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シダックスに出資へ、オイシックス・ラ・大地の次のターゲットはB2B領域!

食品のサブスクリプションサービス「Oisix(オイシックス)」を運営するオイシックス・ラ・大地(東京都)は年5月12日、2022年3月期決算を発表した。コロナ禍の影響による内食需要の拡大や巣ごもり消費の増加によって、宅配ECやミールキットの人気が加速している中、食のEC化やフードロス削減等、食にまつわるビジネスを全方位で展開している同社の決算概要と今後の戦略についてレポートする。

会員数・ARPUが伸長し増収

 オイシックス・ラ・大地の2022年3月期業績は、売上高が対前期比13.4%増の1134億7000万円、営業利益が同44.1%減の41億円、EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization:税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)が同30.2%減の62億円、親会社に帰属する当期純利益が同45.8%減の27億だった。

 売上高については2022年2月に海老名物流センターで起きたトラブルに伴う売上減を反映し、当月中に計画を修正、その通りに着地した。また、当初は新型コロナウイルスの影響を受けると想定していた会員数およびARPU(Average Revenue Per User:1人当たりの平均売上高)がOisixを中心に伸長し、初期の見通しを上回る高水準の成長を継続した。

 利益面については、コロナ禍によるイレギュラーな伸びを見せた前期からは減益になったことや、先述の新物流センターにおけるトラブルの影響による約13億円の利益減を除けば、順調に推移しているが、引き続き今期もトラブルの影響を受けると同社は見ている。

「サステナブルリテール戦略」とは

 中長期的な成長戦略として同社が掲げているのが、ビジネスモデルとテクノロジーの力で地球にも人にもよい食を提供する「サステナブルリテール(持続可能型小売業)」になるという戦略だ。

ここでいうビジネスモデルとは、複数の食のサブスクリプションを国内外で展開し、生産者の供給と顧客の需要を直接的につなげる役割を担うという仕組みである。このビジネスモデルを支えるのが50万人弱のお客さまの購買データ、そして4000軒以上の農家をはじめとしたメーカーの情報を毎週マッチングし、収穫物を無駄なく無理なく使うテクノロジーだ。

無駄のないサプライチェーンやバリューチェーンによってフードロス削減に至るビジネスモデルを極めていく……それがオイシックス・ラ・大地の掲げるサステナブルリテール戦略だ。

Kit商品の多角化とプロモーションの強化

 ここからは23年度3月期の取り組みを見ていこう。オイシックス・ラ・大地が今期取り組むのは、ビジネスモデルのブラッシュアップとサステナブル推進だ。具体的には①商品・サービスのスペシャリティ磨き上げ、②食品宅配マーケットにおけるブランド認知強化、③サービス全体のサステナブル推進の3点である。

 ①商品・サービスのスペシャリティ磨き上げにおいては、ディズニーなど同社の提供価値と親和性が高いブランドとのコラボレーション商品の充実や、朝食や昼食などのニーズに応え、領域拡大を推進する。加えて、冷凍食品「パッとOisix」メニューを2倍に拡充、料理初心者向けのキット「超ラクKit」シリーズの展開、Kit Oisix専用動画の配信など超時短ニーズに対応したサービスを提供する。

 ②食品宅配マーケットにおけるブランド認知強化では、テレビCMにも登場した「20th Century」とのコラボkitの販売やアカチャンホンポ(大阪府)との協業など、新たな販売チャネルの開拓や顧客体験づくりのために、プロモーション活動を展開する。

 ③サービス全体のサステナブル推進においては、サメ肉やきのこの軸といったアップサイクル商品、規格外商品、未利用食材、プラントベース食材などの「もったいない原料」を使ったミールキットを充実させる。サステナブル商品の開発・販売を引き続き推進し、1年後には100品まで拡大をめざす。加えて資材や段ボール、パッケージのサステナブル化も推進する。

 国内B2Cのサブスクについては、毎年10%以上の成長を続けていく計画で、海外においても香港・上海で「Purple Carrot」の事業展開をスタートしている。

売上成長をめざし「B2Bサブスク」事業を開始!

 そのほか今期は、事業領域の拡張も推進する。その目玉となるのが、「B2Bサブスク事業」の展開だ。

 6月よりこれまで保育園700園に提供してきた食材卸事業を発展させ、「業務用ミールキット」を新たに展開する。B2C事業で蓄積してきた子供の喜ぶ食べ物や、食育の領域における偏食改善のスキル、また「時短」という価値提供によって保育園の人手不足の解消や給食現場の負荷軽減に貢献していく。同事業では5年以内に売上規模100億円をめざす。

 そのほか、自社商品の製造効率改善や加工工程の内製化、PB商品の販売比率向上、現在遅れが生じている旧海老名ステーションを機能転換したフードレスキューセンターの正常稼働によって原価改善を進め、収益力の向上をめざす。

 また、上期には海老名センターの物流コスト比率回復を含む収益力の改善を最優先課題とし、利益を出せる体質を構築する。下期には、移転前に計画していたコスト水準に向けた改善施策を実施し、25年3月期までに物流費4%削減をめざす(22年3期末比)。

今期は、米国で展開している「Purple Carrot」について赤字を見込んでおり、全体として利益を増加させていくことに注力していく方針だ。

 以上の活動を推進し、来期は売上高1200億円、営業利益45億円、EBITDA65億円、四半期純利益25億円を見込む。

シダックスに80億円を出資へ!

 なお、オイシックス・ラ・大地は6月29日、80億円を投じ、給食大手シダックスの優先株を投資ファンドから取得すること発表した。取得時期は22年8月下旬から9月上旬をめどとし、普通株転換時の持分比率は26.5%になる見通しだ。

 カラオケボックス運営事業のイメージが強いシダックスだが、同事業は18年に「カラオケ館」運営のB&Vに売却しており、現在は給食事業を主力とする。22年3月期の連結売上高は1155億円で、営業利益は24億円となっている。

 オイシックス・ラ・大地は提携の理由について、シダックスが手掛ける各種事業(特に、医療施設、高齢者施設、保育園、事業所などに向けた集団給食事業を含むフードサービス事業)との業務提携の検討を加速するためとしている。オイシックス・ラ・大地が今期に推進するとしているB2Bサブスク事業とのシナジー創出が期待される。

 B2C事業ではすでに一定のブランドを築いたオイシックス・ラ・大地は、次なるTargetであるB2B領域をどのように攻略していくのか。シダックスとの協業のゆくえに注目だ。