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学びを売る!動画スタディ型ミールキット 「シェフレピ」が支持される理由

 レシピサイトや動画メディアの普及により、店頭でのメニューや商品提案のあり方も進化している。そんななか話題になっているのが、efoo(東京都)が提供するスタディ型ミールキット「シェフレピ」だ。開発の経緯や、いま生活者が「料理に求めているもの」について、同社CEOの山本篤氏に聞いた。

2021年4月にefoo がリリースした「シェフレピ」は、レストランのシェフが解説するレシピ動画で料理が学べるスタディ型ミールキットだ

【シェフレピ】
 2021年4月にefoo (東京都)がリリースしたスタディ型ミールキット。注文すると計量済みの食材が届き、レストランのシェフが解説するレシピ動画で料理が学べる。サービス開始当初は1回完結のキットも提供していたが、22年1月にリニューアル。現在は全5回で学ぶレッスンコースのみを展開し、より学びに特化したサービスへと進化させている。

レシピを考案した料理人に
その価値を還元する

――家事の負担を減らす目的のミールキットが多い中で、シェフレピはじっくり料理を学ぶ、いうなれば真逆のサービスですよね。サービスが生まれた経緯を教えてください。

山本 実は事業立ち上げ当初は、小規模飲食店が簡単に原価管理を効率化するサービスを検討していました。ただ、リーン検証を経てサービスを再検討する必要が出てきたんです。シェフレピの構想はその時に生まれたものです。

――BtoB事業からの大きな方向転換ですね。

山本 私自身、フレンチや和食の料理人として飲食店で務めた経験があり、飲食業界の一助になる事業を作りたかったんです。飲食業の多くが労働集約型であることに課題を感じていて、そこにインパクトを与えたいと思っていました。

 また、レシピ提供とそれを使う生活者の「社会的な動線」が美しくないなと思ったのもきっかけです。料理人はクリエーターでありながら、生み出した料理とレシピの価値が本人に還元されていないことがほとんどです。動画サイトなどでレシピを公開しても、利益が出るのは生活者が材料を買った食品スーパーで、生活者から料理人へは、情報の対価が支払われません。動線を整備すれば、料理人とともにお客さまに向き合った良いサービスが共創できると考えました。事前のリサーチでもニーズが見込め、ベータ版も好評だったので、リリースに踏み出しました。

全5回のコースで
1つの技術が身につく

2022年1月にサービスをリニューアル。全5回で学ぶレッスンコースのみの展開とし、より学びに特化した内容へと進化させた

――高難易度のレシピを提供することにしたのは、なぜですか。

山本  料理人に教えてもらうレシピの価値を考えた時に、時短レシピではないと思いました。もちろん、料理人が考える時短レシピもおいしいはずですが、料理人にしかできないことを考えた結果、生活者の課題解決を目的としたものではなく、「シェフの経験や知識を通して。食への理解を深める学び」の提供を軸に据えました。22年1月のリニューアルはその軸をより明確にした形です。

――リニューアルでは、商品は全5回のコースのみ。コース内容もWebサイトも、より学びにフォーカスした仕上がりになっていますね。

山本  点ではなく線で、「食の学び」を体感してほしいという考えからです。従来の単発メニューも単に「おいしかった」と満足して終わってしまう一面もありました。それも間違いではなく、むしろ喜ばしいことなのですが、ユーザー側では次のステップアップに向けたレシピが選びにくいという課題がありました。
 数回をセットにしたコースにはニーズも感じていましたし、より学びのステップがわかりやすく、料理の知識を体系立てて深められます。今回のリニューアルでは、与えられたレシピを作るコツに加えて、ラム肉の扱い方や、パスタの作り方など、全5回を通して1つの技術が身につくように作っています。

