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オススメの一冊、『台湾流通革命 流通の父・徐重仁に学ぶビジネスのヒント』

『台湾流通革命 流通の父・徐重仁に学ぶビジネスのヒント』
『台湾流通革命 流通の父・徐重仁に学ぶビジネスのヒント』
佐宮圭=著(筑摩書房刊/960円〈本体価格〉)

  徐重仁という名前を聞いたことがあるだろうか。「セブン‐イレブン」をはじめ、日本の多くの小売店や飲食店、サービス業とタッグを組み、台湾でのビジネスを成功に導いてきた「台湾流通の父」と呼ばれる人物だ。とくに台湾の「セブン‐イレブン」は、人口1人当たりの店舗数としては世界一となるほどの規模にまで成長させている。本書は、「流通」の概念すらなかった台湾で小売・飲食・流通サービスの一大コングロマリットを育て上げた徐重仁のビジネスノウハウを解説した一冊だ。

 本書は全部で10章構成となっている。日本と台湾の提携事業を成功させるうえで重要なポイントを綿密に解説している。

 第1章「日台提携事業と経営人育成の成功の秘訣」を読むと、徐重仁がどのようにして日系企業との協業を成功に導いてきたかがわかる。徐重仁は、台湾に来る日系企業のトップの弱点として、「完璧主義を捨てられない」「決断する勇気が持てない」の2点を挙げる。他国の事業を導入するうえで最も重要な「現地化(ローカライズ)」を実現するうえで、この2点が大きな障壁となる。台湾で日本の事業を展開する際にも、日本でのやり方に固執せず、台湾の消費習慣やサービスレベルを考慮すべきだというのが徐重仁の主張だ。

 ヤマト運輸と協業して立ち上げた「統一速達」では、日本並みの配送車や倉庫、営業所などの確保を優先しようとした日本側のトップに対して、徐重仁は物流インフラが発展途上にある台湾でそんなことをすればコストの高さから資本金がすぐに底をつくと反対。当時台湾では「宅急便」というサービスがなかったため、日本基準で60点くらいでもお客の満足度は十分との考えから、まずは認知度アップや社員教育を優先し、設備投資やドライバー確保は段階的に行う戦略を採ったことで、事業をうまく軌道に乗せた。

 本書には、文化の違いを乗り越えながら台湾に流通革命を起こした徐重仁のノウハウが余すところなく掲載されている。コロナ禍で既存のビジネスモデルの転換が迫られているなか、すべての小売関係者にとって参考になる一冊だ。

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