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医薬品メーカーとしての機能強化、ブランディングに力を=グラフィコ取締役営業本部長 秦 俊二

グラフィコ(東京都/長谷川純代社長)は、ヘルスケア用品や家庭用品を主力とするメーカー。商品パッケージや販促物のデザインを得意とし、これまで数々のヒット商品を送り出してきた。2017年からは「医薬品メーカー」として、ユーザーからの信頼を高めるブランディングも展開、差別化を図っている。同社の商品戦略について、取締役営業本部長の秦俊二氏に聞いた。

商品のラインアップは3分の2に絞り込んだ

──グラフィコの現在の事業内容から、教えてください。

はた・しゅんじ●1959年生まれ、60歳。東京都出身。83年酪農学園大学卒業、同年ロッテ商事入社。89年台糖ファイザー入社。2003年トライックス代表取締役。12年サンファーマ代表取締役(兼任)。16年みらいファーマ代表取締役。17年7月グラフィコとみらいファーマ合併に伴いグラフィコ取締役営業本部長就任。同年12月同社取締役営業本部長COO。

 健康食品や化粧品といったヘルスケア用品、家庭用品をメーンとするメーカーです。1996年にデザイン制作会社として設立し、商品パッケージや販促POPのデザイン受託から始まった事業は、現在では、自社製品の企画・開発・販売、プライベートブランド(PB)企画の受託、商品の輸入・販売なども展開しております。自社生産設備を持たず、国内外の工場に生産を委託、商品の企画・開発・営業・販促などのソフト機能に特化した、いわゆる「ファブレスメーカー」というのも特徴でしょう。2017年には医薬品メーカーのみらいファーマと合併し、一般用医薬品の製造販売にも進出するなど、さらなる多角化も進めています。そうした経営体制をバックに、自社ブランドの浸透にも力を入れています。

──メーカーとしてはニューカマーですが、商品のネーミングやパッケージで消費者の心をつかむマーケティング手法では定評があります。

 ええ。それを活用して、すでに累計販売個数が100万個を超えるヒット商品を、いくつも世に送り出すことができました。とりわけ、大手メーカーが攻め込みにくいニッチ市場で、橋頭堡を築きたいですね。

──数多くの商品をラインアップしている印象のグラフィコさんですが、秦さんが営業本部長に就任した1年半ほど前から、商品戦略を大きく変えました。

 そうです。商品の見直し・改廃によって、ラインアップを約3分の2に絞り込みました。一方で、主力商品では、ニーズを深掘りした別バージョンを発売するなどシリーズ化、ブランディングを推進しています。大きな木だけを残し、そこに経営資源を集中させ、幹を太くするほうが得策と考えました。

「オキシクリーン」将来的に100億円めざす

──その戦略のもと、現在の主力商品の1つである「オキシクリーン」も売場での存在感が高まっています。

 米国の大手家庭用品メーカーであるチャーチ&ドワイト社(C&D社)の製品で、洗浄力が抜群の酸素系漂白剤として、米国市場では圧倒的なトップシェアを占めています。ところが、日本では知られていませんでした。そこで、当社が日本での独占販売権を得て、商品を育ててきました。

──オキシクリーンを手がけたわけは?

 米国の家庭用品は多様化していて、日本市場に適した商品も増えています。ただし、きめ細かいニーズへの対応が欠かせない日本市場に、米国の商品を根付かせるには、マーケティングに強みのある、当社のような企業が橋渡しをしたほうがいいと考えたからです。

──きめ細かいニーズへの対応という点で、具体例はありますか?

 オキシクリーンには、日本仕様の商品として、界面活性剤を含まない商品もラインアップしています。日本の女性は、ベビー服を洗う際に、界面活性剤不使用の洗剤を選ぶ傾向があるので、そこに着目しました。おかげさまで、日本仕様品が牽引して、ブランドの拡販につながったわけです。

──日本市場を重視するC&D社は、貴社の実績を高く評価して、今後もパートナーシップを強化する方針だと聞いています。

 オキシクリーン以外のC&D社の製品の輸入・販売も、検討しているところです。将来は、ハウスホールド部門の商品で100億円の売上をめざしたいですね。

──ヘルスケア用品も、貴社の得意分野です。健康食品の「なかったコトに!」は、10年間も売れ続けているブランドだそうですが、ロングセラーになったのはなぜですか?