料理人の修行並みの
専門的な学びを提供

――学びのテーマやメニューが、一般向けにしてはかなり専門的です。

山本 ほぼ、料理人の修行です。知識が身につくだけでなく、途中から食材の使い方や調理方法から、なんとなく“そのシェフらしさ”もわかってくると思います。料理への解像度が上がったら、外食した時も一皿から読み取れる情報量も変わってきます。
実際に、ベータ版でフレンチのコースをリリースした際は、「4回目を超えたあたりで理解度が上がった」というお声もいただきました。やはり、体感すると食や食べることの面白さが段違いに上がります。

 外食は、提供する側と食べる側のリテラシーの乖離が激しいことが往々にしてあります。食べる側の理解が必要だという食の関係者もいます。副作用的にですが、そうした課題への一手にもなっています。

主なユーザーは
料理好きの20〜30代女性

――SNSでは料理家さんのレビューなども見かけますが、メーンユーザーはどういった方が多いですか。
山本 20〜30代の料理好きな女性のユーザーが多いです。料理家や、プロのシェフもいらっしゃいますが、食を職業にしている方が特別に多いわけではありません。全くの初心者で、「シェフレピをきっかけに料理にチャレンジした」というお声もありました。

――料理好きがディープに学ぶイメージがあったので意外でした。
山本 どのレシピも絶対失敗して欲しくないと、かなり工夫してキットを開発しているので、初心者でも無理なく作れるはずです。「やってみたら意外と美味しくできた」という達成感を得て、ハマっていくリピーターも多いです。

  材料もこちらで計量してお送りしますし、動画でも調理のコツや、レシピに出てくる調理器具が自宅にない場合のフォローなどにも気を配っています。チャットでのサポートもしていて、なるべく迅速に返信できるようにしています。鴨肉の焼き具合を画像を送ってもらいながら、アドバイスしたこともあります。

――初心者、経験者問わず、成功体験は料理を好きになるのにすごく重要だと思います。ユーザーに合わせてレシピも改良しているのでしょうか。
山本 マイナーチェンジを重ねています。基本的には料理人の好きなものを提案してもらっていますが、最近は比較的工程がシンプルなものをお願いしています。工程が複雑だと手順を追うことに必死になって、その料理人ならではの技術や美学みたいな部分が伝わりにくくなってしまうのです。そこで脳を50%稼働させたら作れるくらいのレシピにして、動画を観ながら作っても学びを吸収できるように変更しました。

 動画撮影時も、編集者がどんどん突っ込んだ質問をして、料理人にたっぷり話してもらうようにしています。逆に話しすぎて、30分で納めるはずの動画が90分くらいになることも。その分、料理人が伝えたいことも逃さない動画になっています。

初心者でも無理なく作れる設計で、その達成感からリピーターになる人が増えている

シェフや食品メーカーの
情報発信の場に

――これからは、どんなコースが登場するのでしょうか。

山本 直近では包丁の研ぎ方のコースがはじまります。現在は専門的な知識に特化したコースがメインですが、今後は時短レシピなども含め、グラデーションのある世界観でレシピと学びを提供していきます。何度もレシピを作りたい方のために、食材だけのキット販売も検討中です。

 将来的には、レストランで働いている料理人が手軽に料理教室を開催して、インセンティブが得られ、また食品メーカーも情報発信できる仕組みにしていきたいです。

――現在の食の変化をどう捉えられていますか。
山本 情報過多の時代で“指名制”が進んでいるとも感じます。人生であと何回ご飯が食べられるか考えた時に、実はそんなに回数は多くない。でも、ひとつの料理を作る時、検索するだけで膨大な選択肢があり、「この人のレシピだから作ろうと思える何か」が求められるようになっています。
その中でシェフレピでは、美学をもつ素晴らしい料理人のレシピを選んでもらえるよう、尽力していきたいと考えています。

【媒体紹介】

食のビジネスメディア「FoodClip(フードクリップ)」
クックパッドが2020年に開始したWeb専門の食ビジネスメディア。
食トレンドや、市場・企業動向の記事をはじめ、クックパッドのデータを活用した生活者レポートのサブスクリプションを展開しています。https://foodclip.cookpad.com/