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売上640億円突破!オイシックス・ラ・大地が積極的なM&Aを急ぐ理由とは?

オイシックス・ラ・大地(東京都/高島宏平社長、以下、オイシックス)は521日、20193月期の決算と203月期の事業計画を発表した。193月期の連結業績は、売上高640億円(対前期比60.1%増)、営業利益23億円(同159.4%増)で売上・営業利益ともに過去最高を更新。昨年、らでぃっしゅぼーやの吸収合併を行ったオイシックスは、203月期もすでに米ミールキット宅配企業の子会社化や日本でDEAN&DELUCAをライセンス運営するウェルカムの関連会社化など、積極的なM&A(合併・買収)を進めている。事業規模拡大を図りながらオイシックスが向かう先とは――

オイシックス・ラ・大地の高島宏平社長

M&Aにより当期純利益が大幅に伸長

 好業績の主な要因は、大規模なプロモーション活動により主要ブランドであるOisixの会員数が大幅に増えたことによる。Oisixの会員数は205976人(前年同期比21.4%増)、そのうちミールキットを宅配する「Kit Oisix」コース会員は111169人となり、前期と比較して56.3%も増加した。

 また、らでぃっしゅぼーやの吸収合併による法人税軽減効果や、同社業績が13カ月分計上されるなどのM&Aによる特殊要因により、当期純利益は23.8億円(同906.4%増)となった。

 らでぃっしゅぼーやの吸収合併によって売上・利益とも急拡大したオイシックスだが、今期も積極的なM&Aを行う姿勢を鮮明にしている。オイシックスはどのような事業拡大戦略を描いているのか。直近でM&Aもしくは提携関係を結んだ企業の特徴を見ながら分析していきたい。

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強みを生かして 他社との相乗効果をねらう

強みを生かして 他社との相乗効果をねらう

 

NTTドコモとの新サービス「dミールキット」

 まず、4月に子会社化を発表したのが、米パープル・キャロット(Purple Carrot)だ。同社は、ビーガン食ミールキットの宅配を主な事業としている。ビーガン市場はアメリカで拡大の一途をたどっているが、オイシックスは日常生活で部分的にビーガン食を取り入れるライフスタイル「パートタイムビーガン」が日本でも流行る可能性があると睨んでいる。パープル・キャロットを子会社化することで日本でのビーガン市場開拓を図るとともに、ビーガンと和食を組み合わせた新たな健康食の開発を行い、グローバル展開する考えも明らかにしている。

 さらに5月には、米国発の食料品チェーン「ディーン&デルーカ(DEAN&DELUCA)」の日本事業を展開するウェルカム(東京都/横川正紀社長)の第三者割当増資を引き受ける資本提携により、持分法適用関連会社化することを発表した。ディーン&デルーカは、チーズやワイン、オリーブオイルなどこだわりの食材を提供するセレクトショップのほか、カフェも展開。若い女性を中心に絶大なブランド力を誇る。オイシックスはミールキットの宅配、ディーン&デルーカはリアル店舗での総菜やグロサリー販売に強みがあるため、相互のチャネルでの販売や共同での商品開発によって、互いの相乗効果を図るつもりだ。

 オイシックスはこのほか、通信大手NTTドコモとの協業も同じく5月に発表。ドコモのさまざまなサービスを利用できる「dアカウント」会員向けの新しいミールキット宅配サービス「dミールキット」を197月より開始する。dミールキットでは週に1度、5日分のミールキットメニューを提案し宅配する「dミールキット定期便」や、最短5分で調理可能なオリジナル商品の「おいしい5min.」などを提供する。利用によってdポイントも貯まるため、若年層が多いドコモの会員基盤を活用して新たな客層の取り込みをねらう。

 

国内リアル店舗と海外サブスクリプション宅配へ事業拡大

 あらためて上記3社との提携内容を整理すると、オイシックスが大きく2つのメリットを追求していることがわかる。1つは、オイシックスの強みである「食のサブスクリプションサービス」を生かせること、もう1つは、リアル店舗に強いDEANDELUCAや若年層が多い会員基盤をもつNTTドコモなど、オイシックスにない強みがあり、かつその強みがオイシックスの今後の事業拡大に役立つことである。

 現在、オイシックスは主要3ブランド「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の国内定期宅配サービスを中心とした事業を展開しているが、上記3社との協業やM&Aによって国内のリアル店舗事業や海外でのサブスクリプション型宅配サービスの拡大を進めることが可能になった。生鮮宅配マーケットそのものの市場規模は急拡大しているとはいえまだまだパイは小さい、その一方で有力企業による市場参入は活発だ。オイシックスとしては、横のM&A(同業)がほぼ一巡したいま、周辺マーケットの掘り起こしを他社との連携を通して行うにより事業拡大を実現し、いち早く国内で追随を許さない存在になろうとしている。