オーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)が発表した2022年3月期決算は、売上高が5250億円(対前期比3.2%増)、営業利益が300億円(同1.2%減)、経常利益が311億円(同0.7%減)、税引後純利益が222億円(同3.2%増)だった。
既存店売上はプラス成長!
2020年3月期、21年3月期と2期連続で2ケタの売上増を続けてきたオーケーだが、22年3期の売上高伸び率は1ケタにとどまった。新店出店はここ数年と同様6店舗を出店した一方で、21年3月期の巣ごもり需要による売上急増の反動を受けて、既存店売上高前期比が100.2%となったのが主要因だ。オーケーの21年3月期の既存店売上高は対前期比12.5%増だったので、この高いバーをさらに超えたという点でオーケーの強さがわかる。
営業利益および経常利益は微減となったが、これは販管費の伸び(5.5%増)が、売上総利益の伸び(3.7%増)を上回ったためだ。なお販管費のうち減価償却費も同4.8%増となっており、積極的な投資が行われていることも見て取れる。売上高経常利益率は5.94%と、前年度より0.23ポイント低下しているものの、高水準を維持していると言っていい。
なお22年3月期は10億円の特別利益を計上しているが、これは主に上場企業株式売却益(9億5000万円)で、旧関西スーパーマーケット(以下、関西スーパー)株式の売却益と考えてよさそうだ。
今期はここ数年で最大規模の10店舗を新規出店へ
23年3月期の業績計画では、売上高が対前期比8.1%増の5662億円を見込む(23年3月期開店予定の新店を含まない数値)。ここ数年1ケタ台にとどまっていた新規出店については、10店舗のオープンをめざす。
日本経済が長期的に停滞し消費低迷が続く中で、オーケーはEDLP(エブリデイ・ロープライス)を武器に消費者の支持を集め、急成長してきた。決してニッチなアイテムではなく、大手メーカーのナショナルブランドを、ほかのスーパーでは考えられない低価格で売り出すのだから消費者が飛びつくのも頷ける。
オーケーの強みは、ただ単に商品を安く売るだけではなく、仕入れ価格や店舗運営コストを安く抑えて高い収益性を実現している点だ。売上高経常利益率は6%前後と、同業他社標準の倍以上に達する。
コストに対するオーケーのこだわりは徹底している。オーケーの会員は会員カードによって常時3%の割引を受けることができるが、これはクレジットカードやQRコード決済の場合は適用されない。こうした決済は加盟店側に手数料が課されるためだ。
これまで培ってきた店舗オペレーションのノウハウや仕入れ先との信頼関係を武器に高い収益性を維持しつつ、新店展開により成長性を確保する……それがオーケーの基本戦略となっている。
物価高騰時代のEDLP
オーケーストアが今後も成長を持続するにあたって、ハードルとなるのが物価高騰と店舗数の拡大頭打ちだ。
デフレ下において、日本では物価が上がらないことが常識になりつつあり、小売側にも消費者側にも感覚として染みついてしまった。ところが足元では、日本でもじわじわと物価が上がってきた。5月のCPI(消費者物価指数)は対前年比2.5%増まで上昇している。
大手食品メーカーも値上げに動いており、消費者と向き合う流通チャネルには苦しい対応が求められる。
一般的なスーパーマーケットであれば、特売の回数を減らしたり、安売り対象商品をしぼったりなどの対応で仕入れ価格アップを吸収できる。ところがオーケーのようなEDLP政策を採用するプレイヤーの場合、販売価格を上げるか、取り扱いアイテムを見直すか、対応は限定される。
メーカーとの摩擦も記憶に新しい。22年2月に幅広い品目で値上げに踏み切った花王に対し、オーケーは500前後の取り扱い商品のうち3割近い品目の販売中止を発表した。しかしその後も「アタック」をはじめ消費者の支持が高い商品については再販売するなど、対応に苦慮する面も見られた。
いかに価格を抑えつつ、メーカーと共存共栄していくか。難しい舵取りが求められるなか、オーケー の二宮涼太郎社長はダイヤモンド・チェーンストアによる5月のインタビューで「メーカーさんとよく話し合いながら、上げざるを得ないものは上げつつも、値上げ局面でも方針は変わらず、地域最安値をめざす」としている。
関西出店はいつか?
今後のオーケーの成長を占う上で注目されるのが、出店エリアの拡大だ。これまでオーケーは、1都3県に新店を投じてきた。
首都圏の場合、オーケーは基本的に「ルート16(国道16号線)」の内側を出店エリアとしている。店舗は自社所有を基本としつつ、地主側の意向を踏まえて賃貸契約を結ぶ場合もある。22年3月期末の店舗数は134となっている。
既述の通り23年3月期は久しぶりの2ケタ出店を目標としており、二宮社長も「前期より多数の実店舗を出店する見通し」と語っている。この10店舗はいずれも1都3県の都心と郊外だが、今後さらなる成長加速のために、期待が集まっているのが展開エリアの拡大だ。
オーケーからすれば関西スーパーが首尾よく買収できれば、大阪府・兵庫県・奈良県に展開する60店舗あまりが手に入るはずだった。エイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府)を巻き込み、最高裁の場にまでもつれ込んだ買収争奪戦は、結果的に関西スーパー経営陣側に軍配が上がった。関西スーパーはエイチ・ツー・オーリテイリングの傘下に入り、イズミヤ(大阪府)、阪急オアシス(大阪府)と経営統合のうえ、関西フードマーケット(大阪府)として再出発した。
エイチ・ツー・オーに奪われた格好のオーケーだが、関西進出をあきらめたわけではない。二宮社長の弁によると、実際に関西からは具体的に出店を求める消費者の声が多く寄せられるという。
旧関西スーパーの株式売却益もあって、オーケーの現預金残高は前期から200億円近く膨らんだ。潤沢なキャッシュを武器に、オーケーはどんな手を打つのか。自力進出かM&A(合併・買収)を模索するのか、さまざまな選択肢が考えられる。
ここで気になるのが、6月17日、JR西日本不動産開発が24年春オープンとして発表した「東京都中央区で賃貸住宅・スーパーマーケットの開発に着手」というリリースだ。この物件にテナントとして入居予定なのがオーケーなのである(オーケー日本橋久松町店<仮称>)。もちろん今回の出店は東京都なのだが、「JR西日本」と「オーケー」の名前が並べば、勝手に次なる展開を想像してしまいたいところだろう。