 期待を裏切らない魅力を感じられたお客さまが、リピートしてくれたのだと思います。さらに当社では、売上を維持・拡大する取り組みも進めています。これまでの主客層は20~30代と想定していましたが、3年前リピーターの年齢層が上がったとみて、ミドルエイジ向けに「R40」を発売しました。昨年から売れ行きが上向いています。また、持ち運びに便利な「個包装シリーズ」も伸びています。日本国内だけでなく、韓国やタイでも販売し、マーケットのすそ野を広げています。

──足用石けん「フットメジ」も、ニッチなフットケア用品ですが、根強い人気があるそうですね。

 最初は、女性向けにかかとの角質落としとして打ち出していたのですが、男性向けの足のにおい対策ニーズなどにも、対応するようになりました。

──ほかにも、貴社には、ヒット商品がまだたくさんあります。

 冷え取りグッズ「優月美人」ブランドも、おかげさまで、10年以上のロングセラーです。

若い女性向けの温膏を医薬品として初めて開発

──マーケティング戦略について教えてください。

 これまでのマーケティングでは、商品名の認知度アップに注力してきました。しかし、独占輸入品や自社製品のラインアップも充実してきたので、「グラフィコ」の企業ブランディングにも、本腰を入れているところです。たとえば、販促什器に社名ロゴを入れたり、プロモーションでも商品名とともに社名も訴求したりしていきます。社名の認知度が上がれば、知らない当社の新商品をお客さまが手に取ったときでも、グラフィコの商品だからと、信用してもらえるようになるためです。

──医薬品メーカーのみらいファーマと17年に合併しました。そのシナジー効果は、どのように創出していきますか?

 当社の信用度アップに役立つと考えているので、“医薬品メーカー”としての地位の確立を急ぎます。とりわけ、当社の健康食品や化粧品も、医薬品と同水準のクオリティとお客さまに受け止めてもらえ、差別化できることは大きな意味があるとみています。まずは、第3類医薬品を中心に健康維持・増進を図る製品を開発、販売しますが、今後の新製品は第2類医薬品も視野に治療薬の開発にも全力を挙げています。

──どのような医薬品を開発しているのですか?

 当社が医薬品として初めて開発したのは、第3類医薬品である「鎮痛消炎ミニ温膏 A」です。患部を温める膏薬は、若い世代にもニーズがあるはずなのですが、これまではシニア向けがメーンでした。そこで、若い女性をターゲットとして開発したのが同製品です。当社の企画力を生かして、新発想の「いい香りがして蒸れにくいパッチ」を採用しました。色はピンクで、形も「花形」「星形」「ハート形」といった、女性の心をくすぐる、「かわいい形」にしてみました。今後は“貼る”以外の剤型での製品開発にも着手したいですね。

──ベンダー戦略として、商品のラインアップの絞り込みと並行して、取引先の集約も行っています。

 それによって、社内営業部門の業務効率を高めるほか、ベンダーさん1社1社とのパイプを太くして、共同販促といった取り組みを強化するのがねらいです。成果はすでに表れています。

──どのような成果なのか、ぜひ教えてください。

 成果の1つが、販売チャネルの拡大です。たとえば、オキシクリーンの販路は、これまでドラッグストア(DgS)がメーンだったのですが、食品スーパー、総合スーパー、ホームセンター(HC)でも取り扱ってもらえるようになりました。フットメジも、DgSだけでなく、HCでも好調です。男性向けに売れているからです。今後はスポーツ用品店などにも売り込みたいですね。

──貴社は、堅実に成長を遂げてこられましたが、経営方針に変更はありませんか?

 それは、市場環境の変化に合わせて、変えていくかもしれません。たとえば、現在はニッチ市場を中心に攻めていますが、チャンスがあれば、大きな市場にもチャレンジしたいですね。