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“第二の柱”が増収に貢献! 多角化に向かうAOKIホールディングスの針路

AOKIホールディングス(神奈川県/青木 彰宏社長)が5月12日に発表した2022年3月期連結決算は、売上高が1549億円(対前期比8.2%増/前期から117億円増)、営業利益が54億円(前期は57億円の赤字)、当期純利益25億円(前期は119億円の赤字)で、連結全体では4期ぶりの増収増益を果たした。

エンターテイメント事業が増収に寄与

 新型コロナウイルスの猛威は変異株の流行を伴いつつ、前年に比べれば徐々に落ち着きを見せ始めてきた。小売業界も濃淡を伴いつつ全般的には上向き傾向だが、コロナ禍前の水準には戻っていない。

 AOKIホールディングスの2021年業績も、2021年3月期の最悪期からは抜け出すことができた。ただしコロナ禍前の19年3月期と比べると、売上高は79.4%、営業利益は40.3%の水準にとどまっている。

 セグメント別には、「ファッション事業」が前期から33億円増、同3.8%増の伸びにとどまった一方で、「エンターテイメント事業」が同85億円増、同17.5%増と高い伸びを示し、増収に大きく寄与した。店舗展開でも、ファッション事業で店舗数を628店から610店に絞り営業効率を高める一方で、エンターテイメント事業は659店舗から708店舗へと拡大中だ。

 ここで改めて、同社の各事業の概要について触れておく。ファッション事業はAOKIの祖業であるスーツビジネスを礎としており、ロードサイドチェーン「AOKI」のほか、若年世代向けの「ORIHICA」やビッグサイズの「Size MAX」などの業態を展開している。

 エンターテイメント事業では、複合カフェの「快活CLUB」、カラオケボックスの「コートダジュール」、24時間営業フィットネスジムの「FiT24」を展開する。このほかにもAOKIホールディングスでは、ウェディングの「アニヴェルセル・ブライダル事業」なども展開するなど多角化を進めている。

今期も増収増益を計画!

 23年3月期の業績予想では、売上高が同7.2%増/同111億円増の1661億円、営業利益が同41.5%増/同22億円増の77億円、当期純利益が同26.8%増/同6億円の32億円を見込む。

 素材価格の高騰や変種株のまん延など不透明要因が懸念される中、ウイズコロナの生活スタイルにマッチした商品・サービスの提供を通じ、ファッション(同1.5%増)・アニヴェルセル・ブライダル(同13.5%増)・エンターテイメント(同15.2%増)のすべてで増収をめざす計画だ。

 主力のファッション事業では、ビジネスに加えて女性向けやカジュアル商品の拡充を図る。アニヴェルセル・ブライダル事業では、アフターコロナにおけるウエディングイベントの復活に対応する。成長著しいエンターテインメント事業では、ビジネス需要の取り込みに向けたサービスの拡充をめざす。

 2期連続の増収増益をめざすものの、今期の業績予想を達成したとしてもコロナ禍前の19年3月期の水準にはまだ届かない。エンターテイメント事業が伸びているものの、ファッション事業の落ち込みをカバーするまでには至っていない。

エンターテイメント事業が“第二の柱”に

 エンターテイメント事業誕生の起点は、1990年代後半にさかのぼる。当時はスーツの売上が頭打ちとなり、AOKIホールディングスは不採算店舗の整理を進めていた時期だ。

 店舗閉鎖・縮小と同時に、とくに広大なスペースを抱える郊外型店舗を中心に余剰スペースが生まれた。その有効利用対策として始めたのが複合カフェ「快活CLUB」であり、1号店が千葉県幕張にできたのが2003年のことだ。

 それから20年が経過し、エンターテインメント事業は今やAOKIホールディングスにとって「第2の柱」に育っている。いまだ紳士服チェーン店のイメージが強いAOKIホールディングスだが、収益構造は様変わりしている。

 ファッション事業がコロナ影響からの回復が見通せない中、エンターテイメント事業の売上高はすでにコロナ禍前を上回っている。19年3月期との比較で、22年3月期におけるファッション事業の売上高は同22.6%減であるのに対し、エンターテイメント事業の売上は同5.2%増となっている。売上高全体に占めるエンターテイメント事業の比率も4割近くに達している。

本業のスーツ販売、ブライダル事業がカギか

 ただ、一見順調そうに思えるエンターテイメント事業だが、増収は新店効果によるもので、既存店売上高は「快活CLUB」「コートダジュール」いずれもコロナ禍前の水準に回復していない。

 結果として収益性は悪化した。エンターテイメント事業の売上高営業利益率は、19年3月期の5.9%から22年3月期には1.0%に急降下している。もともとエンターテイメント事業は、客単価が低いうえに人手がかかるため、収益性は決して高くない。さらにここ数年で店舗の運営効率低下が追い打ちをかけ、収益性がさらに落ち込んだというわけだ。

 成長性・収益性回復のカギを握るのは、ブライダル事業の復活だ。コロナ禍前のブライダル事業の売上高営業利益率は8.5%と他事業よりも高く、さらにその以前は10%を超えていた。

 ファッション事業の核となるスーツ販売も、本来は客単価が高く稼げるビジネスのはずだ。本業のスーツビジネスへの回帰とブライダル復活こそが、AOKIホールディングスの真の業績回復につながることは言うまでもない。