岡山県を本拠に、中四国および近畿の計6県で食品スーパー(SM)を展開するハローズ。同社は徹底した標準化を志向し、全店24時間営業というユニークなビジネスモデルを構築して着実に成長を続けている。業態の枠を超えた競争が激化するなか、今後どのような針路を取るのか。同社の佐藤利行社長に聞いた。
厳しい競争を勝ち抜くためには「標準化」を徹底するほかにない
「標準化」を徹底し厳しい競争を勝ち抜く!
──2019年2月期も後半戦に入っています。現時点での業績をどう評価しますか。
佐藤 直近の第2四半期決算では、営業収益634億9500万円(対前年同期比6.2%増)、営業利益25億3000万円(同19.5%増)、経常利益25億3400万円(同21.2%増)でいずれも過去最高を更新しました。
ただ、依然として消費者の節約意識は根強いのも確かです。そこで販促面ではセール企画を継続実施しているほか、今年3月からは、当社創立60周年記念イベントとして、年間を通じての「お客さま還元セール」もスタートしました。
通期業績予想は営業収益1272億円(同4.8%増)、営業利益50億5000万円(同2.8%増)、経常利益50億円(同2.1%増)を見込んでいます。
──ハローズを取り巻く経営環境についてどう見ていますか。
佐藤 競争環境は年々厳しさを増していると実感しています。
当社は広島県、岡山県、香川県、愛媛県、徳島県、兵庫県の6県で店舗を展開しており、瀬戸内海を囲むかたちの商勢圏となっています。このエリアでは同業のSMのほか、食品の扱いが大きいドラッグストア(DgS)やディスカウントストアといったほかの業態も積極的に出店を進めており、競争は熾烈化しているのが現状です。
──そうした厳しい環境下で、どういった方針のもとに戦いますか。
佐藤 「標準化」を徹底するほかにありません。当社はすでに、ニーズに合った商品展開や効率的なオペレーションを実現し、ビジネスモデルの根幹である全店24時間営業を行うためのノウハウをすでに構築しています。それをもとに標準化した店舗をさらに広げ、競争を勝ち抜いていく考えです。
──目標とする経営数値はありますか。
佐藤 18年2月期末時点での店舗数は78店、営業収益は1213億円でした。これに対し、17年2月期に策定した中期経営計画では、21年2月期に店舗数を100店、営業収益を1500億円まで伸ばすことを目標に掲げています。そしてその先、長期ビジョンとして掲げている「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」の実現をめざす考えです。
新たな出店エリアでも大きな手応え
──出店戦略について教えてください。
佐藤 今期は新規出店5店、改装5店を計画しています。
標準フォーマットとしているのは売場面積600坪程度の規模の店舗で、基本的な出店形態は、当社のSMを中心としDgS、100円ショップ、衣料専門店などをテナントとして誘致する近隣購買型ショッピングセンター(NSC)です。この最新モデルが、15年9月に開業した「緑町店」(広島県福山市)で、同店の売場面積は650坪、飲食店や歯科医院なども誘致し、地域のお客さまの利便性をとことん追求した店舗構成となっています。
当社としても600坪型のNSCが最も安定的な収益が見込めるため、現在はこのパターンでの出店を増やしているところです。もちろん、十分な敷地が確保できない場合はフリースタンディングでの出店も行います。
──これまで店舗網が手薄だった広島県西部や兵庫県などでの出店も続いています。こうした新天地での状況はいかがですか。
佐藤 いずれの地域でも、売上は計画を超える水準で推移しており、非常に強い手応えを得ています。当社では通常、新店については3年後をメドに黒字転換する計画なのですが、とくに昨年9月に広島西部の旗艦店としてオープンした東広島店(広島県東広島市)は絶好調で、すでに黒字化を達成しています。
──好調の要因はどこにあると分析していますか。
佐藤 繰り返しになりますが、当社のビジネスモデルの根幹である24時間営業、標準化された売場や品揃え、そしてそれを支える物流インフラなど、これまで構築してきたものに強い競争力があるからでしょう。
