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オススメの一冊、「商品はつくるな 市場をつくれ」

『商品はつくるな市場をつくれキリン「伝説のヒットメーカー」商品づくり24の技法』
和田徹=著(ダイヤモンド社刊/1500円〈本体価格〉)

キリン「伝説のヒットメーカー」商品づくり24の技法

 発泡酒の「麒麟淡麗〈生〉」、チューハイの「氷結」、ノンアルコールビールの「キリンフリー」──。アルコール飲料メーカーのキリンビール(東京都/堀口英樹社長)は多くのヒット商品を世に送り出してきた。実は、これらの商品開発にはすべて同じ人物が関わっている。本書は、キリンビールで数々の商品開発を手掛け、総売上9兆円を生み出した「伝説のヒットメーカー」である和田徹氏が、商品づくりに関する自らのノウハウを余すことなく記した一冊だ。

 本書は全4章構成で、著者の商品開発における24の技法を事細かに解説している。市場の把握から企画書の書き方、アイデアの出し方、チームでの商品開発の手法などを網羅。商品開発のヒントになる戦略が多く盛り込まれている。著者の当時の企画書の写真が掲載されているのも特徴だ。

 第3章「企画書で商品は磨かれる」の中に、商品のネーミングについて触れている一節がある。著者は、原料や製法、特製といった商品の事実やコンセプトをそのままネーミングにすることが必勝法だと述べており、「氷結」の名前もその一例だという。

 従来のチューハイは果汁を濃縮還元していたが、「氷結」ではコストと手のかかる「ストレート果汁」をチューハイ類で初めて採用。搾りたての果汁を瞬間凍結して使っていることから、「氷結果汁」というネーミングに決定した(後に「果汁」がジュースと間違われやすいという指摘を受け、現在の「氷結」という名称になった)。さらに、氷の冷たいイメージにあうように、シャープでエッジのある「ダイヤカット缶」を使用するなど、ネーミングのほかさまざまな要素を1つの世界観に統一させたことが大ヒットにつながったという。

 本誌の主要読者層である小売各社も、競合との差別化を図るため、プライベートブランドや総菜をはじめさまざまな商品の開発に注力している。メーカーだけでなく小売の商品開発担当者にとっても、本書は多くのヒントを与えてくれるだろう。

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