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総菜進化にも影響!トライアルが高級旅館や料亭を運営するねらいとは

トライアル大

業界関係者にもあまり知られていないが、トライアルはスーパーセンターを中心とする実店舗のほかに、グループ会社を介して温泉旅館やそれに付随する料亭などを複数運営している。同事業はただの“副業”ではなく、トライアルの経営戦略において重要な役割を担うもの。実際に施設を訪れ、そのねらいを取材した。

全室温泉付き、1泊2食で破格の値段

 グループ傘下で旅館業を運営するのが、neri resort( 福岡県/髙山博章社長)だ。現在、福岡県、大分県、神奈川県で6カ所の温泉旅館のほか、日帰り入浴施設などを営業している。

 旅館については「虎乃湯」と「久織亭」の2ブランドを展開、前者は家族連れを主なターゲットとした比較的リーズナブルなブランド、一方の後者はラグジュアリーブランドの位置づけである。

 本特集に際してまず訪れたのが、福岡市内からクルマで1時間ほど、トライアルグループが「リテールAI戦略」の拠点とする宮若市内に21年12月に開業した「宮若虎の湯」だ。スタンダードなツインルームから、大人4名まで泊まれる「クワッドルーム」までさまざまなサイズの計44部屋からなるが、すべての客室に陶器や檜の風呂(温泉)が付いているのが大きな特徴だ。

 食事は館内のビュッフェレストラン「Buffet KOHAKU」で。実はこのレストランを運営するのは、トライアルグループ傘下の明治屋(福岡県/大塚長務社長)。ライブキッチンを設置し、子供から大人まで楽しめる洋風メニューを中心に、出来立ての料理をビュッフェ形式で提供する。期間限定フェアを企画するなど、メニューには常時変化をもたせている。

宮若虎の湯の「Buffet KOHAKU」では、店舗で販売する素材を使った料理も提供する

 これら温泉付きの部屋とビュッフェディナー、朝食が付いた1泊2食付きのプランで、料金は1人1万3500円からと破格。neriresort業務執行役員の佐藤勇太氏は、「開業後からお子さま連れをはじめ、カップルやシニアなどさまざまな層のお客さまにご利用いただいている」と言う。

こだわりのフルコースを楽しめる「久織亭」

取材時のコースメニューのメーン、大分県産の「豊後牛」を使った一皿

 続いて訪れたのが、「由布水工場」にほど近い、大分県九重町にある「大分九重久織亭」。半露天風呂が付いた約50~80㎡の8部屋と、約160㎡の広さを誇る特別室別館の計9部屋を設置。いずれもプライベート感満載の「離れ」となっており、特別な日をゆったりと過ごすことができるような設いになっている。

九重久織亭の松田孝英料理長はフレンチの経験を生かしつつ、大分の旬の素材を引き出すコースメニューを考案している

 食事は施設内にある、こちらも明治屋運営の「料匠 虎白」でコース料理を楽しめる。フランスでの修行経験も持つ松田孝英料理長が考案する計10皿以上に及ぶコースでは、大分の新鮮な魚介類や「豊後牛」といった素材の味を生かしつつ、フレンチの要素も取り入れた創作料理の数々が供される。

 宮若虎の湯に比べると決してアクセスのよい立地とは言えないが、都会の喧騒から離れてゆったり過ごせる雰囲気とクオリティの高い料理が好評で、「なかには毎月のように訪れてくださるリピーターの方もいる」(松田氏)という。

“こだわり”を体感してもらう拠点に

 トライアルがこれら旅館事業に乗り出したのは、11年、九重町で同社の研修施設のために購入した土地の制約上、旅館の運営も求められたことに端を発する。

 いわば、当初はやむを得ないかたちで始まった新規事業だったが、「旅館で出す食事のおいしさを追求するなかで、そこで得たノウハウをトライアルの総菜開発に生かそうというねらいが生まれた」(前出の佐藤氏)という経緯がある。

neri resort業務執行役員の佐藤勇太氏

 実際、明治屋が監修する食事については、トライアルの店舗でも販売している素材を一部で使うなど、売場とリンクした取り組みも行っている。また、明治屋に所属する経験豊富なプロの料理人が監修した総菜を展開しているのは、総菜戦略の記事でも触れたとおりだ。

 「実際に来ていただき、食をはじめとするわれわれの“こだわり”を体感してもらうことで、トライアルに対する印象をよりよいものに変えていただければ」と佐藤氏は言う。