──近年は都市部を中心に小型店の開発に意欲的なSM企業も増えています。小型店の開発に取り組む可能性はあるのでしょうか。
佐藤 それはありません。今の標準フォーマットが、お客さまの利便性や効率的な店舗運営を実現するために最適なものだからです。この標準から外れてしまうと、結果としてコスト増にもつながるため、小型のフォーマットを出すことはまったく考えていません。
総菜、PBの開発を強化、価格競争力も高める
──商品政策について、現在とくに力を入れている取り組みはありますか。
佐藤 やはり、全国的に需要が拡大している総菜については強化しています。直近の実績では、全店売上高に占める総菜の売上高構成比は14%で、この5年間だけで1~2ポイント上昇しています。なかには構成比が15%を超える店舗も複数出てきました。
有職女性の増加、高齢化といった社会環境の変化は今後ますます加速していきます。そのなかで即食・簡便性の高い総菜のニーズも高まる一方です。お客さまにとって魅力的な商品をさらに増やしていけるよう取り組んでいきます。
──具体的にどういった商品の開発を強化していますか。
佐藤 重点的に開発を進めているのは魚総菜です。7月に開業した「西二見店」(兵庫県明石市)から、「魚魚庵(ととあん)」の名称で店内調理の魚総菜シリーズの販売を始めました。鮮魚そのものはダウントレンドですが、決して魚を食べなくなったわけではなく、すぐに食卓に並べられる商品は売れています。
このほかにも、レンジアップの商品や、店内のグリルで焼き上げた洋風メニューの総菜「ハログリ」の販売も順調で、今後ラインアップの拡充を進めていく考えです。
──プライベートブランド(PB)の「ハローズセレクション」の開発についてはどう進めていきますか。
佐藤 ハローズセレクションは当社を特徴づける商品であり、今後も積極的に開発を進めていきます。
現在約900アイテムを展開しており、毎年約100アイテムの新商品を投入すると同時に、既存商品の改廃も進めています。売上高は年々増加しており、直近の売上構成比は約10%に上っています。今期中には1000アイテムまで増やす計画です。
──DgSやDSなど価格を強く打ち出す競合が増えるなか、価格政策についてはどのように考えていますか。
佐藤 価格というものは、お客さまにとって買物する店を選ぶ重要な基準の1つであることは間違いありません。そのため、購買頻度の高い商品については原則として、競合するSMやDgSの価格に極力合わせる方針です。各店舗の競合状況や商圏特性を詳しく分析しながら、価格競争力も磨いています。
物流整備、人材確保が課題
──経営面での課題はありますか。
佐藤 1つ大きいのは物流です。とくに、現状のセンターを中心とした効率化および長期ビジョンを見据えたセンター設置計画を進めていきます。今後さらに店舗網を拡大していくうえでは、こうした物流インフラのさらなる増強が重要な課題となっていくでしょう。
──全国的に人手不足に苦しむSMが多いですが、人材確保の面で課題はありませんか。
佐藤 当社も例に漏れず、とくに新卒者の確保に苦戦しています。それに対し、働き方改革や処遇改善といった人事制度の整備などに現在取り組んでいるところです。
また、自動発注システムやセルフレジの導入、店舗作業のさらなる標準化など省力化や生産性の向上につながる施策も強化しています。
──最後に、瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想を実現するにあたって、その舵取り役として意識していることを教えてください。
佐藤 長期ビジョンを実現するうえで重視しているのは、「全員参加型経営」です。その一環として、定期的に各店舗に足を運んで従業員と会話し、会社の現状や考え方を直接伝えるようにしています。全店24時間営業ですので、ときには深夜の時間帯に訪店することもあります。その際には、「皆さんの努力が利益拡大につながりました」など、全員がハローズの経営に参加しているのだと実感できるような話題を選んで発破をかけています。
今後も「全員参加型経営」を追求しながら、「瀬戸内商勢圏180店舗3000億円構想」の実現に向け、全力を注いでいきます。