がない。だから楽天の商品と粗利ミックスでうまく出来るか否か。それに店舗をいかに絡ませるかが勝負だという。今後ネットスーパーの競争が激化するなか、楽天とのコラボでハイブリット(異種混合)を生むかが成功のカギだ。

 西友をめぐっては昨年、一部報道で親会社のウォルマートが売却を検討と報道された。ウォルマートが早々に否定し、現在まで続報はない。しかし、実は交渉は進んでいるのではないかと見る業界関係者はいまなお少なくない。

 ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスの大原孝治社長が関心を示すなど肥沃な首都圏、しかも駅前に多く店を持つ西友の店舗網は魅力的に映るからだ。

 ウォルマートは海外事業のポートフォリオを見直しており不採算の国から撤退、インドなどの新興国や米本土に力を入れている。その過程で、同じく撤退を考えていたイギリスでは、傘下のアズダとセインズベリーの経営統合を画策したが、英当局の判断により不発に終わり、これまで通りの運営を続けていくことが決まった。大きな成長を果たせていないなまま、進出から15年以上が過ぎたウォルマートの日本事業。果たしてこの先、どうなるのだろうか?(次回に続く)